第73話 存続を懸けた戦い
青白い粒子は巨人に変貌していく。その巨人はまるで青白い羽衣を身に着けた天狗の形をした感じだった。左手には青白い色をした巨大な葉を手にし、右の腰には巨大な刀を収めた莢があった。
「やれ剛浄天狗。浄天昇!!」
光輝がそう言うと剛浄天狗は左手に手にしていた巨大な葉を両手に持ち、構えを取る。そしてプリン達の居る方へ向け、力いっぱい振りぬいた。
ブワアアアアアア!!!
目も空けられない程の巨大な青白い突風がプリン達と後ろに居る女に襲い掛かる。そしてその青白い突風はプリン達を一瞬で散りに変え、かき消してしまった。しかし後ろにいる女は又しても大口を開けその青白い突風を飲み込んだ。
ゴクリ!
「フー、流石にプリンちゃん達にも飲み込む限度がありますので今のは仕方ありませんね。しかし私の無窮食の前では無意味ですよ。オホホホホホ!」
「浄天昇は、俺が認識した敵を浄化する突風なんだが、お前はそれすらも食らうことが出来るようだな」
光輝は効かなかったことに対し悔しがるでも悲しむでも無く、淡々とした姿勢で現状を分析していた。
「でも勘違いするな。これはただの露払いだ。お前への終焉の舞台は別だ」
そう言うと光輝は手の平をパンッと叩き両手を合わせる。
「ロストワールド!!」
光輝の手からぼんやりとした波動が波走る。その波動は俺と女の周辺にまで届くと赤い網状のセンサーの様な物に変化し、辺り一面を覆う。
俺たち全員を覆ったロストワールドから放たれる波動からは何故か俺には何も感じなかった。しかし女だけは違った。額から冷や汗でも流してるかの様に、その表情からは笑みが消え、何かに怯えるような面持ちだっった。
「お前!一体何をした!!私の......私の......」
先程までの冷静沈着で人を小馬鹿にする様な笑みなど微塵もない程、酷く取り乱していた。
「どうやら気付いた様だな。このロストワールドは生きる物全ての特殊を無にする結界。つまりこの結界の中じゃ、お前はただの人に成り下がるのさ」
「馬鹿な!馬鹿な!そんな事があってたまるかーーーー!!!」
女は発狂しながら走り出し、ロストワールドの外に出ようと試みるため何度もその壁を殴る。
「無駄だ。ただの人間に成り下がったお前では俺のロストワールドは破れない」
結界はびくともせず、女は苦悶の表情でその場で膝から崩れ落ちる事しか出来なかった。
「これで終いだ。やれ、剛浄天狗」
光輝がそう言うと剛浄天狗は浄天昇を繰り出そうと巨大な葉を振りかぶった。
「ぐああああああぁぁあああぁぁああああ!!!」
そして浄天昇の青白い突風を浴びた女は、けたたましい声で断末魔の様な声を上げていた。
「あっ、アハハハハッ!!......どうやら私は踏んではいけない一線に踏み込んでしまったようです。貴方たちにかかわらなければ、この星は私の美食の聖地となり得たかもしれないのに......」
女は気が狂ったかのように笑い終えると、上辺を切なく見つめていた。そして悲しく口にしながらも肢体から徐々に、散りの様に消えていく。
「何が聖地だ。お前はただ人間を食うと言う選択しかしなかったからこそ、ここがお前の終点になった。お前の罪は人間を食料と考えた事からが発端だ。そして俺たち人間はそれを敵か化け物としか認識しない。そんな孤独と必然としてしまうのはどの星でも目に見えている。どんな奴でも孤独には抗えない。そんな奴が聖地を作ろうなんて土台無理な話なんだよ」
「どうやら私の敗因は私の理解者がいなく、私自身が人間以外の食事を怠った事でもあるようですね」
女は光輝の言葉で何かに不と気付いたかのように、ぼそりと口にする。そして女の身体は首から頭にだけとなっていた。
「どうやら本当に、ここまでのようですね。最後に一つだけ聞かせてください。私がもし人間以外を口にしたいと言えば貴方は私を助けてくれましたか」
「......仕事なら手を貸してやるよ」
少し間を開けて光輝が女に真っ直ぐな目を向けそう言うと、女は目だけ残った状態で大きい一滴の涙を溢し散りも残さず消えていった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
存続を懸けた戦いはここで終わります。
次回も引き続き書いていきますので、よろしくお願いします。




