轟く宮廷 宇宙の恋人の顛末Ⅷ
シンメルマはサンジェルマン伯爵とキャロラインマチルダ王妃の説得で国王の愛人アンヌを穏便に処理すると約束してくれたのだった。
その方法とは?
「陛下。
民衆とは移ろいやすいものです。
このまま再びあの娼婦を宮廷に招き入れた
ならば。
必ずや暴動すら起こるでしょう」
その日はゲンターベン嬢が宮廷を去って初めての閣議だった。
腕組みをしながら神妙な面持ちでシンメルマが突如として国王クリスチャンⅦ世に言葉を投げかけた。
ホルク伯爵も何を言っているのかぽか〜んとした顔でシンメルマを見ている。
他の大臣も同じだった。
暫くの沈黙のあり、国王がうわずった声が口から漏れた。
「……そ…そん……」
1人真っ青な顔色をしてクリスチャンⅦ世は震えながらぼそりと答えた。
王は王妃がゲンターベン嬢を救うと聞かせられていたのに、突然のシンメルマンの厳しい言葉を聞いて狼狽してしまっている。
王妃は愛人の暗殺計画がある事実を話したら、また精神的に不安定になるのを恐れて話してはいなかった。
シンメルマンは度々娼婦を宮廷に迎え入れるなどあってはならないと排除と清算を呼び掛けていたが、王は無視をしていた。
そうそう彼女と離れないほど精神的に頼り切っていたからだった。
「陛下!!
あの性悪女を追放しないと。
このままですと。
民衆が暴動を起こし王位を追われるかもしれません」
閣議という場でシンメルマンが初めて決断を迫った事は、王に大きな衝撃をもたらした。
今まではあくまで2人きりの内密に助言を受けたにすぎなかったからだ。
それはゲンターベンがホルク伯爵の紹介で王の愛人におさまった経緯によるものだったからだ。
シンメルマンとてこの野心家で権力に対し独占欲の強い男を真正面から対立するつもりはなかった。
しかしそうも言っていられなかった。
しかもすでにホルク伯爵と娼婦の関係は殺害対象になるくらいだ。
その通りホルク伯爵はシンメルマンのこの言動にも無表情と無関心で装った。
内心はシンメルマの意図が見えず困惑しているが表情にはみせない。
しかも反対の意も唱えない。
暫くシンメルマと国王の様子を呆然と見ていたホルク伯爵はハッとしてシンメルマンの顔を凝視した。
そこで気がつく。
そうこれはあのゲンターベンを排除する戦略なのだ。
では私達があの女を暗殺する計画を知ってるのか?
「えっ…そんな…この間も外出した…時…
皆手を振って……。
喜ん…!喜んでいたよ」
「昨日歓喜して支持していても、今日、明日の保障はありません。
今この時にも民衆はあの公序良俗を犯した娼婦への怒りが爆発し抗議の列が出来ています。
このままだと暴動に発展して革命が起こるでしょう。
そうなれば陛下。
よく亡命。悪くて処刑でございます。
陛下!
娼婦の起こした数々の事件が民衆の怒りを増幅させています。
もう市内のあちこちで、民衆が集まり決起しています。
問題は国内だけにはどどまりません。
民衆が武装発起してしまったら。
ロシアが好機と見て我が国への進軍を始めるかもしれません」
シンメルマは優柔不断ですぐに錯乱しがちになる国王の心情を突き壁際に追い込む。
「そ…そん…ロシアが!」
わなわなと暴動の光景やロシア軍の侵攻がクリスチャンⅦ世の脳裏を埋め尽くす。
暴動?戦争?革命?亡命?処刑?
「それは駄目!
それは駄目だ」
自身のギロチン台にかけられるそんな絵が脳裏にべっとりと筆で描かれた図で埋め尽くさせていく。
油汗がドッと噴き出す。
「絶対に駄目だ。
チャールズ1世みたいになりたくないよ」
顔面蒼白で小刻みに震え始める。
「陛下!!」
シンメルマは更に追い打ちをかけた。
「それだけではありません。
陛下の決断がデンマーク王国の存亡がかかっているのですよ。
ロシアが攻め込んだら、亡命いえ処刑すらありえます。
陛下。
ゲンターベンを首都から追放すべきです。
陛下!陛下!
ご決断を!!陛下!!」
「わぁ〜わぁぁ〜」
王の獣の雄叫びに似た叫び声は部薄い窓ガラスすら砕け散らさんばかりに部屋中に響き渡る。
廷臣シンメルマに詰め寄られ、クリスチャンⅦ世は取り乱す。 彼はどういう幕切れを用意するのか?
次回アンヌの処遇は?
轟く宮廷編クライマックス!




