本当に興味が無い
私は食に興味が無い。
この意見に対し、世間の少数は同意してくれるだろう。
が、私をよく知る友人達は鼻で笑うだろう。そんな訳あるか、と。
だが本当に興味が無いのだ。
食べなくて済むならば食べなくて良いと考えている。
何故ならば食事の時間が面倒だからだ。食事に割く時間を他の作業に当てればなんと効率の良い日々を送れる事か。
一度の食事にだいたい三十分から一時間、それが一日三回。
食事だけでこの時間。炊事や後片付けの時間を含めればどれだけの時間が割かれるかなど考えたくもない。
故に食事という行為は面倒なのだ。時間食い虫なのだ。
が、人間の体は食事というエネルギー補充を行わなければ死ぬ。マジで死ぬ。
だから、仕方なく、致し方なく、三食キッチリ食べるという行為はどうしても必要な事なのである。
そう、食べなければ、ならない。
絶対なのである。
点滴だのなんとかゼリーだので済ませられるのであれば良いが、そうはいかないのが人間の体。キッチリそれなりのものを摂取しなければならないのである。
つまり、食事は、避けられない。
どれだけ面倒だのなんだの言っても、回避不可能。
故に。
どうせ食べるのであれば美味しいもの。
そう決めた。
……おいおい食に興味無いんじゃないかよ。テキトーにファーストフードで良いじゃねーかよ。
そんな声が聞こえてくる。
否。断じて否。
食事は回避不能。
食に興味は無い。
だが悲しいかな、味覚はあるのだ。
美味しいものを美味しいと、不味いものを不味いと感じる舌を残念ながら持ち合わせているのだ。
故に面倒な事に、一度の食事に対して、満足度、というものを感じてしまうのだ。
そう。
食に興味は無い。
だが食事は回避不能。
だが舌は真っ当。
故に、最適回数で最高効率を。
そう決めた。
繰り返すが、私は食に興味が無い。
摂取しなくて済むのであれば摂取しない。
お腹が減っている、という状態が不快極まりないし、生命活動の危険信号であるから摂取しているだけなのだ。
そしてどうせ摂取するのであれば美味しいものを摂取したい、ただそれだけの事なのだ。
が、まぁ朝ごはんはテキトー極まりないものが多かったりする。
卵かけご飯、みそ汁。以上。日によって卵すら抜く。
……面倒なのだ。準備も、後片付けも、なんなら食べるのも、面倒極まりないのだ。
しかし昼、夜にたとえば外食するとなると話は別。
某グルメドラマばりに、今の私は何腹だ?とばかりに店を探す。
……まぁ私の住む地域は超が付くほどの田舎なので選択肢はそう多くはないのだが。
個人経営の店、居酒屋、チェーン店。ありとあらゆる選択肢を脳内にリストアップする。
そして本日、決めた。
誰もが知る全国チェーン店、某カレーハウス。
入店。
……あ、この期間限定メニューで。
トッピング……メンチカツとタルタルソースでお願いします。
辛さは普通で。
ご飯の量? あー、600gで。
ふ、完璧な注文だ。この飢えた体を満たしてくれるに違いない。
……700でも良かったか? いやしかし限定メニューでそれは冒険し過ぎだろう。いつもの量で様子見するのが妥当といったところだ。
そして運ばれてくるブツ。
「いただきます」
なるほど、こうくるか!
美味い、美味いぞ!
チキンと多彩な夏野菜が贅沢に煮込まれているカレールー! トマトの酸味と甘味が深いコクを生み出している! 野菜とチキンの相乗効果も抜群だ!
トッピングのメンチカツも定番の味わいだ! サクサクの衣! その中身はジューシー極まりない肉!
だが重くなりがちなそれを補うは味変カンフージェネレーションのタルタルソース! しかもこれは卵成分がカツにも衣にもカレーにも合う万能選手!
ふはははは! 勝利! 勝利勝利勝利!
私の体がカロリーで満たされていく!
「ごちそうさまでした」
そうして、入店から三十分足らずで退店。カレーはタイパも実に良い。
しかしご飯を満足いくまで増量出来るのは良いのだが、トッピングも重ねるとどうにも値段がはってしまうのが難点だな。
まぁ、それを分かっていてここを選んだのだから文句は言うまい。
さて。
私は食に興味が無い。
本当なのである。