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見た目に騙されるな!

 倒壊するビル、砕けるアスファルト。信号機は小枝のように折れ火の手が上がる。

 街の中心に立つ巨大な影。どろどろに溶けた粘液を頭から被ったような化け物。二足歩行する巨大なワニのゾンビに似た怪獣だ。

 その姿はあまりにも醜く。人々が一目見るだけで吐き気を催す醜悪な存在に人々が絶望にうちひしがれる。


 しかし人類に希望は残されていた。


「ズェア!」


 巨人だ。銀色の肌に青い線が走り、手足と胸部に鎧がつけられ、額には大きな黄色い宝石が輝いている。

 いつだったか、テレビで見た巨大ヒーローがそこにいた。これは現実だ、テレビの中じゃない。凶悪な怪獣に立ち向かうヒーローの背に人々は声援を送る。


「いけーライトニングマン!」


「怪獣なんかやっつけて!」


 誰もがこの巨大ヒーローを応援していた。怪獣を倒し地球を守る守護者を信じていた。

 悪臭を垂れ流す体液を怪獣は全身から滲み出し、言葉とも呼べない獣のような咆哮を上げる。窓ガラスが震え、砂埃が舞い上がり大きな口に赤黒い光が集まった。


「ゴアァァァ!!!」


「ダッ!」


 無数の光の矢を口から吐き出した。しかしヒーロー、ライトニングマンは青い光の板、バリアを展開し防ぐ。光の矢は簡単に弾かれ、街のあちこちに着弾し炸裂する。

 次に動いたのはそのどちらでもない。空を飛び回る戦闘ヘリと戦車達だ。自衛隊もまた地球を自分達の住む地を守る為に戦っている。

 ミサイルに砲弾、機銃の掃射が一斉に怪獣に放たれる。しかしこの怪獣には小さな抵抗、玩具の鉄砲程度のダメージにしかならない。


「各員攻撃の手を止めるな! ライトニングマンと共に、我々の地球を守るのだ!」


 声が聞こえる。地球を守る為に命を懸けて戦う勇者の声が。

 誰もが信じていた。この巨人と共に侵略者達から、強大な脅威から故郷を守るのだと。


『フフフ。相変わらずこの惑星の生物は愚かだな。この格好になれば私が《地球を守りにきた正義のヒーロー》だと錯覚するだなんて。洗脳や幻覚を使わずとも私を信用する』


 巨人が、ライトニングマンがこの惑星に存在しない言語で語る。その言葉を理解しているのはただ一人、目の前にいる怪獣だけ。


『ふざけるな! お前なんかに地球は渡さない。俺の大切な人がいるんだ!』


 怪獣の内にいる青年が叫ぶ。彼はライトニングマンの言葉が解る。何故なら彼の中には宇宙から地球を守りに来た地球外生命体が宿っているからだ。


『しかし誰も君を信じない。地球人はみんな君を敵と見なしている。ほうら』


 自衛隊からの攻撃は止まらない。かといって怪獣は彼らを攻撃する事はできなかった。

 彼らは純粋に怪獣が敵だと思い込んでいるからだ。


『そらそら! 地球を守ってみせろ怪獣!』


 ライトニングマンの手から拡散式の光弾が放たれる。怪獣もろとも、街にまで光弾が当たり破壊していく。

 そう、スペシャルマンが侵略者で、怪獣が地球を守っているのだ。


 この宇宙人は用意周到だ。地球人の感性を入念に調べている。そして地球にある《宇宙から来たヒーロー》の概念を利用した。地球にとって好感を抱かせる外見に化け、前もって用意した怪獣を倒す自作自演のショーを行い地球からの信頼を得た。自分を止めに来た存在へ対抗する為に。

 青年は愕然としている。宇宙人に選ばれ合体し、侵略者と戦うなんて幼い頃に見た特撮番組のような展開に胸を踊らせた。しかし現状は違う。あまりにも醜く凶悪な怪獣。それが自分だ。

 確かに立ち位置は想像通り。自分は地球を守る為に戦っている。しかし世間は逆と感じていた。

 ライトニングマンが守護者であり、青年が脅威なのだと。

 先程のバリアもわざとだ。わざと反射し街に被害を出していた。派手な必殺技も周りを巻き込む事を想定している。そんな計算高い悪魔、それがライトニングマンなのだ。


『しかし宇宙警察も愚かだねぇ。そんな姿じゃ、この惑星では敵対視される。防衛に来るなら、私のような姿でないとね!』


 両手を胸の前で交差させ、手を横に広げながら光の線が伸びる。

 人々の歓声が大きくなる。ライトニングマンの必殺技、その前兆だ。


『合体した地球人君も安心して死にたまえ。私がこの星を守ってあげよう。自分のモノは大切にするタイプなのでね!』


『誰がお前なんかに渡すか! 地球は、地球に住む人間と動物のものだ!』


 怪獣も口に光を溜める。

 両者が最大のエネルギーを一点に集中させた必殺光線を同時に放つ。ぶつかり合う光達。お互い一歩も引かない。


『俺が……地球を守るんだぁ!』

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