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蠢く宮廷 宇宙の恋人

キャロライン王妃の愛人を公娼にする計画は実行に起こされていく。

遂に夫の愛人が宮廷に現れ、宮廷を引っ掻きまわす?

どうなるか?

宮廷内で一人の娼婦を巡って波乱が起る。


「陛下!

 ロイヤルストレートフラッシュ!

 2Ducat頂きます!!」


アンヌの興奮した甲高い声は高い天井を伝って団欒の間に響き渡り、周りにいた貴族達は一斉にその声の元に視線を移す。


沈黙した後、そこかしこから小さな低い声が聞こえてくる。


明らかに軽蔑した眼差しを隠そうともせず貴婦人たちはさも不快だとばかりに扇で口もとを押えながらヒソヒソと話しを始めていた。

男達はアンヌの豊かな胸元と暑さの為にスカートの裾をたくし上げて露わになる白い足を値踏みするようにジロジロと眺めて鼻の下を伸ばしている。

当の本人はそんな見物客を完全無視するかのように頬を染めてカードゲームに大夢中している。


「アンヌ殿はお強いですな」

アンヌの常客でもある伯爵は負け越しているのかため息まじりで言葉を吐いた。


「また負けたな」

負けたという割に国王は涼しげに笑みを浮かべ残念がる様子はまったくない。


アンヌは貪欲さを隠そうともせず、瞳はギラギラと炎を宿して興奮は最高潮に達していた。

「また勝ったわ!私!」


それはそうだ今この時すでに54Ducat儲けているのだ。

見物している王の取り巻きはこのテーブルの周りを囲っている。

君主の嬉しそうに愛人を眺めている姿を滑稽だとはおもいながらも賭博を諌める様子はない。


流石に宮殿では賭博をしていてもあからさまな金銭の要求を声を揚げて口にする者は誰一人といなかった。

賭博は表向きは禁止されてはいたが、常習化し歴代の王も見て見ぬふりをするのが慣例になっていた。

ただし表向きは禁止行為であるためにその場で金銭のやり取りはせず請求はするが、あくまでも執事を通じ後日に届けるのがマナーだった。


「あぁ~~また負けたよ。

 アンヌは強いね」

王は威厳の欠片もなく、負けたというのに自分の愛人を見つめながら嬉しくて仕方ないかのように微笑んでいる。


アンヌはその王の顔をじっと熱っぽく見つめた後さらりと言ってのける。


「これで終わるんなら侍従に54Ducat。

 つまり金を部屋に持ってきて!」


もはや目の前にいるのは王ではなく自分の家来かの様に言葉を投げつける。


「うん…」


国王は何度も頷いては字っとアンヌを見つめている。


アンヌが国王に呼ばれ宮廷の客人として現れてすでに6ヶ月が経っていた。


宮廷中は場末の娼婦が宮廷に上がったと話題で持ちきりとなり、王妃の言動と行動に注目が集まった。

しかし当の王妃は体調不良を理由に最近公式の場にも出てこないでいる。


貴族とは神から与えられた高貴な者で平民を支配する者。

いくら国王が許したとはいえ娼婦が宮廷に入り込むを貴族達は容認出来なかった。


宮廷人達は目の上のたんこぶであるこの娼婦に我慢の限界が近づいていたため、その事件は起こるべきして起ったといえる。


「ほらっ。あれが噂の性悪娼婦ですわね。

 宮廷で幅を利かせて、王妃陛下もお可哀そう。

 娼婦如きがさも得意げに宮殿を我がもの顔で歩くなんて。

 ヨーロッパ中の宮廷の笑いの種ですわ」


そう口にしたのは王太后の側近であるとある伯爵夫人だ。


わざと聞こえる様に軽蔑の瞳はアンヌを睨みつけた。


その伯爵夫人の声をアンヌは聞き逃さないはずはない。


「なんだっと~~~なんだっと~~~」

バンッ!!

机を力一杯叩いたと思ったら、座っていた椅子から立ち上がる。


「ア…アン…」

クリスチャンの声も聞こえないかのようにその伯爵夫人めがけ足早に駆け出した。


「きゃ~~~」


その場にいた女性貴族のほぼ全員が叫び声をあげる。

何せここは宮殿だ走るなでとマナー違反など起きるはずはない。

もはや事件だ。


アンヌはこめかみに深い皴を寄せて右手を挙げる。


風が起る。


バン!


ドン!ドンッ!!


あっという間にその伯爵夫人の頬を拳で殴りつけたのだ。


伯爵夫人はあまりの勢いに床にうずくまってしまった。


「いっ~~~たア~~~~~」


頬は赤く、アンヌの爪跡が皮膚を引っ掻いたのか赤く血の筋が滲んでいる。


「なめてんじゃないぞ!!

 お前!」


アンヌはさらに伯爵夫人の結い上げて造花の沢山の飾られた髪を手で掴む。

更に床に横倒しさせる。


バンバンバン!!


造花はバラバラと床に落ちる、

結い上げられた夫人の髪は激しく乱れ、青白い顔に幾重にも長い髪が筋の様にかかっていた。


アンヌは手を緩めない。

更に手でその栗毛色の髪を手で掴んで左右に揺さぶり始めた。


「やめ!!やめて~~~~いったい~!!痛い~~~!!」


全員の見ている前であろうことか伯爵夫人に恥辱を与えたのだ。

しかもその後伯爵夫人の腹に馬乗りになり、激しく頭、頬を力一杯殴り始めた。


バン!バン!


バシッ!バシッ!!


伯爵夫人は手で頭や顔をかばいながら、瞳から恐怖で涙が溢れて恐怖で身体はガクガクと震えている。



「止めて!

 お願いです。

 殺さないで!」


伯爵夫人は両手をアンヌのスカートを握りしめて必死の形相で涙ながらに懇願している。

汗と涙と興奮して真っ赤になった顔から悲壮感が漂っている。

もはや自分の行為を後悔せずにはいられなかった。

名誉や自尊心よりも命のほうが大切と言わんばかりに。


「おっそいんだよ〜」


「やぁ〜!!

 殺さないで!

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 ごめんなさい!!

 許してください〜

 もう言いません!

 助けて~~~」


アンヌはざまあみろと言わんばかりに立ちあがり得意げに腕組して、視線をやや斜め上を向いて伯爵夫人を見下ろしている。


その時だ。

激しい何か落ちる音が部屋に響いた。


「陛下!国王陛下!」

アンヌがその方向を見るとクリスチャンが床に力なく倒れているのだ。


「はっ!

 そんなにすぐ降参したら面白くないじゃないの」


再び髪を掴んで耳元で囁く。


「明日100Ducat 持ってきな! 

 それでなかった事にしてやるよ」


伯爵夫人はこれ以上叩かれない様に頭を手で覆いながら震える身体でやっと言葉を発する。


「…わかり…ました…」

もう恐ろしさのあまりガタガタと震えながら答える。

アンヌの顔さえ見る事は出来ないでいる。


伯爵夫人の同意を聞いてさも見た事かと得意げに立ち上がり、スカートの裾をたくし上げて身体を反転しすぐにクリスチャンの元に駆け付ける。


この事件の後、サロンの遊戯の幕は閉じられた。





史実ではホルツ伯爵の手引きで知り合ったクリスチャンⅦ世はゲンダーベン嬢を「宇宙の恋人」と呼んで崇拝に近い愛に溺れ娼館に出入りしては仮面舞踏会同行させてました。

客と娼婦という関係にも関わらず、寵愛し彼女のいう事は悪行ですら何でも聞いて行動に起こしていました。

馬鹿にした娼婦がいればその娼館を襲撃し暴行し破壊する。

そしてついにはデンマーク宮廷にすら出入りさせていきました。

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