表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/41

王妃と侍女と俳優とⅤ

「あっ!!ラトゥール??」

太陽に雲がかかり、逆光が弱まったその時に目の前に現れたのがラトゥールだと気付いた。


「陛下。

 ご機嫌麗しく。

 声をかけるなど不敬でございますね。

 失礼いたしました。

 何分作法も知らぬ平民でございます。

 何卒お許しくださいませ」


静かに腰を曲げて礼をして敬意を表わしてくれる。

彼は貴族ではないしかも外国人でもその仕草は優雅に見えた。


「まあ~~ここは宮廷ではありません。

 自然に帰れ。

 私もまた一人の人ですわ。

 それよりもアイベンと一緒だと思っていました。

 彼女は?」


「昼寝をしていましたが。

 先に目を覚ましてしまい。

 散策をしておりました。

 彼女はまだ夢の中です」


彼の少し照れくさそうにはにかみながらも答える表情は好感が持てる。


「そう…」

視線を少し外し、しばらくの沈黙は風の音にかき消される。


「それよりも陛下。

 ドレスのデッサンされるのですか?」


私のデッサン画を見ながら感心した様子でなんだか嬉しくなってしまう。


「あぁ~~退屈しのぎです。

 素人のデザインなど恥ずかしいですわ」


「そんな事はございません。

 時代を先取りしている斬新で新しいラインのドレスです。

 舞台でも映えるでしょう」


「まあ~そうかしら??」


「ええ。

 特にこのドレープ部分はいかにもギリシャ

 的で。

 たっぷりと使った生地に。

 コルセットはなささないように思います

 が。」


「ええ。

 コルセットはしないのよ。

 逆にたっぷりと生地を使って長く引くの。

 動きやすく、でもエレガントは失わずに。

 絹かサテンのベルトをシンプルなドレスに

 刺繍やビーズや真珠を散りばめてみようと

 思っているの。

 ギリシャやローマ風な装いなんか今な感じ

 がするわ。

 そして麦わら帽子に造花の飾りをしてリボンは絹の刺繍やビーズを装飾して!」


私の考えに同調してくれたみたいで嬉しかった。

王妃がデザイナーの様な真似をするのは品位がない。

威厳が無いと非難されそうな世界でいる私はその言葉がなによりも嬉しかった。


「そうですね。

 生地は綿ながらも最上級品のシフォンやモスリンを使われると素敵です。

 何層にも重ねると素敵だと思います」


「そうね。

 意外だわ。

 ラトゥールがファッションに興味があるな

 んて?」


「それほどではございません陛下。

 ただ美しい物に興味があるのです」


「そうね。

 美しい物はどんなに貧素でぱっとしない者にもある程度光を当ててくれるもの」


「陛下………。」


「えっ?」


「陛下はそのような物に頼らなくても十分にお美しいです」


「…………」

何を言い出すのか?

この女ったらし!!?

そんな言葉に騙されないんだからね。


「ラトゥール…。

 さすがの私もその言葉は嫌みとしかとらえられないわ」


「陛下。

 とんでもないことです。

 私は嘘偽りを申してはおりません。

 美しさとは人から滲み出るものです。

 その人の人となり。

 表情と知識。

 陛下は私ごときが言葉にするのは恐れ多いくらいに。

 お美しく。

 人を魅了する輝きがございます。

 眩しいくらいに」


「…………。

 ……ラトゥール。

 コホンッ!

 アイベンが聞いていたら焼きもちをやくでしょうね。

 困るわ…。

 彼女は私の大切な侍女ですから。

 変な誤解を受けては……」


「陛下。

 承知しております。

 私は真実を申し上げているのですが。

 お気にさわられたらお詫び申し上げます」


「……なんだか調子が狂うわね」


「何故ですか?

 私は正直に申しあげているのですが。

 陛下は眩しいまでに美しく、魅力があり、輝かしい太陽の光の様でございます」


いや!!

これ以上は聞いていられない。

誰にも言われた琴のない……恥ずかしすぎる。


「ラトゥールでは。

 失礼するわ」


まるで見ては聞いてはいけない様に思えた会話にドギマギして、スカートを翻して別荘へと逃げる様に立ち去った。

何故か心臓の鼓動が高鳴り、頬が赤く染まる感じがする。


彼から逃げる様に立ち去り、別荘へ戻る道のりでふと思い出す。


そう言えば前世の夫は醜女好きだった。

あだ名がメインポールの2人。

異常に身長が高かったからだそうよ。

ラトゥールがゆうような性格良くはなかったわね。

あまり賢くなかったし性格悪なお金大好きで、賄賂好きだった。

彼への愛は確かだったかもしれないけれど。


私は散々2人に自尊心を傷つけられて悩まされた。

ラトゥール。

醜女が性格がいいなんて限らないわ。

残念だけれど…………。




私が立ち去った後ラトゥールが風が吹き抜ける菩提樹の根元一人残される。


「そんなに早く去らなくてもいいのに」


ラトゥールは小さく哀しく苦しそうにぼそりと呟いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://narou.nar.jp/rank/manual.php
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ