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王に相応しい愛妾とはⅡ 

なんと愛人の娼婦に会う王妃?

どうなる??

沈黙の後、アンヌはゆっくり口を開けた。


「……。

 ご自身が何をおっしゃっているのかわかっているのですか?」


そう彼女は問いかけ私の顔をじっと見ている。

私の全ての感情を読み取ろうとギラギラした瞳が私を射抜く。

しかし私も真剣だ。

夫を愛してはいない。

ただ彼の安定が私の地位の安定にも繋がるのは間違いない事実だ。

私の地位は彼の安定と均等を保つのは間違いない。

なんといってもホルツ伯爵らにいい様にされてはいずれ私の計画が狂うのは非常に困る。

あくまで対抗馬が必要なのだ。

彼女がホルツ伯爵と関係があるのはわかっているが、流石のホルツ伯爵も娼婦が公娼になり王を思うままに手なずけるのは避けたいはず。

そして私の瞳に映るその娼婦は困惑した様子の中で、漲る野心の炎が灯るのを見逃さない。


そう冗談やましてや、牽制の為ではないのがわかった。


公娼とは公の身分を持つ公式の愛人。

場合によっては政治に口出す事もあるし、王妃に替わって民衆の悪意を一身に受ける身でもあった。

いわゆる必要悪でもあったの。


「勿論ですわ」

平然と(りん)とした口調で私は答えた。


「王妃陛下。

 私を公娼に推薦などど。

 デンマーク貴族社会を否定されているのと同義語です」


そりゃそうだ。

まさにデンマーク貴族社会へ挑戦状と言っていい。

前王ですら愛人は多くいたものの公娼は1人もいなかった。


公娼とはその名の通り公式に認められた愛人だ。

もし王の子を産めばその子は認知されその子はそれなりの地位につける。

ただの愛人ではない。

王の公に認められた愛人で、時に政治にまで口を挟む前例さえある人物の敬称だ。

それなりの身分を得て宮廷で発言力も持てる者の1人となるのだ。

しかし独身はなれず、必ず貴族であり既婚者であるのが最低条件があった。


高級娼婦にその地位に立てても良いと王妃の私が提案したからだ。

アンヌは言葉を失ってあんぐりと口が開いたまんま言葉を忘れたかのように黙り込んでいる。


本当ならきっと声高く歓喜したかったが、まだ真意を図りかねているので慎重にならざるをえない様子だった。


「私は貴方が陛下の傍にいてくれる事で陛下の精神状態が安定すると確信しています。

 陛下の心の安定はこの国の安定でもあります。

 今このデンマーク宮廷は王を操ろうとする貪欲で自分達の特権を食い物にしようとする者ばかりです。

 そのような者達にここで退席してもらいます。

 その布石に貴方を投じたいのです。

 それにはやはり公娼の地位が一番適切に思います。

 宮廷が大混乱に陥るでしょうが、何か新しい事を始める時は混乱や反発は必然の反応です。

 それこそ貴方の領域では?」


これみよがしにニヤリと不敵な笑いを口元に浮かべながらアンヌを挑発(ちょうはつ)してみせる。


アンヌは国王の弱さ、優柔不断さ、ある種限られた者への依存性、執着心は手に取るようにわかっているはず。

でないとあの夫の執着は得られないだろう。



「私には十分な見返りがある提案であるのはわかります。

 しかし王妃様にどんな利があるのでしょうか?

 娼婦が公娼になった王の妃という立場は侮辱的な出来事では?」


「普通はそうね。

 それに推薦するとはいいましたが。

 私の独断で貴方を公娼に決定出来ません。

 なれるかどうかは貴方の手腕次第です。

 私はあくまで陛下に意向を伝えるだけですわ。

 私の真意は貴方が公娼候補となる事で、陛下の心の安定と私への信頼が必要なのです。」


確かにそうだが……それだけでは軽くないのか?

アンヌの判断は王妃に真意だ。

王妃の本当の目的は?


いや王妃の真の目的がなんであれ………失敗しても私に大きなマイナスはあるのか?

命の危険はゼロではないがたかが娼婦にそこまでするだろうか?


王妃の瞳の奥をじっと見る。

見ているというよりも観察していると言っていい。

非常な失礼な態度だ。

しかし王妃は視線を外そうともせず私の瞳を凝視している。

女の心の探り合いに底は見えない。


王妃は沈黙の空気を切り裂くように話した。


「私がほしいのは陛下の愛ではありません。

 信頼される友人といえばいいでしょうか?

 ほしいのは王の愛ではなく。

 信頼です。

 貴方の欲しい物は?

 貴方は復讐したくありませんか?

 貴方の血に」


もはや悪魔の(ささや)きのそれにその言葉はアンヌの野心と欲望の鼻先に甘い蜜の香りが漂う。



「はっ~~はぁぁはははぁ~~~~

 そう貴族のご婦人はいうだろうね。

 でも大抵最後には嫉妬か正妻の地位を侮辱されたって。

 よく娼館に嫌がらせをしているものさ。

 まあ~~私はそれ以上に仕返しするから。

 もうそんな目に合う事はないけどね。

 みんな口ではいうさ」

ふっと噴き出した後、笑いがこみ上げて止まらなくなった。

まだ娼婦になりたての頃、娼館に頻繁に出入りする夫を最初は黙認していたけれど、正妻として地位を確立すると嫉妬心は増幅するようで、よく下男達に嫌がらせをさせにきたものだった。



「ああ~~いいよ王妃陛下。

 なってやろうじゃないか公娼とやらに」


アンヌは腹をかかえてゲラゲラ笑い始めた。


私は自分の計画の1つに成功したと確信した瞬間だった。



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