誕生日祝い
誕生日プレゼントは心こもる物が良い。
AがBから話しかけられた。
「A誕生日おめでとう。誕生日祝いに一万円あげる。」
「B!?有難いけど、流石に現ナマは受けとれんわ。ほんなら、Bの誕生日に一万円プレゼントするわ。」
「お互いに渡し合いの一万円、それもいいね。では、これから『実際に生まれた月日』を迎える度に一万円を渡す事にしよう。」
AとBは約束をした。
それから20年の歳月が流れた。
BはAから誕生日に二十万円も貰っていたが、AはBから五万円しか貰っていない。Aの誕生日は2月29日であり、4年に一回しか誕生日が来ない事を知ってBはAに約束をさせたのである。
「俺が生まれたのは2月29日やけど、書類上の誕生日は2月28日やで。」
「今更何言っている?約束は『実際に生まれた月日』なんで、2月28日はおかしくないか?」
AはBに言い返しができず、約束はその後も継続された。
そして数年後の2月29日、AとBは南極に来ていた。方位磁石のS極が真下を指している。
「Aの4年ぶりの誕生日が嬉しいの分かるけど、わざわざ南極まで来なくても…」
「B、ホンマおおきに。誕生日をアデリーペンギンの近くで過ごすのが夢やってん。」
暫くして、Aが左右に飛び跳ね始めた。
「A、何謎な動きをしている?」
「南半球の2月末は残暑と雖も寒いんで、体動かして温めたい。」
Aは所謂「反復横跳び」をひたすら続けた。BはAを冷めた目で時々見ながら暇つぶしをしていた。
Aは疲れ切って「反復横跳び」を止めた。
「A、お疲れ。誕生日プレゼントの一万円をあげよう。」
「B、おおきに。有難いけど、一千万円やないん?」
「一千万円、そのネタ面白いな。はい、一千万円!」
BはAにそう言いながら一万円渡そうとしたが、Aは受け取る姿勢ではない。
「何言うてるん?ホンマに一千万円やで。2月28日と2月29日を1000往復したから、約束の『実際に生まれた月日』通りBから一千万円貰えんとおかしいで。」
Aは日付変更線を1000往復したので、『実際に生まれた月日』を1000回迎えた事になる。南極点が真下の為、日付変更線の動く幅も短い。因みに、録画もしていたのでBは言い逃れ不可能である。
「流石南極、凍り付きそう………A、分割でいいかな?」
「ええで、10年ローンで宜しゅう。」
海外旅行中に誕生日を迎えた事がある。日付変更線を越える事で誕生日を2回迎えたり、無くなったりする事に気付いた。