転生王妃やっぱり夫とすれ違う
イギリス王室ジョージ―Ⅲ世の妹で末娘のキャロライン・マチルダは従兄妹のデンマーク・ノルウェー王のクリスチャンⅦ世に嫁ぎ王妃となります。
しかし初めて会った従兄妹はとんでもない人物だった。
初顔合わせで愛さないと宣言。
ようやく祝賀行事から解放されたけれど憂つな宮廷の朝が始まる。
オペラ鑑賞会の翌日私は朝の身支度の為、鏡台の椅子に座って自分の姿をじ〜と眺めています。
はぁ〜目が一重だし。
はぁ~ぽっちやりだし。
はぁ〜鼻は低いのに縦に長いし、唇は薄いし。
はぁ~自分でいうのもなんだけど全体的に田舎の小娘的な顔だわ。
とても王女なんて高貴さが微塵もない顔立ちよね。
ため息さえでないくらい悲惨な顔!
ただでさえテンションの低い。
王に愛されない王妃として冷たい目で見られるデンマーク王宮での窮屈な暮らしが始まる毎朝の凹む儀式……。
「王…じょ…王妃陛下。
昨日も国王陛下はいらっしゃらなかったですね」
マチルダが私の髪を梳かしながら下向きかげんで残念そうに話しかける。
この子の名前は私のミドルネームと同じなの。
屈託のない明るい子で私と同い年なので、小さい時からいつも一緒だった。
侍女といっても家柄的には下級貴族の娘だから、普通はとてもマナー違反なんですが彼女は特別。
私と彼女は幼い時から一緒にキュー城で過ごしていたから超特別扱いなのよ。
それに彼女は私と雰囲気がとても似ていて、私をあまり知らない人が彼女をそれなりに着飾らしたら見分けがつかないほどなの。
子供の時は洋服をチェンジして周りを驚かせていたわね。
「まぁ~。
マチルダそのほうがいいけど」
この子の前では本音が言える。
唯一の存在です。
「でもそれではお世継ぎが…」
もっともな答え。
もっともすぎて反論できない。
夫にその気がないのだから私はどうしようもない。
「まあそのうちね」
話を適当に流す今の私はそういうしかないもの。
こっちから懇願するのも憐れじゃない?
それにそんな気にもならない。
よく考えてみて「愛さない」宣言された相手によ!
そんなの無理~~~~!!
私にはそんな事より重要なミッションがあるんだから!!
とりあえずこの宮廷から脱出計画を念入りに立てないと。
今は下準備だわ。
それよりか私の姿を現実を映し出す鏡の前でいつも思う。
終わった…終わってる……。
回帰前は美貌で名を馳せたのに………。
瓜核顔の磁器の白い肌に小さな手足と細い肩からデコルテが自慢だった。
胸も豊満スタイル抜群で自分でいうのもなんだけど超美人でした。
ぱっちり瞳にすっと通った鼻にぷっくりした官能的な唇。
髪は艷やかな光沢を浴びた絹の様な長い栗毛色。
どこにも欠点はなかったのに〜〜なんでせっかく転生したのに~~この垢抜けない顔ってきたら!
ある意味美人だったから結婚生活が不幸だったのかしら?
美人薄命いっていや美人薄幸?
理由はのちのち語るわ。
でも今世は醜女なのに新婚生活が地獄って……不幸よ。
どういう事??
そんな時だ。
バタッと扉の開く音がして瞬間的に視線を向ける。
開いた扉からふあっと広がる上質の絹に刺繍や宝石をちりばめたドレスが目に入る。
優雅に横に広がったドレスのスカートはリズミカルに跳ねあがり周囲に風を起こす。
上半身はほどんど揺れずに部屋に入ってきたのは一人の貴婦人。
さらに自然でありながら威厳に満ちたカーテシーを私に披露した。
「おはよう。
プレッセン侯爵夫人」
私はさっきまでの不満そうな顔をリセットしてにこやかに言葉をかける。
「おはようございます王妃陛下。
本日もご機嫌麗しく存じます」
彼女はデンマーク宮廷では珍しい貞操観念と道徳に大変厳しく堅い女性でもあり私の筆頭侍女長です。
これも調査したのだけど王に限らずデンマークの貴族達も下半身は駄目駄目で、酒、博打、女、借金と他の王国とかわらない腐敗度MAXの社会です。
プレッセン侯爵夫人はどうしても堕落した宮廷を改革したかったみたいなの。
だから私に腐りきった宮廷の道徳改革をしてほしいらしい。
私が来てからあれこれ貴族達の数多い醜聞の話を永遠しているわね。
まあ~~前世ではジョージのハノーファー宮廷も下半身駄目駄目だったから。
別に驚いたり、軽蔑したりはもうないわ。
まあ宮廷ってどこも似たりよったり曾祖父のジョージ1世は醜女好き。
祖父も浮気をやりたい放題、祖母が遺言で再婚するようにと促すと「結婚はしない。愛人は持つが」と宣言して祖母は空いた口が塞がらなかったんですって。
「どうしたの?
朝から何か?あった?
プレッセン侯爵夫人」
「おそれながら陛下。
国王陛下は昨晩もお褥されなかったと伺いました。
先日の王妃陛下歓迎会にも酒びたりになり、そのまま取り巻きと侍従に担がれて寝室に戻られたとか。
由々しき問題でございます」
「ははぁ~~それ…そうだったわね……」
いやいやながら思い出した光景は国家に身を捧げて神から与えられた責任と重責とは真逆な姿だった。
取り巻き貴族達が国王の両脇を抱えて、まるで丸太を引きずるように進む姿にげんなりしたわ。
しかも結婚の祝いの宴の間中、いや祝いを終えてもこれがほぼ毎晩繰り広げられる喜劇にしか思えない。
怒ったり、嘆いたりすらしない逆に笑える。
「王妃陛下!
ここで下手に出ては国王陛下はすぐに陛下
に飽きてしまわれるでしょう。
そうなっては王妃陛下の威厳が保てません。
ここは作戦でございます。
敢えて国王陛下に冷たく接するのです。
逆にかえって魅力的に映るものです。
そうすれば王妃陛下に益々感心が沸いてきっとメロメロになる事でしょう」
ある種の楽しさすら感じている様な侯爵夫人の笑顔に少々げんなりするしかない。
私は半笑いで答える。
な……メロ……っ…想像しただけでキモいわ!
史実ではプレッセン侯爵夫人は王妃から信頼されていました。
なので彼女の助言通りに行動したのですが、それがかえって国王に不快な印象を与えていしまいます。
二人の間にはさらなる溝が出来結婚生活は不幸そのものでした。




