第98話 湯江の名刀。命令刀。
狼狽するイザベラにドンはバッチンの構えを取りながら猛進する。
「また神経ズタズタにしてやるぜ!」
「くっ!そうは行きませんよ!」
イザベラはなんとかこの危うい状況を打破しようと右手を掲げた。すると、猛進するドンとの間に天井にまで届く巨大な氷の壁を作った。更に湯江と俺たちとの間にも同じ氷の壁を作り、湯江とイザベラだけの空間を作り出していた。氷の壁に挟まれたようにいる湯江とイザベラを残し俺たちは氷の外側で何が起きたかと困惑していた。
「おい!おい!湯江!!」
俺は氷の壁を何度も殴るがびくともしない。殴っても音すらしないその分厚い氷の壁を前に俺は奥歯を強く噛みしめる。
「ハジメ下がってて!」
レイナが杖を魔法で取り出すとその先端から光が溢れ出す。そしてレイナは氷の壁目掛けライトレーザーを放った。
バコーーン!!
氷の壁から爆炎が鳴り響きプスプスと黒い煙が経ち始める。そしてその煙の先で目にしたのは傷1つつかない氷の壁と、その先でイザベラに胸倉を掴まれ浮遊していた湯江だった。
「湯江!!」
このままではまずいと、氷越しでぼんやりと見える湯江の安否に俺たちの目はそれに釘付けになる。次なる手を打とうと俺はオーバイロや黒炎弾を試みて見ようと思案していた最中だった。
「大丈夫だバイ!」
なんと湯江は胸倉を掴まれてるにもかかわらず眉一つ動かさず、まるで動じていなかった。それどころかイザベラに威圧する眼差しを向けているようにも思える。
「この状況下で私に牙を向けますか。貴方の様なおチビさんに一体何が出来ると?」
湯江を見下すイザベラ。
「人を外見で判断するなと親に教わらなかったバイ?まあどちらにしろこの距離でならかわしようがないですバイ」
微動だにしない湯江はそう言った次の瞬間......。
ドス!!
なんと一瞬にしてイザベラの背中から白い刀身が突き出ていた。腹部から貫通したその白い刀の柄は湯江の小さい手で握られていた。
しかし背中にまで貫通したはずなのに、一滴も血が出ていなかった。突き出た白い刀身からは青白い粉雪のようなぼんやりとした光がぽつぽつと現れ始めた。そしてその光はイザベラを包み込み始める。
「なんだこれは!」
急な事に困惑したイザベラは、その場でビクビクと震え始める。
そして湯江はイザベラの腹部を蹴り、その反動で後ろに大きく下がった。腹部から抜けた刀身からはやはり血が一滴も付着していなかった。
「痛みは無いはずバイ。ただ、そのかわり......」
「......そう言えば......私は......なぜこのような所に」
湯江は不敵な笑みを浮かべるとイザベラはこの状況を飲み込めないどころかここに来た目的すらも忘れているような口ぶりだった。
何がどうなっているのかと困惑する俺たちを前に湯江は刀の切っ先をイザベラに向ける。
「この刀は命令刀と言うバイ。この刀で傷をつけられたものは一週間前までに記憶が消され更にアチキの命令を植え付けることが出来るバイ」
まじか!!湯江ってただのちびっ子社長てだけじゃなかったんだな。




