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限界には興味がある





 私は食に興味が無い。

 が、悲しいかな腹は減る。非常に減る。すごく減る。

 いや語弊がある。

 減るのは人並程度なのだが、満たされるまでが人並ではないというか。


 そう、困った事に私はいわゆる大食いなのだ。


 食に興味が無いのに、満たされるためにはかなりの量を必要とする。なんと忌々しい事か。

 人並の量を食べても空腹にはならないのだが、前話で触れた、最高効率の食事、満たされる食事となるとどうしても量を求めてしまうのだ。

 故に、大盛りが可能な店なら必ず大盛りにしてしまうし、某カレーハウスでもデフォルトで600gものご飯の量を注文してしまっている。


 ……だが、いくら大食いの私でも少々狂っていた時期があった。




 はたしてこの胃袋の限界は、どの程度だ?




 検証が始まった。始まってしまった。

 私はいわゆる中肉中背である、という事を一応宣言しておこう。嘘ではない。たぶん。誇張もしていない。筈。

 だが胃袋は別。デブそのものである。デブ胃袋である。

 そんな胃袋のデブコンディションが良好な日を見定めて、自分の食べた量がハッキリと分かる料理屋に向かう事にした。


 そう、某カレーハウスである。


 ……いや待ってほしい。帰らないでほしい。またかよとか言わないで。

 他に明確に何gと記載があり、無限に量を増やせる店があるだろうか?

 都会なら有るのかもしれないが、田舎にはそんな店は無いのだ。そこは勘弁してほしい。


 という訳で、入店。


 当時は自らのポテンシャルを全く読めていない時期であった。

 注文するとしてもデフォルトの量、300g。

 故に、まずは小手調べとして、500gで注文した。トッピングはチキン煮込み、ほうれん草、温玉。


 ……今になって思えば初手から飛ばし過ぎだった気もする。食べられなかったらどうするつもりであったのか。


 まぁ余裕で完食したのだが。

 その時の感想は、もっと食べれるな、だった。

 そして温玉トッピングは自分の好みじゃないと判明した。あんなに相性が良さそうな見た目をしているのに、何故だ。ゆで卵ならワンチャンいけるのかもしれない、今度試してみよう。




 別日、入店。

 600g、チーズ、旨辛にんにく、そして手仕込みチキンカツ。


 でけぇ。カツがでけぇ。

 どのくらいチキンカツがデカいかというと、それなりの山を形成きているライスを完全に覆う程度の大きさなのだ。ちょっと焦った。


 まぁ美味しく完食したのだが。

 手仕込みシリーズに外れは無い。マジで美味い。その代わり少々値段は張るが。

 そして今回の件で私はしばらく旨辛にんにくにハマる事となる。




 別日、入店。

 700g、チーズ、メンチカツ、フィッシュフライ、旨辛にんにく、タルタルソース。


 たしかチラシでフィッシュフライが無料になるクーポンがあって、それを注文するならばタルタルだろう、となり、でもそれだけだと寂しいからメンチカツも頼もう、でもルーの方に何も無いのも寂しいからチーズも。

 アホか。


 まぁ普通に完食したわけだが。

 正直700gも余裕であった。むしろ丁度良いまである。これが適量なのかもしれない、とうっすら思った。

 が、狂っていた当時の私は止まらなかった。




 別日、入店。

 800g、手仕込みササミカツ、旨辛にんにく、タルタルソース。


 シンプル。

 恐らく未知の領域に少々日和ったのであろう。最低限のトッピングで済ませている。

 まぁカツが最低限かと言われれば普通はちがうのであろうが。

 ところで旨辛にんにく。本当に好みに合った。

 辛味とにんにくが米とルーにマッチするのもそうなのだが、食欲を刺激して食べ進みやすくする効果がある気がする。


 という訳で完食した。

 イケる気がした。気がしたが、少々怪しい気配を感じた。




 別日、入店。

 800g、手仕込みメンチカツ、ほうれん草、チーズ。


 ……完全に日和った。

 実はデブコンディションが整っている日がなかなか訪れず、前回から日が開いてしまっていたのだ。

 故に久しぶりの限界値測定だったために……完全に日和っていた。


 つまり、完食。

 前回感じた怪しい気配なぞ何も無かった。

 むしろ日を開けた事により、更なる進化を遂げた気さえした。




 別日、入店。

 900g、ハンバーグ、ほうれん草、チーズ、旨辛にんにく。


 ハンバーグ小さくてワロタ。

 いやハンバーグが小さいんじゃない、ライスがデカ過ぎるんだ。

 提供してくれたのは女性店員さんだったのだが、めっちゃ手がぷるぷるしてたのはその、なんだ、申し訳なく思う。

 流石にここまで来るとカツ系を頼む勇気は無い。が、記録用に写真を撮るために、大きさ比較用にハンバーグをトッピングしたのだが……正直苦しい。


 だがギリギリの余力を残しつつ完食。

 まだだ、まだイける。




 別日、入店。

 1000g、フィッシュフライ、チーズ、旨辛にんにく、タルタルソース。


 もう意地だった。ここまで来たのならばそこまで行きたかった。

 故に、キロ。1キロ。

 フィッシュフライが冗談のように小さい。マジで笑ってしまった。

 というかチーズどこ。ルーの中に溶け込んでるんですけど。ルーが多過ぎてチーズが比較的少な過ぎる現象が起こってる系のあれですか。マジか。そんな逆転現象ある?


 試合開始。

 無心。ただひたすらに無心。

 カレーライスを食べる、ただそれだけ。

 中盤に差し掛かった頃にフィッシュフライに手を掛ける。

 美味い。タルタルと合わせるとなお美味い。

 そしてカレーライス。ひたすらにカレーライス。

 もはや一人フードバトル。

 故に投入、旨辛にんにく。

 美味いだけではない。これは食欲を増進させる麻薬。

 故に進む。進む。進む。限界を超えて進み続ける。


 そして……勝利。


「ごちそう、さまでした」


 全て、腹の中。

 米一粒残さず、完食。


 余韻に苛まれつつふと思う。


 ここが、限界。

 ここが、最果て。


 私は食に興味が無い。

 だが、変な事に興味を持つ事はあったりする。




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