発見
その張今、いや、おっさん、いや、兄さまが異母兄だと知った以上、捜索しなければ異母妹としての面目が立たない。まずは兄さまの部屋を見せてもらおう。
美美は少し嫌な顔をしながら樹衣に言う。
「兄さまの部屋を見せて頂いても?」
すると、樹衣は目を丸くする。
「お前がそんなに早く従伯父さまのことを兄さまと呼ぶとは思わなかった」
「不義の子として生きていくにはちょっとやそこらではすまない度胸が必要です。異母兄を兄と呼べなければ、不義の子として生きていけません。とにかく、兄さまの部屋を見せて下さい」
「わかった。すぐに手配しよう。だが、今度宮都で10年に1度の大祭りがある。そのことも頭に入れておけ」
樹衣はそう言う。美美は手首を放されたが、引っ込めようとした時、手首がちゃらんと鳴ったのには驚いた。手首にはうで飾りがついていた。かなり高価そうな物だ。きっと樹衣につけられたのだろう。その樹衣は去っていく。
何だろ?
「あら、それは大祭りの招待状よ。殿方にそれを渡されたらその殿方の席の隣の席に座って大祭りを過ごすのよ。そんな予感はしていたけど、まさか本当に美美に渡すとは思わなかったわ」
「最悪だ…。」
「そんなこと言わないの。東宮の隣の席に座れるのは、とても名誉なことよ」
「そうは言っても嫌です。わたしが男嫌いなのはご存知でしょうに。この前の宴の時に婚約者を決めてくだされば…」
「はあ、あなたも婚約者候補なのよ。だから樹衣さまは迷っていらっしゃるの」
「分かりました、ですが、それなりの見返りをいただきますよ?」
美美は生まれつき紅のついた唇にそっと人差し指を当てる。まさしく身を売って金を稼ぐ女の格好だった。
ー翌日ー
美美は張今の部屋に来ていた。扉を開けると、やはり皇帝の従兄弟だ、部屋には調度品が揃えてある。
いや、よくよく考えればわたしも義理とはいえ皇帝の従姉妹なのでは?それなりにいい待遇をしてもらってもいいのになあ。しょうがないかあ。わたしは表向き、いつの間にか皇帝の甥に仕えていた娘なのだから。
そう思いながら、美美は部屋に入る。いろいろと見て回ると、張今が消えた理由はすぐに分かった。繊細な細工が施された引き出しを開けると、手紙のようなものが入っていたからだ。手紙の内容はくだらなかった。
皆様へ
私はこの年ながら、妻を持っておりません。此度は愛し合う方ができたので、その方のもとへ会いに行って参ります。お騒がせいたします。
張今
「見ての通り、恋人に会いに行っただけです。きっと数日もすれば帰ってくるでしょう。その時、1人で帰ってくるかは分かりませんが」
美美が淡々と言うと、樹衣は苦笑いをする。
「その女と帰ってくる、ということか?」
「まあ、そう言うことですね」
数日後、張今が帰ってきた。そして、手紙に書いてあった女と祝言を挙げた。
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