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王の居ぬ間に キュー商会の災難と王妃の逃走Ⅱ

遂に念願のデンマーク王宮から逃亡し、デンマークを離れるキャロラインマチルダ王妃。

無事に脱出出来るのか?

挿絵(By みてみん)

キュー宮殿の庭園を模したこの小さな庭園は欧州の宮廷によくある整備された造園ではなく、あくまで野山の自然に咲く草花が不規則に植えられている。

他の庭園ではもぎ取られているであろう雑草すらそのまま。

冷たい風にその青い草の香りが鼻をつく。

ふっと辺りを見渡しても、木々のざわめきと時折雲の隙間から顔を覗かせる月の光で木立しか見えない。

まるで私1人しか存在しないかのような錯覚が起きる。

その月光にしばし見つめる。


いつの日か祖国の地をこの足で大地を踏みしめたい。

そんなノスタルジックな気分になるのはまさにこの夜にデンマーク王宮を去るという実感からだろう。

どこの王族も王家に嫁げば死んでも祖国には帰れない。稀に里帰り出来る場合があるようだけどほとんどないのが現実。


もし私に前世の記憶がなければこんな事を思いつく事なんてなかったろう。

だって王族の義務だから私達の血族の。

そんな物を捨てて私は今旅立つ。

愛しい子を残し、全ての罪を抱えて。

いつの日にか彼に贖罪を返す日を胸に刻んで。

胸の奥で悩み苦しみ血を流しながらもどうしてもこの思いを断ち切る事が出来ない。


ごめんなさい愛しい私の子……。

本当に愛しているわ……。

冷たい一筋の涙が頬を濡らした時、丁度サンジェルマン伯爵が持ってきた小型の懐中時計の針が真夜中の2時に差し掛かった。

突如として目に現れた小さな光の粒が暗闇に浮かぶ。

本当に小さな粒が幾重にも暗い宙に浮かびあがっては吸い込まれるよいに一点に集まる。

微粒子はどんどん大きくなって、青白い光で瞼を閉じる。


瞼の奥に熱を帯びた光線が一瞬走ったかと思うと突然冷気がすっと瞼を撫でた。


「陛下!」

冷たい宙を刺すようなサンジェルマン伯爵の声が響く。

ハッとその方向に振り向いて恐る恐る瞼を開いた先に映し出したのはサンジェルマン伯爵だった。

伯爵は慌てた様子で私の姿を見つけ走ってくる。

その姿は普段の伯爵からは想像出来ないくらい冷静さがない。

ゼイゼイと息を切って、髪は乱れている。


「どうしたの? 

 伯爵!?」


「陛下!!

 大変です!!

 キュー商会が……。

 商会が放火されました。 

 全焼です!!」


伯爵が何を話したのか一瞬理解出来ず、頭の中が一気に凍りついた。



………ぇっえ………。


動転する私の表情に伯爵ははっと険しい表情はすっと消え、安心させるかの様に静かに優しく微笑みながら、私の肩に手を置いてゆっくりと撫でる。


この瞬間我に返ったようだった。

その優しい眼差しに私の凍り付いた脳内はゆっくりと解けてゆきようやく動き始める。


「………伯爵!!

 皆は?

 みんなは無事なの?」


「あっ!

 ええぇ…。夜間だったのもあり……。

 残業していたヨハンナと数名の従業員がいち早く気がついて出火を確認出来ました。

 数人の怪我人はでましたが、発注されて出来上がった高価な品のほとんどは無事に運びだせました」


「そんなのどうでも……いい。

 怪我は?

 従業員の命の方が大切よ」

そう無くした物はまた作ればいい。

次に作る物は間違いなく素晴らしい品となるに違いない。


「…ええ…大丈夫です。

 かすり傷程度ですぐに応急処置が出来まして。

 ヨハンナ達が…すぐに強靭な男達を呼んで。

 続々に商人はサロンへ運ばれました。

 ただ商会は全焼してしまって」


「だからそんな事はどうだっていいの。

 皆が無事なら」


私の皆の心配をしている私の言葉に伯爵は少し苦笑いしながら柔らかな声で答えた。


「ただ……皆キャロン様に申し訳ないと…出火を食い止められなかった責任が…。

 直接会って謝りたいと言っています。

 オーナーには私が説明しておくと強く説得しようとしたのですが。

 どうしてもと…」


「………」


「陛下。

 このまま…去られていいのです。

 いえ…そうするべきです。

 いままでの蓄財で十分に外国で生活出来ます。

 陛下が面倒見た従業員達は優秀です。

 大丈夫です。

 ええ。

 何の問題もございません」


「伯爵。

 どうして………このまま去ったら……。

 一生悔やむでしょう」


「王妃陛下!!」

 

「私は……残ります。

 そしてキャロン商会を再び高みにコペンハーゲンで一番の商会に。

 皆と共に……」


「陛下……」


「だから早く。

 もう空が明るくなり始めています。

 夜が明けますわ。

 誰かに見られたら大変。

 見計らい。

 また訪問すると皆に伝えて!」


「陛下!!」


その時だった。



ガサガサ!!


王宮側の木立の辺りで何か不審な音がしはっと消えそうな声で伯爵に囁く。


「早く!!」


伯爵は素早く暗がりの中、庭園の更に奥へと去って行く。

数秒後、青白い小さな閃光が走ったかと思ったら瞬間に真っ黒な宙が広がっていた。



「王妃陛下?」


私を呼ぶ声がした。

丁度木立の先で鳴った音の方からだ。















王妃を呼ぶ声の持ち主は誰だったのか?

次週構想の為休載いたします。

更新は活動報告でお知らせいたします。

いつもご愛読ありがとうございます。


宜しくお願い致します。


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