轟く宮廷 宇宙の恋人の顛末Ⅴ
シンメルマンの経営する貿易会社と大型取引を持ち掛けた王妃はシンメルマンを説得出来るのか?
「……どうしてそんな大きな話を私に?」
困惑したシンメルマは狼狽えたような表情を隠さない。
新興の商団とはいえ大きな利益と短期で成長した商団だった。
確かに自分の経営は成功しているが、何故なんの取引も接点もない私なんだ?
そういう疑が顔にはありありと持て取れる。
デンマーク王国は経済基盤が弱く、貿易取引ではどうしても輸入が多くなりがち。
シンメルマンは自身の所有する植民地のプランテーションの生産物を他国へ輸出し利益を得ていた。
他には造幣工場や多角経営を目指している。
そこにイギリスと太いパイプを持つキュー商会との取引は絶対に悪くはない。
ほぼ成功するであろう大型取引だ。
そう美味しいとしかいいようのない話。
「以前からシンメルマン様の商才について感服していました。
大きな商談をするにはぜひとも取引をしたいと望んでおりました。
当商会は新興の商団にてデンマーク国内で安定した取引先を切望しておりました。
いままでお声がけしたかったのはまだまだ私共の信用と実績が弱いと判断した次第です。
今回のイギリスとの貿易の成功を受けて是非ともご一緒したいと考えた所存でございます」
しばしの沈黙の後、シンメルマンは大きく深い溜息を一つついた。
右手を自分の額に当てながら瞼を閉じて下を向いてはやや濁った様な声を発した。
「まず貴方が本当にキュー商会のオーナーである確証はない。
しかも貴方変装しているが女性だろう。
しかも見かけるところ妊婦でいらっしゃる。
私は自身を偽る者とは取引しない」
そう吐くとすばやく席を立とうとして、すっと膝を起して立ち上がった。
はっ!と私も彼の動作について立ち上がる。
彼がそう言うのも無理はないし、その行動は想定内だった。
彼の妻は知っているが、彼とはあまり接点がなかった。
宮殿の夜会で会っても挨拶程度しかしてこなかった。
そもそも夫の廷臣達とは接点がなかったから。
何せ彼の愛さない宣言は宮廷では有名な逸話だった。
強いていうなら彼らの夫人達とは交流があるが、私と夫の冷えた関係だと認識しているのに敢えて私におべっかをする必要はないから。
しかも今の私はいかにも市民といった服装であり、宮殿で正装をして着飾った人物に見えないのはわかった。
しかし私も必死だ。
娼婦といえど一人の市民の命がかかっている。
しかも彼女を宮廷に受け入れたのは私。
これで諦めるという選択肢がない。
「お待ちを!
どうか…なら確認を」
シンメルマンは話を聞くつもりはないと言わんばかりに、瞼を薄く閉じ気味にしたかと思うと視線を私から反らす。
「私の話を聞いてください。
夫人を良く知っています。
私は度々夫人の主催する仮面舞踏会に出席しました!!
夫人を呼んでいただければ私の身元は証明する事が出来ます」
彼の右手を掴んで懸命に説得しようと矢継ぎ早に話しかけた。
そう夫人とも何度も面識があり、会えば私に気がつくはず。
強引にシンメルマンと瞳を合わせるとはっとした様な顔つきになった後、彼はすぐに冷静さを取り戻した。
私の腕を自分のシャツから引き離し落ち着いた声で言った。
「妻の主催する仮面舞踏会にはいろいろな方が出席されます。
だからと言ってわざわざと会わせようとは思いません。
お見受けした所妊娠中でおいでになるようです。
興奮せずに今日はお引き取りいただくのが良いかと存じます」
「そうおっしゃらず!
お願いです!
夫人を夫人をここに呼んでください男爵!!」
前もって夫人にお願いする案も考えた。
けれどその場合では会ってくれるかどうか保証はないしかもキュー商会のオーナーが王妃など伝えるとあっという間に宮廷に広がってしまう。
それは避けたかった。
ドンドンドン!!
突然扉を叩く音が部屋に響く。
「旦那様。
旦那様申し訳ございません。
急なお客様が……」
執事の焦った声がした。
シンメルマはむっとした表情をした後、すぐに無表情に変わり静かに告げた。
「今たてこんでおる。
約束のない客人は断ってくれ」
そう告げた後だ。
「ちょ…ちょっ…とお待ち……お待ちを!!」
執事の声が聞こえた後、扉が突然開けられた。
面談に突然執事が大わらわした後、客間の扉が乱暴に開けられた。
誰が現れたのか?
キャロラインの絶体絶命の次回どんでん返しが。




