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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第一章 始まり
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  ふう…。

美美は深呼吸をし、扇を持つ手に力を込める。そして、控えの間から舞台に上がる。美美が舞台に上がった時、見物人全員がざわめいた。

「美しい…!」

「あれが噂の…」

「記憶を失ったという美女か」

「誰の連れだ?」

「あんなに美しいんだ、きっと皇族の連れだろう」

見物人さん、冗談っぽく言っているけど、ほんとなんですねえ、それが。樹衣に連れてこられたのは不本意だが、見知らぬ男に誘われるよりはましだろう。そこのところ「だけ」、感謝しよう。

美美はそう思いながら舞い始める。

ふふん、これが1カ月間稽古を続けた成果なのである!

美美は心の中でいつもとは違う言葉遣いで喋る。もちろん、本人は全く気づいていない。

舞っている途中、和陽さまと目が合った。その一瞬で和陽さまはいたずらっぽく樹衣を指さした。そちらを見てみると、樹衣が頬を染めてわたしを見つめていた。おもしろい。でも、何だろ?


 なぜ、あんなにも美しいのだろう。なぜ、あんなにも強いのだろう。

美美が舞い始める少し前、樹衣はずっと考えていた。

自分には、おさみのような強さも気概も美しさもない。文才もない。自分のなかでおさみに勝てるのは身長と握力くらいだ。逆に負けているのは、剣術、美しさ、気概、勉学の素養と、かなりの数だ。美しさ以外は鍛えればすぐに勝てると言う者が多いが、なぜかおさみにだけは勝てる気がしない。それがまた、なぜかおさみへの愛しさに変わっていく。俺はなぜおさみに恋しているのだろう。言葉では表せない、でも好ましい。張り合えるのもいい。だが、それだけではない気がしてならないのだ。

樹衣がそう思っていると、美美が舞い始める。小柄なので、素早さを生かした振り付けだが、時折ゆったりとした振りになり、整った顔立ちが少し覗く。

美しいなあ。

樹衣がそう思いながら頬を染めていると、なぜか和陽が樹衣を指さしているのがわかった。そして、くすくすと笑っている。

「何だ…?」

皇族が座る席は小さな木造の塔のバルコニーに一組ずつ別れて用意される。その為、何か言っても呟き程度では周りの皇族には聞こえない…はずなのだが。 和陽さまは聴覚がものすごいので、聞こえてしまったようだ。また、くすくす笑われた。

 樹衣のことを和陽さまがからかっている。面白すぎる…!

美美は必死に顔が緩んでいくのをおさえる。今は舞っている途中、笑ってはいけない。美美の笑みは妖艶が過ぎるからだ。免疫がない者にはヘビー過ぎる。美美には少し自覚があるので、笑わないように気をつけながら舞い続けた。

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