子
「実は、楪蝶殿が身籠ってね」
結局あの女の話か。
「それは、兄さまの子だと認識してもよろしいでしょうか」
「ああ、ようやく初孫だよ」
「つまりわたしの甥か姪だと」
「ああ。なんか、男だったら張凜で、女だったら愛唯という名にするそうだ」
「愛唯のほう、そのまんまの名前ですね。まあ、わたしや菻明からしたらの話ですけれど」
「それもそうだな。張今に美美からの伝言だと言って伝えておこう」
そう言うと、立栄は美美が抱いている蘭蘭には最後まで興味を示さず、部屋を出ていった。
「そういえば樹衣さま。旅の際、護衛はどうするのですか?皇族の場合、他の者は馬車なのと違って牛車で行動されるのでしょう」
「ああ、そこは、4人ほどにしようと思っているのだが、お前は絶対に入れる」
美美は驚きを隠せず、口をあんぐり開けた。これこそまさに空いた口がふさがらないというやつである。
「な、なぜわたしなのです?他にもっと腕が立つ方がいらっしゃるのでは?」
「それがな、他の護衛候補だった者達と一応手合わせをしたんだが、腕が立つ者が3人しかいなかったんだ。護衛候補の者達は俺が手加減をしたのに負けたんだ。それなら、俺が手加減をしたからでも勝ったおさみの方が良いだろう?」
「それもそうですね。つまり、樹衣さまはわたしに2つも借りを作ると」
美美が手をもみ、にやけながら言うと、樹衣は意味がわからないという顔をした。
「は?護衛の件は分かるが、もうひとつとはなんだ?」
「大祭りの時、招待を受けて差し上げたでしょう。あれ、一応条件付きですけど」
「お前が何もなしに素直に受け入れるはずはないと思っていたが、やはり条件付きだったのだな」
樹衣は諦めたように言った。
読んでくださってありがとうございました!面白かったら、下の星マークから評価・リアクション・感想をお願いします!




