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君の為の進行劇  作者: ラツィオ
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第8話 最凶の能力者?その名はドン! 2話

 異様な空間に佇みフードで全身の身を隠すその男は、一際、ドス黒いオーラを宿しているように思えた。


 「遅れたかい?」


 この現状にゴンザレスの語気は自然と暗くなっていた。


 「いや、時間どおりだ。こっちだ。ボスが待ってる」


 その男は顎で2階を指し、俺たちに行くよう促す。硬い面持ちで足を運ぶ俺たち。2階に上がると1階と変わらない汚いありさまに光を遮る影が目立つ、そこには丸いテーブルを前に座る全身フードの人物、その横に二人と後ろに一人の同じく全身フードの人物たち。


 「ボス、お連れしました」


 俺たちの案内役の男がボスと思われるそいつに、深々と頭を下げる。


 「よし、下がれ」


 テーブルの前に座るそいつが、野太い声で案内役の男に指示を出す。声からしてそいつも男だった。そしてその男が立ち上がりフードを外すと、一斉に他のフードを被っていた連中もフードを外す。


 「じゃあ、早速だが教えてもらおうか」


 そのボスは目元に深々と熊があり筋骨隆々、短髪でやさぐれているような男だった。


 「おいおい、自己紹介ぐらいしてもいいだろう。俺は」


 「――必要ない。俺たちはお前たちから情報を買う。これはその一時の商談だ。なれ合う気はない」


 陽気なゴンザレスの言葉を強い語気で制止させるボスの男。俺も体験した事のない異質な場に手が震える。


 「それより、そのガキどもはなんだ? 商談相手はお前ひとりと聞いていたが?」


 「えーとだなあ、こ、こいつらは、......この後、飯を食いに行こうと思ってたんだが、さすがにこの商談中に外に放って置くのも危ねえだろう? だから、俺様が身近で守るにはこれしかなくてなあ、悪いけど我慢してくれねえかあ?」


 ゴンザレスは片手ですまんという仕草をボスの男に向けていたが、俺はゴンザレスに呆気にとられた表情を向ける。そしてレイナはゴンザレスのお尻を力強くバチンと叩く。


 「おい、どうした?」


 「いえ、いえ、この殿方のお尻に虫が付いていたので、オホホホホッ!」


 困惑する男のボスを前に威圧されるレイナにゴンザレスは、たじたじとなっていた。


 「......まあいいだろう。では早速だが本題に入ろう。単刀直入に言おう。()()()()()()()()というマフィアの情報が欲しい。報酬は20万だ」


 「いいぜ。ただあそこは、このリベリオンのマフィア組織じゃ最近になって最弱から巨大組織になった所だ。今じゃ構成員は500を超える。あんたら鮫のアカはよくて、50だろう? 勝ち目は薄いと思うぜ」


 ボスの男とゴンザレスが話している中で俺は、鮫の垢と聞いて思わず吹き出しそうになったが死ぬ気で堪えた。


 「よく調べているなあ。さすがと言いたいところだが、勝手な推測はするな。俺たちは、ある奴の情報が欲しいだけだ」


 淡々としゃべるボスの男は、どこか苦悩の表情を(ニジ)ませていた。


 「そいつの特徴は?」


 「そいつは、まだ10歳ぐらいの子供なんだ。名前はドン・シルバーだ。女に間違えられる男だ」


 ボスの男からその話を聞いたゴンザレスは、思いつめたような表情で思考を張り巡らせた。そして何かを察したように驚いた」


 「あんた、事情は知らねえがそんなんに二十万払って本当にいいのかい?」


 「ふん、余計な詮索はするな。お前は情報だけ渡せばいいんだ」


 ゴンザレスとボスの男だけで成り立つ会話に取り残された俺とレイナは、互いを困惑した表情を向ける。


 ズドーーーーーン!!!!!


 突如、町全体に響き渡る地響き。それは、俺を含めたこの場にいる全員の身体が大きくぶれるほど揺れ動く物だった。


 「な、なんですの、この地響きは!?」


 レイナは驚愕な表情でキョロキョロと視線を左右に何度も向ける。


 「おい、お前たち! 悪いがこの取引は無しだ!」


 「ま、待て! おい!」


 ゴンザレスが止めようにも(カカ)わらず、鮫の垢たちは剣幕を突き立てるような険しいい表情で俺たちの横を強引に横切った。俺たち3人はキョトンとした表情で棒立ちする事しか出来なかった。


 「ねえゴンザレス、俺、状況が全然掴めないんだけど、どういう事か分かる」


 「私からもお願いします」


 完全に取り残された俺とレイナは、ゴンザレスに困惑した視線を向ける。


 「実はだな、さっきの奴らは、鮫の垢て言う小規模なマフィア組織なんだ。そして奴らが追っているのがブラックフィールて言う大規模なマフィア組織。ただ、前までのブラックフィールは弱小と呼ばれていた組織だったんだがな。ここ1カ月の間に急激に規模を増したんだ。そのきっかけが、ドン・シルバーて言う10歳の男のガキなんだ。そしてそのドンは、ただの暴力でブラックフィールを小規模から大規模な組織に発展させたってわけだ」


 「とんでもない子供だね」


 そのドンの脅威制に思わず声を漏らす俺にゴンザレスは達者な口調で話を進める。


 「ああ、とんでもねえ奴だ。ここいらじゃ、あいつに近づこうとうとする奴は、今となっちゃ(ホトン)どいない。なんせ近づきゃ難癖付けてブラックフィールの勢力を伸ばす口実として平然と脅迫や暴力を振るうって話だ。それにドンが介入するまでにこれまでのブラックフィールを疲弊に追い込んできた組織たちを報復していったのもドンなんだ」


 壮絶なドンの経由に沈黙する俺とレイナ。レイナはその中で話の流れを変える。


 「ここに来てからのドンと言う子の経由は分かりました。それでさっきの人達は、なぜ今の地響きでこの交渉をやめたんですか?」


 しばし俯き思考を絞る様に考えるゴンザレス。


 「ここからは、俺の推測なんだが、さっきの交渉の場にいたボスの男の名は、ライアス・シルバー。ドンの親父だと思う」


 「えっ! その子の父親!! なんで自分の子供の情報を欲しがったの? しかも20万なんて大金まで出そうとして!?」


 理解不能としか言いようがない内容に俺は思わず声を張り上げる。


 「驚くのは分かるがよ、まあ話は最後まで聞けよ。多分だがあいつは、自分の息子を......殺そうとしているのかもしれない。仮にもマフィアだからな、それなりのケジメなんだろうよ」


 肩に重い鉛でも乗せられるような重圧な内容に、俺とレイナは再び沈黙する。


 「ねえ、止めようよ! 親が子供を殺すなんてあっちゃいけないよ!」


 俺は生前の自分が両親から迫害された事が脳裏を強く過り、重なる何かを感じ思わず沈黙の場を強い語気で破る。


 「私も何か出来るならそうしたいですし、とりあえず、さっきの鮫の垢の人達を追いかけましょう」


 俺の意思に同意してくれるレイナの眉には愁眉が浮かぶ。


 「お前ら正気か? マフィアの抗争に足つっこんでたら命が幾つあってもたんねえぞ!」


 「それでも放って置けないよ。ゴンザレスは、ここから逃げてここからは俺がやるから」


 けたたましい声を出すゴンザレスに俺は覚悟の意思を言葉に込める


 「一、私を置いていくなんて許しませんよ! 共に行動する以上、一緒です! それに私も強いと言ったはずです!」


 「......けどさ」


 レイナの熾烈さに俺は思わず声を縮こませる。


 「分かったよ。じゃあ、レイナもよろしくね」


 「ええ」


 理解してくれたと思ったレイナは満面の笑みを浮かばせていた。実際、俺もレイナの実力が気にならないと言えば噓になる。


 「じゃあねゴンザレス。俺たちは行くよ。後、報酬の方は要らないから。いろいろ教えてくれてありがとう」


 「ありがとうございました。ゴンザレスさん。お元気で」


 俺とレイナは別れの挨拶を言うと、ゴンザレスは、どこか寂しそうな表情を滲ませ、奥歯を噛みしめていた。不甲斐なさから出てきたものだろう。


 ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!


 突如、何者かが階段を地響きのような音を立てながら上がってくる。


 「おい! あんたら、手かしてくれ! ボスが大変なんだ! 頼む!」


 階段を上がってきたのは、先程まで交渉の場にいた部下の1人だった。呼吸を乱しながら剣幕を突き立てる勢いで俺たちにお腹の底から叫ぶ。 


 「今度はなんだってんだ!?」


 困惑する俺たちを前にゴンザレスが身を乗り出すようにその部下に問いかけると、その部下は俺の膝に叫喚しながらしがみつく。


 「ボスがドンの奴にふん縛られちまったんだ! それにボスは、泣き叫ぶようにドンの奴を説得しちまっててよ。これ以上、ボスの醜態を晒すわけには、いかねえんだ! だから頼む。助けてくれ!」


 錯乱したような言動に俺は困惑した。しかし俺は、ある疑問が浮かび上がる。それは、これから自分の子供に報復をする親とは思えない行動だからだ。それでも鮫の垢の部下の瞳を俺は、覚束ない目でありながらも逸らすことなく真っ直ぐ見つめた。


 「大丈夫。俺たちが助ける」


 「ええ、行きましょう」


 覚悟の言葉を発する俺とレイナに鮫の垢の部下は、大粒の涙を沸騰したかのように涙腺から湧き起こす。


 「すまねえ!!」


鮫の垢の部下の悲痛な声に俺とレイナは互いに向き合い強く頷く。


 「じゃあね、ゴンザレス。色々ありがとう。」


 「ありがとうございました。お身体にお気を付けて。」


 俺とレイナは、真っ直ぐにゴンザレスを見つめ一方的に別れを告げ鮫の垢の部下と共にドンの元へ走って向かう。


 「おっ、おい! ......くそっ」


 ゴンザレスは後ろめたい後悔を表情に浮かばせながら、再び奥歯を噛みしめる。

 

 「それであんた達のボスは、今はどこにいるの!?」


 階段を急いで下りながら俺は、鮫の垢の部下に聞く。 


 「ここを出たらすぐ目の前だ! さっきの地震みたいなのは、ドンって奴のの仕業なんだ! とんでもなく強いから気を付けろ! ていうかお前たち強いのか?」 


 切羽詰まった言動から一転して俺たちが強いかどうか走る足を止めて端然とした面持ちで聞きだし始めた。


 「――今更だな! ていうかそこで落ち着くなよ!」


 「ああっ、悪いな」


 俺の怒涛のツッコミにたじたじとなる鮫の垢の部下。


 「安心しろよ。ちゃんと止めてやるから」


 「......分かった」


 俺の炎を宿したかのような真剣な眼差しに鮫の垢の部下は、その視線を逸らすことなく冷静に頷くと俺たちは再び走り出す。


  

最凶の能力者?その名はドン! 第3話に続きます。

よろしくお願いします!

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