大祭り
あっという間に大祭りの日になった。わたしは大祭りの習わしとして樹衣に渡されたうで飾りをつけ、樹衣に手をとられ、歩いている。皇族と連れの女性は、上座に座る。そして、女はベールを被る。皇帝は和陽さま、樹衣の父・皇弟は樹衣の母・風鈴さま、先帝は皇帝と皇弟の母・美鈴さま、立栄は分陽さま、兄さまは楪蝶、樹衣はわたしを連れている。ちなみに、樹衣の母である風鈴さまはわたしのことを養育してくださったそうだ。感謝しよう。だが、未婚の凛々しい皇帝の甥の隣に座っている女は嫌でも視線を集める。
美美の心情は正直、「迷惑」一言だった。
視線を集めるのが好きな変人もいるが、わたしには面倒くさいだけだ。さっさと舞の準備でもするか。
美美がそう思い、席を立とうとすると、ずっと手首を握っていた手がもっと強く、手首をぎゅっと握った。
「樹衣さま、お離しください。舞の準備を…」
美美が言うと、樹衣は仏頂面になる。
「嫌だ」
「はあ、あなたがわたしに武術の稽古で負けたこと、ばらしますよ?」
「それも嫌だ」
「では離してください」
「お前、年下に優しくないな」
「年下って言っても1歳だけでしょう。離してください」
「…」
樹衣は幼い子供がお気に入りの物を取られた時の顔をした。そして、美美の手首を離す。美美は控えの間に行く。そして、衣装に着替える。用意された衣装は腹のところの黒以外は白い物だった。
(趣味がいいな)
わたしは鏡を見る。鏡には、我ながら美しい顔が写っていた。
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