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第四話(バッチ)

第四話バッチ




静まり返った、孤独を感ぜらざるおえない深夜の闇に浮かぶ 無駄に広いだけの部屋。


備え付けの小さな小さなクローゼットに幸子は不可思議な感をいつも抱く。


一人息子の弘明が起こした許されざる負えぬ柳井まどかさんに対する後悔の念。


闇に瞳をじーっと凝らせば、何処かからか叫び声が聞こえてきそうな…。


やがて幸子はすり減った神経の言わば、蜘蛛の糸から幼い赤子が持つ瞳の光が見える。


その存在にやがて気付き…。


強い発光が見える…。


やがてしっかりと姿を表す「バッチ」


その人となりを表す「バッチ」は確か新しかったようだったと祭は言っていた。


幸子はその「キラキラ光るバッチ」に事件のヒントがあると核心を持ち始めていた。


いつも4時過ぎに来る二人の銀行員のバッチはコロナ濃厚接触で交代した新しい若い行員のバッチと明らかに違っていた。


4月10日に祭さんがシフトに入っていた時に来ていた行員は、実際の売り上げが紙上とPCに中で保管されている金額と違うと指摘している。


「祭さんにその銀行名を教えてもらっていたので明日、散歩がてら行ってみようかな。」


幸子は独り言を発しやがて深い闇の中に入っていった。


翌朝は日差しがたっぷりと降り注ぐ暖かな中での起床だった。


天候という運には見放されていない。


翌朝、幸子は散歩がてら祭のバイト先「タクミ」の売り上げを取りに来る例の銀行に寄ってみた。


幸子は他銀行を利用しているので、初めて入ってみたが格別に変わった点は特に無い。


あまり、じろじろ見ていると怪しまれると思い仕方なくATMに並んでみる。


幸子の利用する銀行とは一体化されていなく通帳の記帳をする。


が、そんなことは本来の目的ではない。


なにも収獲が取れずに諦め、しぶしぶ踵を返す幸子の脇を、たまたま、得意客らしき女性を連れだって歩く行員を目にした瞬間、思わず声が出そうになった。


彼の胸にキラキラ光る金ぴかのバッチが目に飛び込んできた。


「このバッチを祭さんは言っていたのか。」


と言うことはコロナの濃厚接触者でいつもの二人連れの行員さんの代わりに来た人こそが本物だった?


じゃ、二人の行員さんが偽物だった?


偽物が「タクミ」の売り上げ取りに来ていたって事?


帰宅後、早速、祭さんに電話してみよう。


「タクミ」のバイトが休みだったら出てくれるはず、もし、品出しの最中だったら、ライン送ってみよう。


祭の真面目な人柄は回りに知られていて、まもなく出勤が許されていたのだ。


幸子は速足で一人暮らしのアパートに帰り、スマホを手にし、検索を掛けてみると、そこには「創業者は大の鷹好きで鷹匠の経験がある。」と記されてあった。


「創業者が鷹匠の経験まであったなら、バッチに鷹が彫ってあってもおかしくはない。」


おそらくは品出しの最中だったのか、祭のスマホは留守電に繋がる。


仕方なく、ラインを送る。


「今、来ている若い銀行員さんのバッチって鷹のマークが彫ってある。」


運の良く、ATMに並んでいた幸子の直ぐ脇を得意客らしき女性と一緒に通ったその際、ハッキリとバッチの中に堂々それは姿を表す。


イキイキと今でも飛び出しそうな勢いで、独特な光を帯びながら瞳のど真ん中に飛びこんで来る。


なんで、小さな鷹なのにこんなにも大きく光り輝いて目に飛び込んでくるのか…。


幸子は不思議でならなかった。


ほどなくすると、祭からの返信がラインに入る。


「わざわざ、銀行まで言ってくれたのね。ありがとう幸子さん。感謝します。確かに何かの鳥がバッチの中央に彫ってあったと思います。詳しくは、南さんが来たら聞きます。彼女なんでも知っているの。私の情報源なの。きっと分かるわよ。」


幸子は一人ほくそ笑んだ。


間違いない、私の感も働き出したらしい。


弘明の事件から幸子は全てにおいて自信が無くなっていた。


当然だろう、愛息子が年若い柳井まどかさんを自分勝手な思いが募って殺めてしまったのだから。


翌日、仕事帰りに祭が幸子の住むアパートにやって来た。


開口一番「幸子さん、ビンゴよ!ラインもらってからまもなく南さんが夕方のシフトに入って来たのよ。耳元でコッソリ誰にも聞かれないよう細心の注意を払って聞いてみたら、幸子さんの感は抜群ね。バッチには鷹のマークがあるんですって。南さん新人の行員さんとバッチについて話したことがあるんですって。なんでも創業者が鷹匠の経験者で鷹が彫っているって言っていたの。」


「ちょっと、人に聞かれるからともかく早く入って。」


「ごねんね、興奮しちゃった。」


誤りながら祭はアパートに入る。


出されたお茶を「ゴクリ」飲み込むと祭の口は驚くほどのスピードを持ち、話始める。


「幸子さんからラインもらった後、南さんと話す機会があったの。その銀行員さんが言うには、鷹のマークが入っているバッチしか着けている人はいない。前任者の二人にも会ったことは無く、直接上司にあたる方からタクミの売り上げを取りに行って欲しいと頼まれたんだそうよ。考えてみたらタクミの社員、誰一人として二人の名前を知らないのよ。それほどタクミになじんでいて自然にやって来て売り上げを持って行ってたのよ。今考えるとおかしな話よね。」


「南さんは本当に話し上手ね。」


「そうなの。シングルマザーで一人息子を大学まで出せたんだから。タクミに対する思いの強さがそうさせていた。誰とでもお客様にもよく話しているわ。これからも情報が集まる。気さくな性格なのよ。」


「南さんがいてくれて良かったわ。」


たわいのない世間話もして祭は帰って行った。


「ふう」っと大きくため息をつくと幸子は今までの出来事を順を追って頭の中でまとめる。


柳井まどかさんを一方的な思い出殺めてしまった息子 弘明が収監されている網走にやっとの思い出行った。


弘明の元気な姿に安心したのも束の間、合唱団仲間、皆川祭から電話が来る。


どうやら、祭がバイトするスーパー「タクミ」で金庫から現金が盗まれるという事件が起こる。


金庫は皆が出退勤を入力するPCがある大きな部屋にある。そこは常に誰かがいる。


事件の日に出勤だった祭はアリバイがないと疑われるがその真面目な性格は功を奏しまもなく出勤が可能となる。


4月10日に売り上げを取りに来た行員が実際の金額とPCの中と紙上で残されている金額が違うと言い出したのだ。


その行員はいつも二人づれでやってくる行員がコロナ濃厚接触者になり緊急で来たのだった。


幸子はその若い行員が怪しいと思い彼らが勤める銀行へと行き、バッチに鷹のマークが彫ってあるのを知る。


早速、祭にラインで連絡し、タクミの事情通、同僚 南洋子から今来ている若い行員が「銀行のバッチには必ず鷹のマークがある」、と説明を受け、事件前に売り上げを取りに来ていた二人のバッチとは明らかに違っていた。


だとすると、二人な偽物?しかし、どうやって売上金を持ち出したのか?社長を含め上層部は何を思っていたのか、皆目理解出来ない。


これからが勝負だわ。


絶対に真実に近づいてやる!


あらためて事件解決を誓った。


警察でもないのに。(笑)

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