チー牛という言葉への考察
マイク・ゴドウィンが提唱した「ゴドウィンの法則」というものがあります。
「議論が長引いた時、別の何かをアドルフ・ヒトラーやナチス・ドイツに例えるようになる」
というものです。これは、何かをナチスやヒトラーになぞらえることを否定したものではありません。
そして、ヒトラーやナチスが議論に登場することは議論がゴドウィン点に達すると言われます。
日本でのネット上の議論において、このヒトラーのように議論に登場するのは「チー牛」という言葉です。
しかし、チー牛という言葉をこのように扱うには問題があります。
この言葉の元となるのはいびりょ氏という方の描いた自画像です。
始めは人の容姿を中傷するように使われた言葉でした。
現在での使われ方は多岐に渡っており、ヤリチン、ノンデリ、陰キャなどの悪い言葉を代替するように扱われています。
そして、主に男性に向けて使われる言葉です。
これの何が問題なのかと思う人もいるでしょう。
「チー牛」という言葉の意味が定まっていないことが最大の問題です。
ナチス、ヒトラーというのは実際に存在しており、定義づけが必要ありません。
一方、「チー牛」という言葉には明確な定義も、そう呼ばれる人間や組織も存在しません。
正式な意味を持たない言葉なのです。
「意味を持たないが中傷的に扱われる言葉を議論に登場させる」
これは基本的に反論の余地がない人間が悪あがきとして相手を不快にさせるために行われる行為です。
つまり、「チー牛」という言葉は議論を停滞させるために議論の場に登場します。
ゴドウィン点はある意味で議論の成熟も意味しています。
「チー牛」が議論に登場する点。言うなれば「チー牛点」は議論の勝敗が決し、一方は論理的な反論ができなくなっているという状況を意味します。
「チー牛」という言葉はヒトラーを代替することはできないので、きちんと意味が定まるまで使うことを控えた方がいいでしょう。