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始発駅にて

 息子がギャン泣きしている。


「未来くん、お願いだから黙って」


 私は息子を抱き上げ、あやしたが全く効果はない。


 ここは西船橋駅。東西線の始発駅のホームだ。


 今は通勤ラッシュが終わり、人は少なくなってきたが、全くいないわけではない。


 小さな子供がいる身分の私は、始発の電車に乗りたかった。できれば座りたい。この後、夫の両親に会いに浦安に行くので、より気が重い。


 ああ、どうしよう。人の視線が痛い。誰に向けるわけでもなく平謝りするが、心はチクチクする。


 前にも子供が泣いた時、おじさんから文句を言われた事があった。子育てはやっぱり大変だ。キラキラした可愛いママになれると思ったが、現実はそうでも無いらしい。


「もしかして加奈?」

「あれ? 敷島くん?」


 目の前にスーツ姿の男がいた。見覚えがあった。


 幼なじみの敷島翼だった。名前の印象通り、イケメンでスポーツが出来る幼なじみだが、今は少々お疲れのサラリーマン風。数年前の同窓会の時に会った記憶があるが、すっかり忘れていた。


「ごめんね、息子が泣いちゃった」

「いや、いいんだって。オレみたいな孤独なオッサンからしたら、無料で可愛い子供やペットを見せてくれてる町の人は皆んな尊いよ」


 そう言って敷島は笑った。


 敷島はカバンからシールを一枚出して、息子にあげていた。キャプテンアメリカンのシールだった。アメリカコミックのヒーローのシールで、カッコいい。そんなシールを手にとった息子の涙はすぐに止まった。


「わぁ、ありがとう。助かったわ。一瞬だけあなたがヒーローに見えたわ〜」

「あはは。こんなオッサンだけどな。じゃあな」


 そう言い残し、敷島は去っていった。


 一瞬の事だったが、笑っている息子の顔を見てとてもホッとしていた。


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