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王妃と侍女と俳優と

娼婦アンネと無理やり別れさせられたクリスチャンⅦ世は廷臣達に促されヨーロッパ各国を外遊の旅に出ていった。

キャロラインマチルダ王妃は王のいぬ間に次の計画を練ろうとするも横槍が。

「そろそろ陛下も気晴らしをなさいませ。

 よい所がございます。 

 たまには遊びませんと」


宮廷の侍女達は箍が外れたように毎日仮面舞踏会や宮殿のあちこちでカード遊びに夢中のようだった。

仕事はそっちのけのように皆浮き足だって、頭の中は花が咲いたようにフアフアしている。


そうゆう私も市街を徒歩で散歩したり、街なかの人気ブティックで買い物をしたりして、ある程度の自由を楽しんでる。


そんな私を旧保守派の貴族達は

王妃の身分で気楽に市中に出るのは王室の権威を損なうって非難しているって。

何を?

根拠に。

身近な王室のどこが悪いのか?


まったく旧人なんだから!

時代に取り残されるわ!


さて楽しんでいるその筆頭と言っていいのが彼女。

侍女次席エリーザベト・フォン・アイベンよ。

今まさに私の腕をとり手を引いて、ほとんど無理やり宮殿から私を連れだした。


天気はいいし、外に出るには気持ちがいいのだけど。

なんだか気乗りしないからウキウキして足取りも軽いアイベンに対して私は少しひいていてため息が出てきそう。


会話もアイベンの一人喋りをただ虚ろに聞くだけだった。

今日に限って彼女は陽気でお喋りが止まらないよう。

私は会話の内容を右耳から右耳に跳ね返しては脳内にはいって来ない様にしていた。


「本当に素晴らしいのですわ。

 陛下もきっとお気に召すはずです。

 なんといっても人気のグルックの演目ですもの」


どうやら何かのオペラを見に行くようね。

多分宮廷劇場かしら?


はあア~~~今日はサロンドゥキューに行くつもりでサンジェルマン伯爵にも伝言していたのに全部パ~~は~~~。

早くサロンに行きたいわ。

思いついた事業も伝えたいし、伯爵に頼みたい事も、したい事がいっぱいなの。

サロンドゥキューは私の旅立ちの為の船よ。

キラキラした未来しか見えない!

だから今を耐え抜くの。


外といってもほぼ宮殿内の外壁と続く道際に宮廷劇場はある。


石造りの簡素な建物の巨大な檜の一枚板の扉の前に立つとギ~イという音と共に開かれた。

大理石の壁に円柱が規則正しく並ぶ薄黒いエントランスホールの床は黒曜石と白い大理石の市松文様

のコントラストが美しい。

所々大きな金の女神像の燭台が置かれ灯が照らしていた。


「いつ来ても美しい劇場です陛下」

アイベンのその台詞はこの内装についてではなく違う何かを言っているのだと十分に想像できる。

正直このホールは確かに大理石を使用した贅を施したであろうがそれを表現するにはあまりに重厚な造りだった。

私から言わせるとイギリスの劇場の方がこの倍は絢爛豪華だ。

それにここは結婚の祝典のオペラが上演された場所であんまりいい思い出はありません。


「ええそうね」

そう上の空で答えてもアイベンはうっとりとホールを眺めては私の言葉に満足した様子だった。


ふっと気がつくと何者かの影が近づく。


そちらに視線を移すと、そこにはこの劇場の支配人が挨拶にやっていたようだった。

静かに私の前で腰をかがめて優雅に手慣れた様子で礼をした。


「今日は一日楽しませてもらいます」

私はその気はなかったが、こう形式的に言うしかなかった。


「今日の演劇オルフェオとエウリディーチェが素晴らしいものになりますように誠心誠意お世話いたします。

 お楽しみくたまさいませ」


私達は支配人の案内で王室専用の桟敷席に座りその開幕のその時を待った。


劇場内は流石に王室劇場絢爛豪華な装飾が蝋燭の灯火でキラキラと輝いている。

ここにくるのも久しぶり。

そう結婚の祝賀でポッペアの戴冠以来ね。

あの時の嫌な記憶が……。


ロイヤル桟敷席は舞台の右側で正面は距離がある為にこの角度の方が見やすい。

俳優達の表情もはっきりとわかる距離に隣のアイベンは身を乗り出して、うっとりとした表情で開幕を今か今かと待ちわびている。


演奏が始まり、心地よいメロディーが開幕を告げる。

これから上演されるグルックのオペラはギリシャ神話のお話。


オルフェオは友人と共に妻エウリディーチェの死を悼んでいる場面から始まるの。

彼は泣き崩れ「エウリディーチェ」と悲痛な声をあげて歌い出す。


オルフェオのアリア「エウリディーチェを失って」だ。


最愛の妻を失い悲痛なオルフェオの歌が劇場に悲しみで覆いつくし、テノール歌手情感いっぱいに歌い上げ思わずはっとその俳優に瞳が釘付けになる。

狂おしいまでに悲壮なオルフェオの表情。

ぐっと引き寄せられてあの夫がまさかそんな事をするはずないとは知っているのに何故か胸がチクチクと痛い。


このオペラは愛妻エウリディーチェを失い焦燥にかられた琴の名手オルフェオを憐れんだ愛の神がオルフェオの嘆きに心を動かされたゼウス神達は彼が黄泉の国に行って妻を連れてくることを許すの。

彼の歌によって地獄の番人たちをなだめ、何があっても決してエウリディーチェを振り返って見ないという条件を出す。

もしオルフェオが自分の事態を説明しようとしたり、振り返ったりすると彼女は永久に失う。

オルフェオはこの難しい試練に挑み、黄泉の国へと向かうのね。


第一の関門が復讐の女神たちはオルフェオを恐ろしがらせようとして、地獄の入り口で彼を押しとどめる。オルフェオは勇気をもって竪琴を取って甘い歌声で彼女たちを静めるとオルフェオに道をあけてね。

復讐の女神や死霊たちは静かに消えて行くの。

その後オルフェオはエウリディーチェを発見。

オルフェオはエウリディーチェの姿を見えないようにして手を取り地上へと向かうのね。


でも第二の関門で振り向かないオルフェオにエウリディーチェは夫の愛が冷めたのではないかと怪しんでだの。

すると夫について行こうとしなくなったの。

絶望したオルフェオは耐え切れず、エウリディーチェの方を振り向いてしまうのね。

そのとたん、エウリディーチェは倒れて息絶えちゃうの。

オルフェオは嘆いて、そして短剣を取り上げて自ら自殺を決意する。

挿絵(By みてみん)

その時、愛の神が現れ彼を押し留める。

愛の神は「お前の愛の誠は十分示された」と告げてエウリディーチェは再び息を吹き返す。

2人は喜んで抱き合って喜びを分かち合う。


ルフェオが羊飼いやニンフたちと共に愛の神に感謝し、羊飼いやニンフは踊りを捧げるの。

エウリディーチェも愛の神に感謝し、全員が愛を讃える。


大合唱のうちに幕を閉じた。


美しい夫婦愛私に言わせたらもう勘弁。

私達の夫婦関係では絶対あり得ない夫婦の展開。


でもねこの2人が恋人同士なら私も共感するわ。

私といっても前世の私が………だけど。



まさかの俳優の楽屋を訪問する話に。

次回俳優との出会いがとんでもない展開に。


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