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蠢く宮廷 宇宙の恋人Ⅱ

王宮に現れた娼婦にして国王の愛人。

早速貴族の貴婦人にけしかけられ宮廷で暴力問題を起こす。

大騒ぎの後王が失神してしまう。

キャロラインマチルダ王妃はどうするのか?

ゲンターベン嬢の末路は?


騒々しい団欒の間とは違い宮殿の奥にある国王のアパルトマンの寝室は絢爛豪華な装飾が無機質で冷たい印象で落ち着かない。

私ならこんな部屋で夜を過ごすなんて御免だ。

実は国王の寝室にくるのは初めてだった。

ここは彼が一人かもしくは夜を過ごす女性と二人で過ごす場所だ。


「王妃陛下。

 宮廷医も大事ないと診断されました。

 国王陛下も落ち着いて眠っておられます。

 なにとぞお部屋へお戻りください。

 陛下までお倒れになったならお腹のお子様

 が……」


控えた侍女が心配そうに恐縮しながらも小声で話しかける。


「えぇ。

 陛下が目を覚まされたらね。

 それに出来るだけ早くお伝えしたい事もあ

 るし。

 もう少しして目覚められなかったら私も部

 屋に戻るわ。

 貴女は小一時間ほど席を外していて。

 時間になったら迎えに来てください。

 しばらく二人っきりでいたいわ」


「……は…い陛下」

侍女は儀礼的なカーテシーをして国王の寝室の扉は閉ざされた。


窓枠を軋ませる強い風が不気味な音と遠くで梟の鳴き声が微かに聞こえてくる。

静寂の中に不気味な音はなんともいえない恐怖を感じさせる。


私は夫の顔を眺めながら彼との関係をあれこれと思い返す。

突然にひつこいほどの会話を強要したかと思ったら完全の無視、時に罵倒され自尊心を木っ端微塵にされた。

そもそも正面からなんの戸惑いもなく愛さない宣言されたのだ。


結婚生活は最悪で夜を共にしても儀式の様な性行。

そういえばその時にしか二人っきりになった事がなかった。

そうそう寝顔など見た事がないわね。 


端正な顔立ち美男だ。私には決してないもの……。

私とは違う明らかに高貴な家柄の出である事を物語っている。

整いすぎるその容姿に突如劣等感の波が私に襲いかかるけど羨ましいとは思わない。


私は父を知らず祖父母には無視されていたけど、離れて暮らしていたし私の家族と共におくる生活は本当に楽しかった。

少し執着を感じるくらいの母に、兄姉に愛された間違いない。


そう思いながら臨月に近い大きなお腹をさすりながら王の生まれた環境を考え思いあった。


では彼は違う。

叔母様は幼い頃に死別、兄弟とは王太子として離されて教育を受けた。


先王はアルコール中毒で病弱な彼に見向きもせず、教育係の虐待を受けて育った。

そして精神的な心の病と病がちな身体。

それらを引き換えにして得るものなんて何もないもの。

放置と軽蔑から逃れる方法は狂気しかないのかもしれないと思うの。


私は今彼を夫としてではなく、まるで子供の様にそう自分が生んだ子供と思えばいいのではないか?

そう思う気持ちが芽生えてくる。

何だか変な感じだ。

初対面でかなり印象の悪い奴だったけど。

もはやその嫌いの域をふっきったように思う。


そう冷たい頬に触れて哀れな人と心の中で呟く。

そう私はそんな人には育てない。

この子を。


その時だ。

自分の腹に何かが揺らめく感触が伝わったような気がした。

自然と手で腹を優しく撫でて母となる喜びとそしてある決意は揺るぎない。

心に誓う。


そう少なくても私は丈夫な身体と心を持っている。

しかも前世の記憶のお陰で知識もできるだけ得るように勉学に励んだ。

得たものは大きいから。

この子が生まれ育つその日の為に準備しないと……。


ふと視線を天蓋に向けた瞬間、夫の身体がピクリと動いたように感じた。

はっとその顔を覗きこむと長いまつ毛が微かにゆれて灰色がかったグレーブルーの瞳がゆっくりと淡い輝きを放った。


「陛下?

 おかげんは?

 ご気分はいかがですか?」


ぼんやりと私を見つめる夫の瞳はどこかふわふわと彷徨っているようで焦点が合っていない。


「陛下?」

大丈夫かしら?


私はサイドテーブルに置いていた水差しを手に取りグラスに水を注ぐ。

トクッドックとグラスに注いで手に握りしめ興奮しないように夫に囁いた。


「お水をお飲みくださいな。

 さぁ身体をベットの背もたれに」


幼い子に話すように慎重に普段は決して見せない柔らかな微笑みを添えながら。

夫は何も言わず私を瞳に映して言うがまま上半身を起こした。

私は彼の右手にグラスをもたせて深く頷いた。


「さぁ。ゆっくりお飲みくださいな」

夫はまだ寝ぼけているのかぼんやりとした瞳を私に向けながら手にグラスを持ちゆっくりと水を飲み始めた。


大丈夫だろうか?

医者を呼んだほうがいいだろうか?

瞳は虚ろげで焦点がまったく合っていない。

明らかに様子が可怪しい。

いいしれぬ不安の嵐が脳裏をかすめた時、たよりげのない夫の声が耳に届いた。


「アンヌは……ねぇ~~アンヌは僕のアンヌ。

 アンヌどこ?

 アンヌはどうなるの?」


普段の荒くれた暴力者ではなく幼子の様なその口調はなんだか拍子抜けで、どう接したらいいかなんて考えてた事は全て吹き飛んでしまった。


ああ~そこか。

そう思いながらふっと息を吐いて彼の寝台の横に置かれた簡易椅子に腰かけて彼の手を優しく握りしめる。

彼が好きだからではない。

これから放つ私の言葉に興奮しない様に諭す為のある種の安心させる為にだ。


「陛下。

 アンヌは今謁見の間の控室で警護兵の監視の元一時的に拘束されています。

 勿論暴行も命の危険もありません。

 どうか安心くださいませ」


「……本当?…アンヌに……アンヌに会いたい」


「それはなりません。

 私としてはそうしたいけれど。

 彼女は王太后陛下と昵懇(じっこん)の夫人と暴行事件を起こしました。

 王太后陛下は大層立腹の様子で、二度と宮廷に娼婦をいれるなと。

 もし国王陛下が手離さなければ彼女を逮捕し永遠に牢獄に収容すると大変激高されておられているそうです」


「それは駄目~~絶対駄目~~~」


頬を紅潮して今にも泣きだしそうにヒステリックになり始める夫の表情にげんなりしながらも諭すように宥めるように話しかける。


「そうですね。

 陛下。

 私に任せてください。

 陛下の悪いようにはいたしませんわ。

 ただ公娼にする事はもうかなわないでしょう。

 少し時を待ちましょう。

 まずは安静になさってお身体に悪いわ。

 今は寝ましょうね」


ああ~~子供か?

そう思いながらも自分を律っする。


「王妃。

 必ずだよ。

 彼女を助けておくれ。

 私は私は……」




キャロライン・マチルダ王妃はゲンターベン嬢を助ける事が出来るのか?

乱痴気騒ぎがとんでもない方向へ進み、キャサリンを翻弄する。


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