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轟く宮廷 宇宙の恋人の顛末Ⅱ

ホルツ伯爵は強欲な娼婦をどう処置すればいいのか?

王太后に相談するため宮殿を訪れた。

とある昼下がりホルツ伯爵はある目的の為に派閥の貴族の数名と共に王太后の宮殿を訪問していた。

挿絵(By みてみん)

荘厳で豪華な国王のいる宮殿とは違い王太后の宮殿は落ち着いた内装の如何にも生活に密着した過ごしやすいように整えられていた。


ホルツ伯爵は若い頃から侍従として国王に仕えた王の寵臣の1人だった。


権力ほど魅力的なものはないと思っている。

自身の思うがまま政治を実質的に支配したい。

但し責任は持ちたくないのだ。

それには王がいて、自分が実務を担う役割が最適だった。


今までどんな政治的提案書も全て国王の証印を受けて自分の思う通りに政治を動かせた。


しかしここに至って宮廷を。

いや貴族社会を揺るがしかねない事態に襲われている。

たかが…娼婦が宮廷を思うままに操りかねない事態を手をこまねいてみている事は出来ない。


そこでホルツ伯爵が相談相手に白羽の矢を立てたのが王太后だ。


確かに国王の生母ではない政治的にも影響を与える人物ではなかったが。

前国王の王妃となれば、それなりに宮廷を揺るがす事件を起こす場合の後見人としては最適な人物だ。


「お久しぶりですねホルツ伯爵。

 いつも王の傍から離れず私の所には寄り付きもしないのに。

 私の元を訪れるとは珍しい事もあるものです」


確かにホルツ伯爵はほとんどいや。

王太后の宮殿を訪れる事はなかった。

王太后は国王の生母でなく、何の影響力もなかったからだ。

前王が亡くなった時にはクリスチャンⅦ世は成人に達しており摂政を必要としなかった。

王太后の出番はなかった。

しかも王太后元々政治には興味はなかった。

あるとするならは我が子の平穏で安定した行く末だけだった。


「政務に追われ無礼をいたしておりました。

 心から謝罪申し上げます。

 王太后陛下。

 お聞きになられましたか?

 あの娼婦!

 宮廷で事件を起こしましたのですよ。

 早急に手を打たないといけません。

 いつまた陛下をたぶらかして宮廷を混乱させるかと思ったら居ても立ってもおられず。

 ご相談したき事があり。

 本日失礼を承知で訪問いたしました」


「いえかまいませんよ。

 ほとんど世捨て人の生活です。

 ホルツ伯が訪ねてくれるとは思いもしませんでした。

 ええ私の側近に暴言と暴力を振るったそうですね。

 彼女からも泣きながら私に訴えてきましたからね。

 私も廷臣の一人に会わないといけないと思っていました。

 このままにしてはおけません。

 そういえばあの女はハルツ伯が陛下に紹介したのでしょ。

 飼い犬に手を噛まれたといったところかしら?」


皮肉交じりの言葉の語尾を悟られない様に口元にコーヒーのカップを当ててフルーティーなコーヒを口へと流し込む。

熟れた酸味のある果実の様な香りと口に広がるスモーキーな苦みとこくが広がる。


「耳の痛い話でございます。

 おっしゃる通りですが、まさかあんなに性悪とは思わず浅はかな行動でした。

 王太后陛下にはお騒がせして申し訳ございません。

 そこで陛下にお力添えをお願いしたく…。

 やはり確実で正当な方法で早めに処置するのがよいと思います。

 徹底的に塵1つ残さないように。

 ただそうそう国王陛下が首を縦に振られるか」

ハルツ伯爵の言葉を聞きながら流石に魑魅魍魎の宮廷を牛耳るだけはあると王太后はある意味の関心すら感じている。


「陛下には言わずにおけばいいのですよ。

 後でなんとでも理由を伝えれば問題ありません。

 絶対に返り咲けないようにしましょう」

王太后の口元が緩み信頼にも見た様な一言はハルツ伯爵の考えをも驚くような一言だった。


「えぇ??」


「闇に葬るのです。

 そうすれば私達は安泰です。

 陛下には首都追放と伝えればよい。

 逮捕して明るみになるのも体裁が悪い。 

 と陛下には伝えるだけでいいのです」


平然と人を殺せばいいとさらりと言ってしまう王太后。

ホルツ伯爵は表情には出さなかったが、その言動をにわかには信じられなかった。

輿入れの頃からそれなりに知っていたが、どちらかというと何事も波風を立てず穏便に済ませたいと考えるのではと想像していたからだ。


「…なるほど」

閣議の際確かに「殺す事も厭わない」と言ってはみたが、実際にそうするつもりではなかった。

怒りに任せての言動だったのだ。

しかし王太后にそう告げられるとその方が後腐れなくてよいのでは?

とも気持ちが徐々に傾く。

追放ならまた国王に会いにくる可能性がある。

もうあんな面倒な女の心配事は御免だと宮廷が大騒ぎするのはもう懲り懲りだったからだ。


「あの女を思い出さないように快楽を与え続ければ、そのうち忘れるか。

 正気をなくして存在すら覚えていなくなるでしょう。

 それとついでに目の上のたんこぶを排除しましょう」


王太后は深い関係性がなかったのにも関わらず王の性格を熟知しているように思えた。


「目の上のたんこぶ?」

一瞬誰の事かわからなかった。


「ええ。私にとっても。

 貴方にとっても。

 今日はこの後お時間はあるのか?」


「はい王太后陛下。

 長くなると思い予定は入れていません」


「では隣国から良い紅茶の茶葉が入ってきましたの。

 一緒にいただきましょう」


「光栄に存じます」


権力に興味があってもなくても利害関係が一致すれさえすれば簡単に人は動くという事実が証明出来た瞬間。ホルツ伯爵は胸を撫でおろし、今回の訪問の実りが多かった事に十分に満足して王太后の宮殿を去って行った。



 














ホルツ伯爵は若いクリスチャンⅦ世を政治から整えるために酒、女、博打、暴行あらゆる悪行を教え込んだ。

デンマーク宮廷は元々乱交で腐敗していたが、狂気に陥った新国王で道徳観念はすっかり廃退していたといいます。

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