第81話 明かされるゼファイアの過去
「そしてある日あいつはヒーリング会社の連中からある人物の名を聞かされそいつに興味を持ち始めていった」
「そいつって?」
光輝の言うある人物と言う名が重く気に掛かり、俺は思わず生唾を飲み込む。
「数百年前この銀河を掌握しようとしていた異世界人たちだ。あいつは生前、虐めに会っていてな。強くなっていく内にその力で自分の身を守るために振るいたいと豪語していた」
「まって!なんで自分の身を守りたい事が他者を傷つける事に繋がるの?」
俺は今のゼファイアがその道理から外れている点が余りにも気がかりで思わず疑問の言葉を口にする。
「昔あいつはこう言っていた。『傷つけられる奴が善悪だとしても、それでも一方的に傷つける奴は絶対的な悪だ。だからこそ俺は惨めで悲惨な人生を歩む善悪でいるぐらいなら、絶対的な悪になる。それこそが自尊心と身を守る最善策。傷つかないと言う唯一の答えなんだ』......てな」
それを聞いた俺はそんな理由でと言う言葉が脳裏に浮かんでこなかった。何故なら傷つけられる奴が抱える心の闇は傷つける奴より根深く誰よりも闇に落ちやすい物だ俺は誰よりも理解しているからだ。もし俺がゼファイアと同じ価値観だとしたら俺もあいつの様になっていたかも知れないと、ただ、ただ、それだけが俺の心に訴えかけていた。
「......あいつも虐められてたんだな」
俺は振り絞るような小声を言うと光輝が浮かない視線を向けて来た。しかし詮索する事もせず光輝はその場で深く深呼吸をする。自分の弟子が宇宙を征服しようとするまでの経由を話せば誰だって気が重くなるに決まってる。
「今のあいつは昔の虎狼としていた異世界人と大して変わりない。違うところがあるとすれば蓋世を持ち合わせているがそれは力での場合だ。あいつの心は生前の頃の弱いままと何も変わっちゃいないんだ。あいつはただ力に頼っているだけだからな」
光輝は俯きながらゼファイアの過去を語って言った。その表情は見えなくても重々しい物だと察してしまう。
「なら、俺が気付かせてやる」
陰陰としていく空気の中を俺は断ち切る様に、ゼファイアとの戦いの意思を口にする。
そこでドンは……
「俺はさ、この世は結局、力だって言うのは誰よりも理解しているつもりだけど、それでも相手の心に訴えかける優しさも存在するって言うのはワン兄を通じて分かったんだ。だから俺はゼファイアに力が全てじゃないって教えてやりたい!」
「ああ、そうだな!」
ドンの鋭い眼差しとその意思に俺は安堵した。しかし光輝と湯江はふさぎ込むように俯いていた。
「そうは言っても現実的に貴方たちがゼファイアに勝つことは困難を極めるバイ。ですよね。光輝お兄ちゃん」
「当時、ここを抜ける前までのあいつは俺に近い実力者までになっていた。この二年でどこまで成長したか想像がつかない。あいつの成長スピードは昔から目を見張るものがあったからな」
そう言えば光輝の実力は俺をも上回っている気がする。気がすると言うのも変な話だが、実際に光輝の全力を見たわけじゃない。最初に会った時の光輝の攻撃にピリオドを用いてもどうにもならなかったし、正直な話、光輝より強い自信がないのが本音である。そんな光輝をゼファイアは既に上回っているかもしれない。
「とりあえず漆黒の覇者の幹部を一人、拘束するバイ」
「そうだな。まずは漆黒の覇者の幹部を......今なんつったの!!!」
ナチュラルに漆黒の覇者の幹部を拘束すると言う湯江の発言に俺たちは思わず仰け反った。




