転生王妃 曾祖母と曾孫娘
私キャロライン・マティルダはイギリス王太子だったフレデリック・ルイスと王太子妃オーガスタ・オブ・サクス=ゴータとの間に生まれた末娘です。
嫁いだ夫の初顔あわせで愛さない宣言された最悪な夫の出会い。
そして私の秘密も明らかに?
私はイギリス連合国の元王太子の末娘としてこの世に誕生した。
その父は私が誕生した時にはすでに死去していたわ。
母は夫の存在なしで私を育てる事になった。
1人でというのは多少語弊があるわね。
当時は沢山の乳母や家庭教師、侍女と召使がいたので育児はそれほど負担ではなかったと思う。
何故から私達は王族でそれ相当の暮らしを約束されていたから。
ただ亡き父と母は共に父方の祖父母と仲が悪かった。
どうもそういう家系だったようね。
私の曾祖父と祖父も、祖父と父も不仲だった。
なので私は王宮ではなく、レスターハウスという貴族の館風の邸宅や郊外のキュー宮殿で沢山の兄姉と母と一緒に中産階級(裕福な市民階級)の様な暮らしをして育った。
そう王族の義務の一部から逃れて自由な生活だったわね。
読書、語学、歌、演奏、乗馬なんか好きな事はとことんしたわね。
多くの兄姉に囲まれて過ごした日々は最高だった。
今思えば涙がでるほど充実した少女時代で私の最高の思い出になっている。
えぇ。
不幸な幼少期ではなかったと記憶しています。
ただ公務とは無縁の生活をしていたので王族の義務を果していなかった。
ロンドン市民には人気はなかったと聞いています。
母に至っては憎まれていたようだし。
私個人の人気もなかったわ。
なにせ客観的に見ても国民が熱狂するような美人ではありませんし。
はっきりいって地味で醜女だと思っています。
それに私……ちょっといや…だいぶかわっているの。
幼い時から人には言えない秘密を持っていた。
それは忘れもしない5歳の時、高熱を出した夜に夢を見たの。
そして目を覚ました時からその記憶が蘇ったの。
その夢………は。
年老いて痩せた白髪の女性が暗闇の中、僅かな蝋燭の光で細く骨ばった指先に持った筆を一心不乱に走らせていた。
血走った瞳に殺気さえも感じたわ。
私は宙に浮いていてその光景を見ているの。
でも恐怖はない。
何故なら。
何故だか彼女の心理状態が私には手に取るようにわかったから。
そうまるでその老女が自分自身の様に感じたの。
私は恐ろしくて目を閉じたけど不思議と瞳を閉じてもその光景は鮮明に見えるの。
夢だからかしら?
その文章はドイツ語だったけれど私は読めたわ。
そこには多くの愛人を抱えて徹底的に屈辱を与え続けられた恨みつらみ、夫の犯した罪の数々が書かれていたの。
そう罪人へ裁判官が彼の罪の数々を法廷で語る様に。
手紙の最後にこう結ばれていた。
「死んだら裁きの庭で待つ。
貴方は私より先に死ぬだろう」
そしてこの手紙を書き終えてこの女性は亡くなったのよ。
その予言に似た遺書とは違って老女が先に逝去したのね。
この手紙は数年後になんと手紙をあてた夫の元に届くの。
夫はその手紙を読んで恐怖のあまり心臓発作を起こしてしまう。
何故からその時点で書いた主の女性は死んでいるから。
死んだ人間からの手紙は恐怖そのものだったでしょうね。
この事件が元で手紙を貰った後、長く病床にあって体調が悪化死去してしまうのよ。
この手紙を書いた女性こそ私の父方の曾祖母であるゾフィー・ドロテア・フォン・リューネブルグ公女なの。
そして手紙を貰った相手こそ彼女の夫で私キャロライン・マチルダの曾祖父にあたるジョージⅠ世なの。
「君臨すれど統治せず」イギリス王室のこの統治の思想を初めて誕生させた国王様。
そしてイギリス人でないドイツつまりゲルマン民族の初めての王朝の祖ね。
そうそして私!
私キャロライン・マチルダはこの手紙を書いた主ゾフィー・ドロテア曾祖母の生まれ変わりなのよ!
この夢を見た後、私の脳裏に当時の様子と風俗と風景が鮮明に浮かんでは蘇ってきたの。
いわゆる転生ってやつね。
曾祖母いえ…私は。
私は散々な結婚生活を送って最後には田舎のこじんまりした城というにはあまりに簡素なアールデン城で幽閉生活を送る羽目になったのよ。
またそのうち解説するわね。
私前世でハノーファー選帝侯の息子ブランズウィック・リューネブルク公、リューネブルク公ゲオルク・ヴィルヘルム・プリューヌルとフランス貴族の侯爵令嬢エレオノーレ・ドルブルーズ(後にブランズウィック・リューネブルク公爵夫人)の唯一の娘として誕生したの。
両親は長く愛人いわゆる内縁関係だったの。
正式に結婚していない夫妻の間に生まれた子供は非嫡出子としてなんの権利もなかった。
それどころか他家の名家にも嫁げなかった。
キリスト教では夫婦間以外の肉体関係は厳禁、なのに妾が平然といるのは??だけど。
父は美人好きで母は大変な美人で有名だったのよ。
でも身分が田舎フランスの貴族の娘ってだけでは選帝侯妃にはなれない。
だから正式な結婚は出来なかった。
母を見初めて選帝侯の跡継ぎだった父はその選帝侯の地位を放棄して一緒になった。
貴賤婚は正式な結婚として認められていなかったから。
そう私は生まれた時には私生児だったの。
そうそう選帝侯っていうのはね。
神聖ローマ帝国の皇帝を選らぶ権利のある侯国の君主の敬称ね。
まあ神聖ローマ帝国っていうのは名前だけ残っているにすぎないし。
今ではオーストリアハプスブルグ家の独占敬称だったからだから何?
なんだけどまあ名誉称号って感じね。
その後父は神聖ローマ帝国皇帝レオポルトⅠ世(ハプスブルク家の皇帝)の軍に従軍し、戦功を挙げた功績で私の母は神聖ローマ帝国の貴族に叙され、二人は正式に夫婦になったのよ。
母は愛人から念願の正妻に昇格したの。
その時から私は公女として一躍王侯貴族の花嫁候補になり羨望の的になった。
引きてあまたの嫁ぎ先候補のうち父が用意した私の結婚は想像を遥かに超えた最悪なものだったわ。
キャロラインマチルダは曾祖母の生まれ変わりだった。
次に前世の夫との関係は?
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