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第三章 新しい命の誕生

ゲンターベン嬢の暗殺計画を阻止してようやく落ち着いた王宮で王妃の出産が始まり王宮は騒がしくなった。


油汗がじんわり額が滲んでは下腹部の痛みが激しくなる。

ズキズキ!ドンドン血の気の引いて呼吸も荒くなる。


その後はまるで腹を切り裂くような激痛が走って失神しそうになり、それがおさまるとまだ襲ってくるの繰り返し。

傷みは止まることがなく、それどころか益々激痛が増していく。

もう汗をかいて寝屋着はビトビトになってる。


ようやく侍従達が現れて抱えて寝台に寝かされた。

しかも激痛は終わる様子はない。

陣痛なのだからそうだろう。


周期的にやってきては止まり、やってきては止まりを繰り返す。

これが夜中に始まったのだ。

眠れやしない。


必死の思いで寝台に垂れている太い紐を力一杯引いて侍女をこさせるが、あいにく夜中だったためにいくら紐を引いても重い扉は簡単には開かない。


「……WA~~~~~」


この感じは前世で記憶にある。

多分のこの後すぐ破水するはずだ。


「誰か!」

傷みに耐えて声を絞り出すが、人のくる様子はない。


そして何度も何度も紐を引くとようやく扉の開く音が静寂を切り裂いた。



「早く!

 早く産婆を……」


にじみ出る油汗と激しい痛みの中で声を絞り出すように伝えた。


「……おう……王妃様」

マチルダの声が聞こえた気がした。


「王妃様!

 大丈夫ですか?

 誰か!誰か産婆を!!」


マチルダは倒れかける私の肩を両手で抱え込み支えてくれながら叫ぶ。

痛みでほとんど意識が朦朧として何が何だかわからない。


「早く!産婆を!!誰ぞ!!」

プレッセン侯爵夫人が叫んですぐに侍女達がかけつけた。


「早く産婆を連れてきなさい。

 陛下が!

 早く!!」

プレッセン侯爵夫人が興奮した様に再び侍女に伝える。

しばらくして人の駆け足やバタバタとした物音、声もするが、痛みのせいでまったく気にならない。

ドンドンと身体中を吹き出す汗をプレッセン侯爵夫人がハンカチで拭ってくれる。


しばらくして数名の女性が王妃の寝室へ駆け足で現れた。


「王妃様。 

 もう少しの辛抱っです。

 力んでください。

 次に力を抜いて!」

産婆の声がしっかり耳に入ってこないが。

私は経験者だからなんとなく身体が覚えていた。


「お上手ですよ。

 王妃様!

 力んでください」


「わぁぁぁあぁ〜〜」


「王妃様!

力を抜いて!」


「ぎゃあ〜〜!!ぎゃあ〜〜!!」


下腹を切り裂かれるような激しい痛み。

私の断末魔と言わんばかりの叫び声が混じって、ここは地獄のような修羅場だ。

やはり気持ちの上では三度目の出産だけどなれないわ。


このやり取りを何時間していたのか記憶にない。

かなりの時間が経った。


正午前寝室に突如響き渡る赤子の泣き声!


「おぎゃ~~~~~~!!おぎゃ~~~~~~!!

 おぎゃ~~~~~~!!」


やっとおさまった痛みがおさまり何度も深い呼吸を繰り返しようやく朦朧とした意識から解放されて、プレッセン侯爵夫人の喜びで跳ねるような声が聞こえた。


「王妃陛下。

 おめでとうございます。

 王子殿下誕生でございます」


プレッセン侯爵夫人がにこやかな微笑みと共にカーテシーを披露して、後ろに控えた乳母を寝室に乳母を引き寄せた。

挿絵(By みてみん)

その手には小さな絹の衣に包まれた赤子が大切に抱かれていた。


産婆は太陽の様な満面の光の眼差しで私のすぐ横に赤子を寝かしつけた。


小さな、艶々した絹の衣につつまれたその赤子は丸々として肥えいかにも健康そうだ。


五体満足で安心するべきだが、病弱だったり精神的に問題を抱えていそうにない。

ほっとした。

そして私の全てをかけてこの子を王に相応しい子にしなくてはと心に誓わずにいられない。


白い磁器の様な艶々した肌、キラキラと絹の金糸のような髪に淡いグレーブルーの瞳はクリクリと愛らしい。


「宜しくね。

 デンマークの新しい未来」


赤子はキョト~~ンとしてしばらくした後、瞼を閉じてスヤスヤ眠り始めた。


「デンマークの希望。

 私の希望。

 愛しい子を再び………」

まだほっかほかの赤子の肌にキスをする。

柔らかなでスベスベの頬に愛おしさで胸がいっぱいになる。


出産後しばらくしてから夫が私の寝室を訪れた。

ややぎこちなくキョロキョロとせわしなく瞳を動かして落ち着きがない。


「陛下。

 さぁ殿下のお顔を見てさしあげて」

視線を合わせない夫に無理やり笑顔を振りまきながら伝えた。


「…う…ん」

傍にいた産婆が赤子を抱き上げて捧げるように夫に見せる。

赤子はスヤスヤと気持ちよさげに寝入っていて、その姿が珍しいのかじ〜と眺めている。


「ふぅ〜ん」

なんども瞼を閉じては開きを繰り返した後に、ちょっとだけ指で赤子の頬を突いて満足そうに帰っていった。


何なんだろう?

ゲンターベン嬢が逮捕されて首都を追放されて暫くは荒れた日々を過ごしていたが、今は切れた糸のように静かになったという。

春過ぎには廷臣の助言に従ってヨーロッパ各国を外遊するらしいので私も自由になる。


さぁ計画を実行しなきゃ。


世継ぎを産んだキャロライン・マチルダは次回好機を得て、城下へと新たな計画の為に動き出す。


世継ぎフレデリック6世は王太子時代父クリスチャンⅦ世の摂政殿下として若いうちから政治に関与していました。


長男フレデリックⅦ世は幼い頃から母キャロラインマチルドと長く接する事のがなくなり、異父妹(当時父は王妃の愛人だったと信じられていた)と宮廷で王太后の監視の中育っていった。

長く伯父と義理の祖母王太后に政治的影響力を妨害されていたが、クーデターを起こし親政を開始し啓蒙主義を背景に改革を行う君主と知られます。 

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