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王妃と侍女と俳優とⅢ

侍女の恋人を紹介されたキャロラインマチルダ王妃はアイベンの意図もわからず劇場を後にする。

その後アイベンが王妃にある願いを伝える。

アイベンは宮殿への帰り道に上機嫌でさきほど楽屋を訪れた俳優がいかに素敵で、魅力で、素晴らしい才能の持ち主で、夜は最高級にもてなす達人かを息もつかない勢いでひたすら話続ける。

まるで息をするように。

彼への賛美を止まる事はなかった。


私は右から右へと話を受け流す。

面倒くさい人の恋バナなどまったく興味がないから。


「私の隠れた恋人なのです」


大体そうだろと察していた私はニッコリと微笑んで話しかける。


「あのように美しい俳優が恋人なら気の休まる日はないわね。

 確かに美しく演技力も素晴らしくて。

 さすがアイベンは見る目があるわ。

 私は貴方達を陰ながら応援するわ」


「ええ。

 彼はとても女性から人気があるんですの。

 だから私も気が気ではありませんの。

 そこで陛下。

 どうか私と共に時折彼に会う機会をお与えくださいませ。

 私と付き合っているのがわかれば、多くの女性達の嫉妬と反感を買うに違いありません。

 彼も私を危険に晒す事は出来ないと…秘密の恋人なのです。

 あまり会ってはくれなくて……。

 陛下のお供に私が同行するのでしたら。

 皆も事実を知らないし、ばれないでしょうし。

 陛下。

 どうか不幸な恋人をお助けくださいませ」


あれ?

私は陰ながらといいましたよね。

アイベン??

いきなりのお願い?


「アイ…」

瞳が今にも泣き出しそうに潤んでキラキラ輝いています。

この状況で断れて?


それに秘密の恋人!

不幸な恋人!

その台詞は私の心に染み込んでいく。

心の奥底に潜む後悔と愛の残照がその言葉に鋭く反応してしまうから。


心臓がドクドクドクと激しく高鳴り、私と彼の愛の日々が全てだったあの日が今世の事のように思い出す。


初めての彼との出会いは彼の熱の籠った熱い手の甲へのキス跡。

そこに炎が灯った様に熱かった。


そして初めて自分の宮廷での生活がいかに困難で屈辱的かを赤裸々に語った日。

彼は愛おしい瞳で私を見つめてくるおしいまでに抱きしめてその胸で泣いたわ。


そして初めてのキスは情熱的で激しくて狂おしいまでに甘美だった。


初めての夜は初めて愛する人と身体を重ねる熱さと、身体と心を満たす快感に酔いしれた。


今はわかる。

彼の軽さが招いた悲劇。

私の浅はかで隙を見せてしまった為に起こった結末。

愚かな行動だったと。



「アイベン……。

 全てを失ったとしても彼の傍にいたい?

 後悔はしない?

 命を賭けられる?」

矢継ぎ早の私の質問にアイベンの瞳が大きく見開いて驚いた表情をして私の映している。

瞳に映る私の姿はまるで修道女の様な固い表情をしてる。


「勿論です。

 彼の為なら死んでもいい!!」

アイベンの奥底の更に奥に潜む炎が一気に身体を燃えたぎらせるように私を見つめている。


今押し寄せては去る波の様な狂おしい思いは私の心に鋭い刃を突き立てるには十分すぎた。

そして心臓は激しく波打ち出来れは言いたくないその言葉を覚悟し、小さな諦めの吐息をつきながらもゆっくりと告げた。


「………アイベン……わかったわ。

 私が出来る事は協力するわ」


「王妃陛下!

 王妃陛下に心よりこの身を捧げます」

アイベンは私の手を取り、その甲に口づける。


はアあ~~~~めんどくさい事になってしまった。

私どうなるのかしら~~。




その日を境にアイベンは事ある毎にラトゥールを誘い3人で外出した。


貴族主催の晩餐会、仮面舞踏会、室内管弦楽のコンサート、オペラ、ピクニックや野での花摘みにアイベンの別荘での滞在まで私は二人を伴って可笑しな三人行動を共にする。

勿論行き帰りは同じでも、私は彼らとは同行しない。

自分でも滑稽で何をしているのかと疑問と後悔はあるの。

でもその一方で幸せそうに見える二人に過去の自分の姿も重なり何も言えないから。


2人がよろしくやっている間は用意された部屋や離れた木陰で読書や景色を見て過ごした。

そんな事を知らない貴族達は私の行動に訝しく思ったみたい。


宮廷で最上級クラスの侍女達は私達が外出の時には決まって噂話を咲かせては宮廷中にばら撒いてるの。



「ストルベルグ伯爵夫人。

 最近の王妃様はいたくアイベンばかりと外出して何か怪しく思われませんか?」

主人のいない人気のない寝室で二人の高位侍女が人に聞こえないようにひそひそと何か話している。


「ええ…ホルシュタイン伯爵夫人。 

 これは王妃様付きの下級侍女の話ですが。

 どうやら王妃様は俳優に夢中で。

 アイベンが仲介役をしているとの話です

 わ」


「アイベンが?

 何故アイベンなのですか?

 私達も王妃様のご事情を十分に理解いたしておりますのに。

 あんまりではありませんか?」


「本当に避妊さえすれば王妃陛下の恋愛も許されるのではありませんか?」


「まあ~~。

 そんなスキャンダルな……」


「まあ~~ところでホルシュタイン伯爵夫人。

 エネヴォルド・ブラントとはその後いかが?」


「彼はホルツ伯爵の怒りをかって宮廷を追放されてしまいましたから。

 お会いしていませんわ。

 残念ですけれども。

 次の恋人を探さなくてはね。

 どなたか素敵な方はいないかしら?」


「王妃様も不幸な婚姻の犠牲者で。

 いまや世継ぎの母となられた。

 王統さえ誤らなければよいのですよ。

 婚姻と恋愛は別のものですもの」


いつの頃からか私がラトゥールと愛人関係にあると言う噂が流れる始末。

しかも侍女達だけでは留まらず、夫にまで伝わりインクの染みが広がるように話は尾びれがついて私の不倫疑惑は確定されているように言われているらしい。

何故?

もうごめんです。

前世の過ちは繰り返さない!

まっぴらごめんです。





ひょうなところから秘密の恋人の助けをする事になった王妃は?

とんでもないスキャンダルに巻き込まれそうになる。

次回は王妃と俳優の?


次回再来週の金曜日に更新予定です。

新話構想の為一旦休載いたします。

ご愛読ありがとうございます。

お気に召しましたならいいね、評価、BM、誤字報告等いただければ励みになります。

ありがとうございます。


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