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王の居ぬ間に サロンドゥキュー ファッションショー

朗読会の後サロンドゥキューで開催されるファッションショーは?


朗読会は歓喜に満ち溢れ、所々で感極まり涙に濡れている貴婦人達もいて大盛況と幕を閉じた。

その雰囲気がかき消される前に管弦楽団の美しいメロディを奏で始める。


招待客は息を飲んで演奏に聴きほこっている。ヴァイオリンはストラディヴァリウス、チェロはアマテイ、他にもコントラバスやフルート、ファゴットも名器を製作している名高い工房の物を中心にそろえた。

しかも演奏者はそれぞれの名手とうたわれた演奏家が勢ぞろいしている。

グリックのオルフェオとエウリディーチェのオペラの序章から始まり、6つのソナタへ。

見事なメロディーは室内を飾った季節外れの薔薇の香りと共に運ばれ、皆満足そうな微笑を讃えながらもこの美しい演出に甘美なため息をつくばかりだった。

行進曲ト長調の演奏が激しいリズムへと変化し始めると会場中央の扉が開かれる。

そこには招待客が予想もしなかった人物の登場に皆息を呑み大きく瞳を見開いていた。

自分達の目の前にいる人が存在していたのだ。何故ここにいるのか信じられないと言わんばかりにざわめきが起こる。


「まあ~~信じ…られ…アンナ・ゾフィー・フォン・ビューロー男爵夫人ですわ。

 まあ~~~」


「本当に…なんて幸運なんでしょう」


「あぁ~~美しい」


「まさに…美の女神に相応しい」


「なんて美しい…」

驚嘆の声が漏れ聞こえる会場にこの人物は颯爽と現れる。


やったわ~~~!

私も心の中で歓喜。


彼女はデンマークでも美人で流行の最先端をいく注目の若き貴婦人の一人。

今回の招待客は主に新興貴族やブルジョア階級の人々だから。

そうそう宮廷の中心人物と出会うなどという機会に恵まれ満足しているようだった。

平民と貴族その間には大きな溝があり、それは決して交わる事がない。

交わったとしてもそれは同じ空間を共有しているだけで明らかな上下関係しかない。

身分とはそういうもので、皆そこに疑問は持たない。


ブルジョア階級の人々は心の中で貴族への軽蔑と憧れを懐き、新興貴族は旧貴族達に劣等感と同じように憧れが存在していた。


私はその憧れに心をくすぐる演出がしたかった。

だから彼女にに何気なく「サロンドゥキュー」の存在を伝えていたのよ。


いかに流行の最先端の商会なのかを。


その後、彼女に美容やドレス、そして宝飾品などの貸し出しと提供を申し出たの。

勿論二つ返事で了解してくれたわ。

だから今回はモデルとして登場してくれたのよ。


「見てくださいませ。

 あのドレス。

 たっぷりと使ったライトベージュのモスリンの柔らかなでなだらかなドレープは今に相応しい物ではなくて?

 胸元はデコルテを見せつつ丸いラインを肩にはたっぷりと何重にも重ねられた半袖。

 色の白さがベージュの色でさらに際立つよう。透けて見える体のラインは官能的ながらも品がありますわ」


「ええ!

 それにあのハイウエストの絹のベルト。

 細やかな草花の刺繍が素晴らしい。

 ドレスが木綿なんて感じさせない」


「あっ!もしかしたら…アフロディーテではありませんか?」


「あっ!ほら頭に乗せられた生花の薔薇と金の細工の林檎の実。

 よくみればモスリンの裾の鳥の羽が取付られていますわ。

 白鳥の物かしら?

 そう確かに愛と美のアフロディーテですわ」


そう彼女のイメージはギリシャ神話に出てくるアフロディーテを演じてもらいました。

今まさにギリシャ風が大流行。

ここは流行の最先端を発信するには効果てき面。


ビューロー男爵夫人はまさに愛と美の女神に相応しい優雅ないでたちと仕草で肩にかけられたショールをさっと動かすとたちまち風を起こす。


会場は息を呑み、その後すぐにため息が漏れモデルの美しさと高貴さに酔いしれる暇もなく、また再び扉が開けられる。

その瞬間再び歓喜の嵐がどよめいた。


「まぁ~~あのお二人も」


「クリスティーネ・ゾフィー・フォン・ゲーラー女将軍?

 アマリー・ゾフィー・フォン・ホルシュタイン伯爵夫人?」


「なんて事かしらこのサロンは……なんて素晴らしい」

挿絵(By みてみん)

「ここでデンマークの三美神にお会いできるとは。

 なんたる幸運!」


「見て!

 ゲーラー女将軍でしてよ。

 オリーブの葉の金の冠と手にしている杖には梟の像がありましてよ。

 女神アテネですわね」


「それにホルシュタイン伯爵夫人は。

 ドレスに孔雀の刺繍、手には林檎、石榴を持っていますわ。

 女神ヘラ!」


「まあ~~~宮廷の三美神が揃って見れるなんて!

 本当に光栄ですわ」


「ご覧になってゲーラー女将軍のあのドレス!

 シンプルながらもモスリンの重ねられたトップスと短めのスカートが。

 なんて高貴で気品のある凛とした美しさを引き立てる装い。

 銀色で描かれた犬と金色の鹿がなんて美しい刺繍」


「斬新なドレスですわ。

 素材はモスリンですが。

 ただ最高級品でなるのは間違いないですわ。」


「でもそんな事考えないほど。

 素晴らしいドレス」


その会場の雰囲気を更に上げるボルテージは最高潮に達する演出が待ち構えているの。


扉は再び大きく開いた先に両側から背の高い森の風景を描いた画が出てくる。


それはまさにこの部屋が森を思わせる演出。


その背景にモデル三人は中央で座る。

その場に召使達が登場し、バスケットに入れられた食べ物、ワインなどの飲み物を手に三人の前に置く。


その風景を招待客の思考は完全に一つになる。


「あぁ~森でのピクニック。

 なるほど。

 自然に帰れ」


「素晴らしいわ」


「是非ほしいわ」


「なんて素晴らしい。

 私もピクニックにあのドレスを着たいわ」


「あんな優雅で気品がありながらも活動的で身体を締め付けない。

 機能的で自由な…」


「着てみたい」


「ほしいわ」


三美神がニッコリと太陽のような微笑みを招待客に振りまくと、自然と拍手が鳴り始めた。

皆頬を赤く染めて甘く恍惚とした表情て見つめて一心不乱に賛美の拍手は鳴りやまない。


私は再び招待客の前に出て、ゆっくりとカーテシーの仕草をしてみせた。


「ご観覧ありがとうございます。

 これにて本日の催しは終了いたしますが。 1階の我が店ではドレスの試着や注文、小物や宝飾品をお買い求め出来ます。

 是非ご覧の上当商会を宜しくお願いいたします」


宣伝にぬかりないわ。

皆一目散に我先に1階を目指した。

今日の売り上げが過去1になるのは間違いない。

そう確信したわ。


三美神達に礼をのべ、感謝の品を贈った後にそれぞれ馬車で邸宅に戻ってもらった。

こちらも明日以降宮廷で、この話を広め当分忙しいだろう。


何もかも順調だ。





大盛況を得た今回のサロンのイベントの後、王妃の前に予想外の人物が登場する。

これからの重要な人物と奇蹟的な出会いが!

次週お楽しみに。


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