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孤独な国王の独り言 

さてキャロライン・マチルダの夫クリスチャンⅦ世はどういう人だったんでしょうか?

彼の生い立ちと彼目線の展開


王は王妃の寝室から戻り自室で葡萄酒を飲みながら以前の王妃の提案に困惑していた。


物心つく頃に母は死去していたから何ともいえないが、概ね側近の話によると両親の仲は極めて冷めていて、いわゆる仮面夫婦だったという。


母の存命中も逝去後も父王も愛人を山の様に囲っていた。

しかし結局正式な公娼を持つ事はなかった。

だから政治に足をつっこんで掻き回す悪女は誕生しなかった。

私も色情魔と噂されるように娼館通いを取り巻きと過ごしたがそういう行為は実はしていない。


まあ唯一除けばだがそうアンヌ・カトリーネ・ベンターゲン嬢だ。


あの強さと王を王とも思わないあの傲慢さを知らなかった私には新鮮だった。

しかしあくまで息抜きで、浮いた噂のないのも怪しまれようという気持ちからだ。

確かに彼女は魅力的だ。

けれどだからといって公娼か?

王妃の提案に乗っていいのだろうか?


本当に王妃は読めない人だ。

誰だって?誰を?

王の公娼に娼婦を?


ワイングラスを片手にその芳醇な香りを味わいながら一気に喉へと流し込む。

トロリとした液体は舌の奥へ熟れた果実の様な味わいがふぁっと広がった。

口元が緩む。


「これから面白くなりそうだ。

 王太后の動きにも注意を向けないと」


口元が僅かに上がった。

ようやく太陽登りその日差しが大きな窓越しに目に飛び込んでくる。

日の光は全ての闇を覆い隠す様に空は白く輝きを増していく。

何か始まるウキウキとしたそんな気分の朝だった。




私クリスチャンⅦ世はデンマーク・ノルウェーの国王だ。


1749年1月29日に私はデンマーク・ノルウェー国王フレデリック5世と王妃イギリス王女ルイーズの元に誕生した。

兄がいたが幼くして死去してしまったので生まれながらの王太子として厳格に育った。

2歳の時に最大の保護者であった母を亡くした。


父はアルコール依存症で非公式の愛人を何人も囲い政治にも興味を示さず、幼い時から身体が弱くて病がちな私にもまったく興味がなかったようだった。

物心つくと手荒い家庭教師の元虐待に近い教育で精神的に追い込まれ、トラウマを抱えた少年時代を送っていた。


そんなキツイ少年時代をおくっていたある時、私が死んだ後スペアが必要だと言わんばかりに母が亡くなってすぐに父王は後妻を迎えた。


父の元に嫁いだ義母は義理の子の私を常に無視し、自分の子を持つ事に執念を燃やし遂には王子を生んだんだ。


王位継承権第2位の息子を持つ義母からしたら私は目障りな存在だ。

彼女は私を堂々と無視をきめこみ全ての興味は愛息子に注がれた。

ただ義母は政治には全く関心がなかったので私としてはラッキーだった。


僕は誰からも愛されず必要とされず成長した。

もしかしたら暗殺されるかもしれない恐怖と教育担当者からの必要以上の虐待。

そんな恐怖は年を重ねるうちに現実になりそうな気持が私は支配していた。

そして私の考えはようやく終焉を迎える。

そう操り人形の様に考えれば殺されないかもしれない。


いや!殺さないはずだ。

だから私は殺されないと。


そんな考えから、偽装狂気に陥った不幸な哀れな国王になればいいんだと考えるようになったんだ。

丁度思春期に差し掛かった時で重いっきり奇行を始める事にした。


真夜中の宮殿内を奇声を放って叫び彷徨った。

寝ていた宮殿の人々は半狂乱で右往左往していた。

それをみてゲラゲラ笑って見せた。

宮廷医は多くの侍従に私を羽交い絞めにさせて寝台に縛り付けられた。


私は自分の起こした騒ぎに皆が食いついて満足した。


宮廷に来た貴族達を何の落ち度もないのに平手打ちしたりもした。


次の日にまだ若い貴族の子弟に宮殿に招いては酒を浴びるほど飲んだ。

ついでも性に無頓着な貴婦人達を共に招き、乱痴気騒ぎと性の限りを満たした。


そのうち一人が「馬車で娼館に行こう」と言い出して、私は初めての娼館の女達の身体を体験した。


半分性に敏感になった年頃興味半分で訪問すると、宮殿の貴婦人達とはまた違う人間らしく笑い騒ぎ生き生きとした姿に魅了されて彼女達の虜になった。


彼女達は新鮮だった。

私には許されない人としての自然な生き方。

羨ましいと思った。


そして私は人を欺くために夜な夜な街の歓楽街やオペラ座、場末の劇場で乱痴気騒ぎをわざと起こす。


そんな乱れた生活をしていると貴族達は当然ながら私の思惑通り操り人形と扱おうとしてきた。


ただ一人を除いてはそう元家庭教師で現在読書兼内閣官房長官のレヴェルディルだ。

彼は幼い頃から私を王太子として接し、私の為にと思う事は率先して助言してくれた。


そして私の奇行をまるで人の目を欺く為にわざとしているのでは?

という事に気がついているようだった。

でも何も言ってこない。

私も言わない。

彼こそ廷臣の鏡というべきだと思う。


目下私の糸を操っていると調子に乗ってるのはフレデリック・ヴィルヘルム・コンラッド・ホルク伯爵だ。

彼の言う通りに動いてあげている。


計画通りでホルクは私を酒漬け、女漬け、賭博漬け、夜遊び漬けにしていった。

私もわざとそう乗ってやっているのだ。


そう彼らの思う通りの道化の様に政治に無関心に愚かで思う通りの君主として。


それは従兄妹が嫁いできてからも変わらない。


母の里とはいえイギリスは外国だ。

いくら私がイギリス国王の甥だとしても他国の政治介入は避けなければいけないらしい。


そこは廷臣一堂同意見のようで、皆王妃には表向きには敬意を現していたが、政治には関わってほしくない雰囲気いっぱいだった。


「王妃とは必要以上に接しないように」と助言すらされた。


ホルク伯爵に至っては初めて彼女に会った時、「愛さないと」宣言すべしまで言うべし。

と言うのだ。

以来彼女には公式の行事でしか会っていない。

つまり夜の営みはまったく0。


……時々せっつくように官房長官のレヴェルディルが私に王妃へラブレターを書くように催促するんだ。



仕方ないから言われるままに書いたよ。

そこに気持ちはないけれど。

ただ王妃を特別毛嫌いしているわけではない。

私にもどうする事も出来ない。

まあデンマーク王室の後継を考えると本当の夫婦にならないといけないのはわかっているけど。


2人ともまだ若いんだし……そのうちね。


でも最近本当に気分が最悪で、私の精神は本当に虚像かそれとも本当にそうなってしまったのか?

自分でもまったく境界線がわからなくなってきている。


そんな迷いや恐ろしさをリストカットすると安心するんだ痛みを感じる事で私は平気だと。

でもそれは自分の破壊の始りだと。

でも私は知らない。

知りたくもない。

ただ本能に従うだけだ。私の精神の赴くままに。

自由にいたい。

彼の残された肖像画は大変美男子でとても狂気に取りつかれているとは思えないほどです。

当時のデンマークの庶民たちは彼の病状は全く知られていなかった。

その容姿から人気があったといいます。

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