第79話 職務を終え 2話
「ねえ光輝。なんでレイナ達には普通に自己紹介して俺には殴り掛かって来たの?」
どうしても俺にだけ名前を言う為のテストで殴り掛かって来た事が腑に落ちなく道中、レイナとキャンシーに聞かれないように光輝に聞いてみた。
「大した理由じゃない。お前が信用できる奴だからその仲間になら名前を言うぐらいならいいと思っただけだ」
光輝は少し恥ずかしそうにしながら、顔を俺の反対側に軽く向けていた。
あれ、思った以上に俺の好感度が光輝の中で上がってる。なんか照れるな。
そして俺達がヒーリング会社に帰ってくると玄関の前でシルビーとダイスが立っていた。何やら雑談をしているようだ。
「みんな、帰って来たんだね」
シルビーが俺たちに気付き声を掛ける。
「みんなお疲れ様。そちらの方は?」
シルビーが光輝に付いて聞いてきたためレイナとキャンシーにした似たような自己紹介をした。
「それにしても私たちの職場は酷かったさ。労働時間じたいは短かったけど内容がね。労働以上に銭湯にいる時間の方が長かったぐらいさ」
酷く落ち込むダイスとシルビー。二人とも臭いを気にしていて、袖辺りを嗅いでいた。
どうやらこの二人の仕事に関しては一番触れない方が良さそうだ。レイナとキャンシーは苦笑いしてるし。
「そろそろ中に入った方が良い。湯江にも報告しておかなきゃいけないからな」
先頭を切って光輝はヒーリング会社に入ると、俺たちも中に入っていく。
「光輝お兄ちゃーーーーーん!!お帰りだバイ!」
湯江は満面の笑みで光輝に飛びつく。
俺たちとの間にあれだけの凄みを利かしていた雰囲気とは真逆の幼児としての本来の面持ちだった。
他の皆はそれを見て唖然としていた。
「ああ、ただいま」
飛びついて来た湯江の頭を光輝は優しく撫でる。光輝も湯江の前では冷ややかな面持ちとは違い温和とした感じだった。
「ワン兄ーーーーー!!」
ドンもまた湯江と同じように俺に満面の笑みで飛びついて来た。
意外とドンと湯江は似た者同士かもしれない。
「ただいまドン」
「皆もごくろうさん」
俺にしがみ付いて来たドンは他の皆にも目線を向け軽く労いの言葉をかける。
「ハッ!そうでしたバイ!......オホン、皆さんお疲れ様だバイ」
湯江は我に返り姿勢を正し咳払いをする。
「これにて貴方たちは責務を果たしたバイ。これでチロルの無念も少しは晴れたはずバイ」
今更だけどロボットなんだから弁償代払えば良かったんじゃない?
「それではこれにて解散......と言いたい所なんだバイけど、貴方たちは漆黒の覇者を追っていると聞いたんだバイ」
湯江の言葉に俺は身体がビクンと跳ねた。でもなんで湯江がその事を知ってるんだ?
「そこのドンと言う男から大体の経由は聞いたバイ」
お前かい!!
俺は盛大にずっこけ、ドンは頬をポリポリ掻きながら照れ笑いをしていた。
「おい......ドン......」
俺は顔を俯かせながらどんよりした声色でドンに視線を向ける。
湯江とはまだ付き合いも短くおまけに裏社会の人間だ。ましてや漆黒の覇者はどう考えても闇の住人だ。湯江と漆黒の覇者に何かしらの接点があっても不思議じゃないからある程度、警戒すべき対象だと思う。もしこの双方の組織に繋がりがあるならこの状況は些かまずいのかもしれない。
「おい皆。そんな目で俺を見るなよ。仕方なかったんだって!掃除が終わった後、薄暗い部屋に連れてかれて、俺たちの今までの経由を言わないと無期限に労働契約結ばせるぞとか言ってきてさ」
優江を指さし慌てながらドンは釈明をしてきた。




