第99話 湯江の名刀。命令刀。 2話
湯江はキメ顔で流暢に説明する。そしてイザベラは青白い粉雪の様な光に包まれながら心ここにあらずの様にぼんやりと前を向いていた。
「さあ、イザベラ。まずはこの氷の壁を消してもらうバイ」
湯江がそう言うと青白い刀は真紅の様な色に変わりだした。
どうやら記憶を消す時の刀は青白く、記憶を植え付ける時には真紅の色に変わるらしい。
「はい、......今すぐ......うっ、うぅぅ!?」
しかし急にイザベラ様子が急変する。何かと思いきや俺たちはその光景をただ不安な面持ちで見守る事しか出来なかった。そうこうしている間に......。
「ざけんなよ!!クソガキがーーーー!!!」
荒々しく凶変したイザベラだったがあの様子からみるとどうやらイザベルに変わったらしい。
おそらく、二重人格であるイザベラとイザベルでは記憶を消す事や植え付ける事はもう片方には反映しないのだろう。
「湯江!!」
湯江の身に危険が迫っていると思うと俺は思わず叫ぶ。
そして憤怒するイザベルは勢いよく湯江に迫りくる。
「言い忘れてたバイ。この刀に間合いなどは無意味だバイ」
湯江は冷静に刀身をイザベルに向けるとその刀は記憶を消す時の青白い光に切り替わりイザベル目掛けその刀は音速を超えるスピードで伸びていった。
ヒュッ!ドス!!
風を切る様に伸びたその刀は一瞬にしてイザベルの腹部を貫き背中にまで命令刀は達していた。
「ばっ、ばかな......」
額からダラダラと汗を流し困惑するイザベル。そしてまたまたイザベルから青白い光がプワーと浮かび上がると、イザベルの表情からは生気が抜け落ちるような面持ちに切り替わる。
「さあ、これでチェックメイトだバイ。今すぐこの氷の壁を元に戻すバイ」
イザベルに突き刺さっていた刀は真紅の色に変わりだす。
「分かりました」
ぼんやりと前を向きながらイザベルは右手を掲げると、氷の壁が蒸気を放ちながら溶けていく。見る見る小さくなっていく氷は溶けきり、ようやく湯江が氷の壁から解放されたのだった。
「湯江!大丈夫か!?」
俺たちは急いで湯江の元に駆け付けた。湯江は泰然としていた。
「大丈夫ですばい。それよりこいつを早く縛った方が良いですバイ。この命令刀の効果は10分までなので」
湯江は刀身を元に戻し、イザベルから突き刺さっていた刀を引き抜いた。イザベルは微動だにせず、未だに上の空だった。
「ならこのロープで縛ってくれ」
シルビーが黒いロープを魔法で取り出す。大きさが綱引き用サイズだった。そしてそのロープは相手を縛るのはもちろんだが、気や魔力も封じる事が出来る。つまりこれにこれに縛られれば能力が一切使えないのだ。
そのロープをドンが受け取りイザベルの身体をグルグル巻きにして縛り上げた。首から下まで縛り上げられまるで巨大なミノムシ状態だった。
「よし、これで小指一本も動かせないぞ」
ちょっとやりすぎな気もするけど仕方ないか。動かれると厄介だし。
そして、イザベルの部下達にも同じようにロープでグルグル巻きにした。縛ったイザベルたちを大広間の隅に寄せて一列に並べさせた。芋虫の大軍がこちらに迫ってくる様な絵ずらだった。
そして10分の時が経った。
「き、貴様らこんな事をしてただですむと思うのか!」
正気に戻ったイザベルが俺たちに向かい憤怒するが俺たちは心が揺らぐことなく、イザベル達に真っ直ぐに目を向ける。
「どうやら自分たちの置かれてる状況が分かってないみたいだな」
ドンは威圧する様にイザベルの前にまでゆっくり歩くとバッチンの構えをする。
「ひっーー!や、やめろ!それだけはやめてくれ!!!!」
異世界人トーナメントでのイザベルのトラウマが脳裏で激しく揺れ動いていた。
酷く取り乱し恐怖するイザベル。
そして湯江が一歩前に出てイザベルに視線を向ける。
「貴方では話にならないバイ。最初に話していた男に変わるバイ。もし拒むのであれば......」
湯江がそう言うとドンに視線を向ける。するとドンが湯江の意図を察しにんまりとした笑みでバッチンの構えをして、イザベラに歩み始める。
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