第77話 家族の再会
「それじゃあね美優ちゃん。貴方に髪のご加護があらん事を」
「はい。有難うございましたバハマさん。この御恩は決して忘れません」
美優はバハマに深々と頭を下げると、こちらにテクテクと駆け足で来た。
「お二人ともありがとうございました。あのお名前を伺ってもよろしいですか?」
俺と光輝は互いに顔を見合わせ、少し間を置いてから自己紹介をする。
「俺は泉光輝だ」
「俺は東条一。よろしくね」
「はい。私は田辺美優です。本当にこの度は有難うございました」
互いに自己紹介を終えるとバハマもこちらにゆっくりと歩いてくる。
「それじゃあ私の仕事もこれで終わりね。いい光輝君。可愛いからって美優ちゃんに手を出しちゃだめよ。私って言うフィアンセがいるんだから」
「アホな事言うな。それじゃなバハマ。金はいつものやり方で送金しておく」
そう言って俺たちはバハマに一礼した。光輝だけは後ろを向いて背中越しに片手を上げていた。そして俺たちは教会を後にした。
「約束忘れないでよ!100億だからねえええーーーー!!」
だからバハマさん!桁が増えてますよ!!
光輝は返事をする事なく、重いため息を吐き捨て気鬱な足取になっていた。俺と美優は嫌でも苦笑いになってしまう。
そして俺たちは優美の自宅であるアパートに足を運ぶ。
「そう言えばバハマさんが100億て言ってましたけど、あれって?」
「違う!一千万だ!」
光輝は焦りながら訂正した。
流石に冗談が過ぎるしね。
「もしかして今回の私が蘇った件と何か関係が......」
「気にするな。必要経費みたいな物だ。それと今回、あんたが生き返ったことは明かすな。親父さんにもだ。あんたが行方不明になった理由は不審者に拉致され監禁されてた所を俺たちが助けたと話を合わせろ。あんな目にあった後で悪いがあんたが生き返るまでの経由を話しても誰も信じてくれないからな」
光輝が淡々と説明すると美優は俯き始める。
「......分かりました。そうですよね。普通は生き返りませんし、あんな化け物がいた事自体、誰も信じてくれませんしね」
自分が殺された過去を思い起こしたかのように美優の表情は重く塞ぎ込み始める。
無理もない。あんな目に合わされて、ましてや生き返っとなると、脳での情報処理が追い付かないだろうし、怖かったろうに......
「ねえ美優ちゃん。実は俺も過去に一度殺されたんだ」
「えっ?」
俺は過去に殺される恐怖を思い起こし、不と美優に自分の過去を語りだそうとした。
「普通は生き返らないからこんな事言っても説得力ないけど、俺は今、幸せだよ。だから美優ちゃんも今を生きて幸せになれるよ。絶対」
少しでも美優の心の荷を軽くしようと俺は思いつく慰安の言葉を口にする。
「ふっ、フフフフフッ......ありがとう慰めてくれて、私より年下なのに偉いね。一君は」
どこか子ども扱いされはしたけど、何はともあれ、美優ちゃんから笑顔が戻った。俺はホッと胸を撫で下ろした。それを聞いた光輝の口元もどことなく緩んでいるように見える。
そして俺たちは美優ちゃんのアパートに辿り着いた。
ピンポーン!
光輝がインターホンを躊躇なく押す。
「はい」
ガチャリとドアノブを回し、義之が靉靆な面持ちで姿を現す。
「お父さん!!」
「みっ!美優!!」
美優の快哉の声に、ハッと我に返った義之は美優の元まで走り二人は力強く抱きしめ合う。
「良かった!ほんとに無事で良かった!!」
義之は美優の頭を何度も愛くるしく撫でていた。




