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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第二章 旅
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化け猫

 最近、蘭蘭が変だ。変と言っても病気とかそういうものではなく、黒いおでこに白いまろまゆができはじめ、しっぽなどはふたまたに分かれつつある。これは化け猫に多く見られる特徴であるため、蘭蘭は完全と言って良いほど化け猫である可能性が高い。これはさすがに樹衣に言わねばならないので、今は樹衣の部屋に蘭蘭と一緒に立ち、事情を話している、というわけだ。

「まろまゆにふたまたの尾となると、蘭蘭はおそらく化け猫です。皇の名を与えるべきかと」

宮都では化け猫は聖なる獣として扱われる。そのため、皇の名を与えられる。つまり蘭蘭だと「皇蘭蘭(おうランラン)」となるわけだ。

「それもそうだな。早めに伯父上に言っておこう。だが、化け猫である以上、変化するものによって大きさの変わる首紐が必要だと思う」

宮都の化け猫は、職人が作った紐をたくさん並べられた時、その中で自分が気に入った紐を指差す習性がある。早めに作らねば選ばせる時に種類が少なくなってしまう。だが、蘭蘭が化け猫ということは、皇帝の密使にもなる。皇の字が入った木札がついた紐を着けた動物は狩猟禁止だ。冬の大地を駆ける場合は真っ白な狼に、砂漠を駆ける場合は肌色の大蛇に、樹海を駆ける場合は猿に変化し、他国の内情を伝え聞く。人混みに紛れ込む時は、人間に化ける。それが宮都の化け猫に課された使命だ。もちろん、人間に発見されずに一生を終える化け猫もいるが、ほとんどが皇帝の密使だ。

「この子は、皇帝のものになりますか?それで、わたしのことを忘れていくのですか?」

美美は涙ぐみ、蘭蘭の黒い背に顔を伏せる。

そもそも化け猫だと報告しなければ蘭蘭を手放すことはないが、報告しなければ色々な人に迷惑がかかる。

美美が蘭蘭の背に顔を伏せていると、樹衣が近づいてくる気配がした。

「お前はそれが嫌なのだろう?だったらお前が興味を持ったことを調べさせる密使にすれば良いのではないか?」

「そんなこと言ったって、できないことでしょう」

美美がそう言うと、樹衣が少し胸を張る。

「それがな、最近は化け猫が急激に増えているんだ。皇帝の密使にたまに使うかもしれないが、ほとんどの時はお前のものだ」

「そうなのですか?よかった…。この子はわたしの大切な友人ですもの」

「お前がそんなに喜ぶところは久しぶりに見た。最後に見たのは7,8歳の時じゃなかったか?」

「ごあいにく、覚えておりませんわ」

「では、記憶を失ったはずなのに、なぜ化け猫の特徴を覚えているのだ」

「記憶を失ったということは、勉強も一からせねばならないでしょう。猛勉強しました」

美美は蘭蘭の背から顔をあげる。それを見た樹衣はほっとしたような表情になる。蘭蘭、迷惑から逃れ、嬉しく思う。こうして皆が快感を覚えている時、扉が叩かれた。

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