1:蘇り
空は青く、今を生きるすべての生き物が幸せそうにしているこの世界でたった一人不幸なる者が存在している。そのものは大昔の対戦で敗れ同胞、身内、戦友を失った。。さらに均衡していた地上世界の覇権さえもを奪われた。そしてその命さえも。
◇◇◇
黒い視界の中額に水が当たり目を覚ます。
「私は人間どもに殺されたはずじゃ……」
あたりを見回すとそこは草が生い茂る森の中だった。
一体どういうことなのか。
死んだはずの私がなぜ生きているのか。そもそも生きているかも曖昧だけど……。
とりあえず状況確認。
ここは得体のしれない森。魔素の濃度的にそれなりに強い魔物もいるけど私なら大丈夫だろう。
わかるのはこれくらい。とりあえず高い場所を目指すことにした。
目標は奥のほうに見える大樹にした。
◇◇◇
歩いていくと次第に神聖な魔力が感じられた。少しひりひりする。奥のほうに見える大樹が関係しているのだろうか。そんなことを考えていると右手の方向から草をかき分ける音がした。
私はそっと身を潜め音の主を探ろうとした。
音はわたしのほうに向かってきているみたいだ。
少し場所を変えてみたがそれは変わらない。どうやら音の主は明確に私の位置をとらえているみたいだ。
さてどうするか。殺すか、生け捕りか。
普段なら殺すだろうが今回は生け捕りで。今は情報が欲しいからだ。
現在の私の服は破れていて体もやせ細っている。魔力は常日頃から抑えているのではたから見ればか弱い少女だ。ここは私の名演技で倒れこんで街に連れて行ってもらうことにしよう。
私は倒れこみ、音の主が私を見つけるのを待った。
「魔物かと思たら女の子か。傷はないけどやせ細ってるから捨てられたのかな?君、起きてる?」
よし、順調だ。
私は無理して体を起こす演技をして目の前の男にしゃべりかける。
「ちょっと前に捨てられちゃって、何も食べてなくて、、」
捨てられたと答えることで過去の余計な散策を避け、食料を得ることができる。
事は思い道理に進み、ちかくの木陰で干し肉をもらい男と一緒に食べている。
「とりあえずお兄さんと一緒に町までくる?少しの間なら止まってる宿にいてもいいし働ける場所を探すよ。」
随分と優しい人間だ。
私が魔王だったころにこのような人間に出会ったことはなかった。
とりあえずは人間としてこの世界で生活しよう。
それからこれからの目標を決める。
まあ、世界滅ぼそうなんて思わないけど。
トラウマなのか平和主義者になったのか、私の気持ちが変わったのがなぜかは分からないがただ平和に暮らしたい。ただそれだけは確信できた。
「町に、連れてって」
そういうと男は私に向かって微笑み、立ちながら私に手を差し出した。
私は手を取り男と歩き出した。
「僕の名前はレオ!冒険者だよ!」
「私の名前は、、、」
私がしゃべるのを戸惑うと男は優しく言った。
「大丈夫だよ。言わなくてもいい。怖いだろうからね」
決して怖くなんかない。
ただどう名乗ろうか考えていたのだ。
なんせ魔王時代の名前を言うわけにはいかない。
これでいいか
「私の名前はテレサ」
かつて、私を殺した勇者の名前だ。
「いい名前だね。これからよろしくね!テレサ!」
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町にたどり着くのにあまり時間はかからなかった。
門を抜けた先には石レンガの道路と道の端には屋台、そしてたくさんの家が立ち並んでいた。
屋台には野菜や服などの生活必需品から魔道具や剣などの冒険者用のものまでさまざまなものが売られていた。
通行手形を持たない私がなぜ町に入れたのかというと捨て子だからだ。
なので仮手形をもらい町に滞在することを許可された。
そして一週間分の食料をもらった。
食料はすべて乾燥された干し肉や携帯食だった。
軽いので門でもらったカバンを背負い、その中に入れている。
とりあえず一週間のうちに独り立ちできるようにしよう。
それが今の目標だ。
その日は疲れていたので男の家でぐっすり寝た。
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朝は憂鬱だ。
とてもだるい。
「起きて~朝ごはんできたよ~」
どうやらレオはもっと憂鬱な朝耐え、私の朝ごはんを作ったらしい。
一階にいるレオに届くように返事をして私は階段を下りてリビングの椅子に座った。
朝ごはんは黒パンと山菜のスープと焼き魚。
私はこの時代の人間の基準を知らないから贅沢かそうでないのかは言えないがこれだけは言える。
「うまい」
「そうか!それはよかった!」
レオは黒パンを頬張りながら私に言った。
朝ごはんを食べた後はレオに私が一週間で自立することを宣言し、昨日のことに礼を言った。
レオは私に職業をお勧めしてくれた。
一つ目は掃除屋。
市場の道路を掃除する仕事だ。
屋台がたくさん並んでいたところが市場で食いかけの食べ物や落とし物、人がたくさん歩くのでほこりなども待っているらしい。
二つ目は飲食店のお手伝いだ。
具体的には出来上がった料理を運んだり食材を届けたりするらしい。
意外と体力使うそうだ。
三つ目は冒険者だ。
あまりお勧めされなかったが力があるなら稼げるらしい。
さらに掃除屋みたいな雑用も依頼で受けることができるから力がなくてもできる仕事もあるそうだ。
もちろん決まっている。
そう、、、、飲食店のお手伝いだ。
情報を得るには2か3つ目だがあえて二つ目を選んだ。
理由は簡単。
私が強いということをばれたくないからだ。
なので当分の間は情報を得てから冒険者になろうと思う。
この町で冒険者になるわけにはいかないから資金を集めて正式な手形を発行してほかの町に行くための資金も集めないといけない。
レオにいろいろこの町やこの世界のことについて聞いているうちに昼になった。
昼ご飯をレオと食べた後、私はレオに紹介してもらった酒場に向かった。
「ずいぶんと小さいのが来たな」
がたいのいい男がそういった。
こいつは酒場の店主だ。
「ここで働かせてあげれないか?料理を運ぶことはできると思う。容姿もいいし」
レオが説得している。
「そうだな。だが、こいつが客から嫌がらせを受けても俺は何もしねぇぞ?」
店主は腕を組みながら言った。
酒場には酔った客が店員をいじめる行為が多発しているそうだ。
客は冒険者で酒場の店員をやっている力のない人間は簡単にいじめられてしまうらしい。
「この世界のことを知るためにもある程度は必要だ。なんなら今のうちにいろいろなことを経験したほうがいい。それにテレサのことは俺が守る。まあ夜にしか来れないけど」
レオは私のことをいろいろ考えてくれているようだ。
本当にいいやつだな。
「まあほとんどの厄介な冒険者が来るのは夜だからな。いいだろう。テレサ、お前をここで働かせてwやる。俺の名前はアレス・ヤードだ。アレスでいい」
「よろしくお願いします。」
私は頭を下げそう言った。
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「枝豆とエール一つ!!!」
若い男の声が響く。
この声はレオだ。
私は枝豆とエールを受け取り盆にのせレオに持っていく。
「今日はどうだった?」
レオは枝豆を剝きながら私に聞いた。
「仕事は覚えられた。迷惑なお客様の対処は難しいけど」
レオは笑いながら私の肩をたたいた。
「よう、レオ。お仕事お疲れさん。」
アレスはレオに手を挙げながら挨拶をした。
仕事がひと段落し、注文が止まったのでこちらに来たようだ。
「はいこれ。」
そういってレオは四角い箱を渡す。
その箱からは微弱ながらに魔力を感じた。
「気になるかい?これはアイテムボックスだよ。いろいろなアイテムを収納できる。僕はこの中に狩った魔物や動物をアレスに売ってるんだ。」
レオが言うには強い冒険者は店や国と契約をして実行することで収入を得ることが多いらしい。
どうやらレオはそこそこ強い冒険者らしい。
私に比べれば劣るが。
私とレオは少し休んでから宿に帰って夜ご飯を食べたあと眠りについた。