王妃と侍女と俳優とⅣ
アイベンの願いを聞いて、その恋人と3人で行動する事が多くなったキャロラインマチルダ王妃。
今回はアイベンの別荘で過ごす事になりました。
キラキラと木漏れ日が輝く菩提樹の下でサロンドォキューから発売するつもりのドレスの下書きをデッサンしていたの。
頭ん中は新しいドレスのデザインが泉に湧き出す水玉の様に湧き出ってきて、一心不乱にペンを走らせた。
まるで文字が浮き出て来るように次から次へと斬新なデザインが紙の上に描かれる。
まるで誰かに後ろから手を支えられて勝手にペンが動く感じ。
火照った身体に涼しい風が冷たくて心地いい。ドンドンアイデアがわいてくる。
今私が来ているドレスは横張りのパニエの上に絹のドレスにはレース、造花、リボン様々な装飾をつけ重量は酷く重くて身動きするにも一苦労なの。
しかもデコルテは大きく胸が落ちてきそうなほど気が気ではない。
美しさは忍耐といわんばかりの衣装。
毎回コルセットで締め上げるから窒息しそうになる。
そうにどころか夜会や催しものの時には失神する事もあるくらいなのよ。
なおさら新しい斬新なデザインのドレスに挑もうと思うの。
今ヨーロッパ各国は啓蒙思想が大流行。
啓蒙思想って言葉にすると難しいわね。
理性による思考の普遍性と不変性を主張する思想で!
あっこれも難しいかしら。
自然の光(ラテン語: lumen naturale)として理性を自ら用いて超自然的な偏見を取り払って人間本来の理性の自立を促すっていうらしいわ。
そう自発的に人間らしく自由に生きるというルネッサンスの次に来た新しい思想ね。
この思想は価値観の変化と時代が変化する前兆の印。
ルソーの人間不平等起源論や社会契約論が有名よね。
王権や教会の絶対的支配ではなくて、平民もある程度の主権と自由を目指した思想ですって。
でもそんな思想私達からすれば危険よね。
自由、平等なんか今の価値観の最上階級層には脅威でしかない。
王権には正反対な思想だもの。
これから新たな時代の予感がする。
私達の存在と義務が変わる時代が来る予感がするわ。
この思想には自然に帰れという原点回避の思考があって、ローマやギリシャ文化への関心も高まって、自然への関心、それはファッションにも繋がっていくのよ。
だから今ラフでそれでいてエレガントな装いのドレスを製作しようと思うの。
それを着て田舎風で自然に触れ合うのに相応しいシルエット素材が重要よ。
ターゲットはブルジョワ階級の女性達にするつもり。
新たな階級の層は流行に敏感だし、後は私の宮廷コネクションでいけている貴族女性をチャンネルにしたら絶対トレンドになるわ。
手元の紙にペンをすべらっせていると紙の端が大きく手前に折り曲がる。
「えっ!」
不意に強い風が髪を靡かせたかと思ったら、書き溜め他デッサンが風に煽られた。
空に高く上がって散らばってしまった!
あちらこちらに舞うデッサン画が青い空に白く染めてそれはあちこちに広がる。
「あ~~~~!!」
風に乗せられて空を舞い落ちてくる1枚1枚のデッサン画を拾い集める。
「あっ!」
ようやく最後のデッサン画を見つけて腰を降ろして拾い集める。
けれどまた風に煽られて、拾い損ねた。
「もう~~」
一番気に入っていたデッサン画を追いかけて、中腰のまま視線を紙へと向けた時ふと地面に靴が見えた。
絹でもなく、木靴でもなく、しなやかなこげ茶の皮の靴男性の物だ。
デッサン画の事も忘れて視線を上へとゆっくりと上げる。
すらりとしたパンツはライトベージュでほっそりとはしているが程よく筋肉質がついた脹脛、腰には黒の皮の幅の広いベルトで留めているウエストは細い。
シャツは真っ白な柔らかな木綿をたっぷりに使ったシンプルなものだった。
顔を見ようと視線をあげるも太陽の逆光であまりはっきりしない。
かろうじて微笑んでいるかのようには見えるのだけど。
「陛下。
デッサン画をおとされましたか?」
男はそういって私に白い紙を差し出した。
「あっ…」
その時太陽な僅かに雲の中に隠れてその人物の顔を浮かび上がらせた。
キャロラインマチルダ王妃の前に現れた男性は一体誰なのか?




