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君の為の進行劇  作者: ラツィオ
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第71話 逸脱した食


 薄暗いトイレに薄暗い女性はちょっとしたホラー感がある。しかしそんな事は言ってられない。この状況を第三者が目認したら、ただの変態としか思われない。


 「す、すいません!ちょっと標識を見間違えたようで」


 俺は額に、汗を流して苦し紛れの言い訳を言う事しか出来なかった。流石にまずいか?


 「この事は目を瞑っていますので早く出た方がよろしいかと、近くに女性もいましたので」


 叫ぶわけでも動揺するわけでもなく慇懃(いんぎん)な姿勢で接してくれたその女性は狭い通路を通れるように、横に移動し、早く出ていった方が良いと促す。


 「はっ、はい!そうですよね。直ぐに出ていきます。ほら行こう。光輝」


 未だに動揺していた俺は、その親切味に有難みを感じ、光輝の袖を握りその場を後にしようと駆け足でその女性を横切ろうとした。


 「......」


 光輝は成すがままに、俺に引っ張られていくが、女性を見る瞳には疑惑の眉を寄せていた。


 そして女性を横切ろうと近づいた瞬間に、俺の身体全体に違和感がへばり付く。そうピリオドだ。でも今まで身体の部位的な部分にしか感じなかったピリオドと違って身体全体と言う事に何故だろうと動揺していると......。


 「下がれ!東条!!」


 光輝の叫ぶ声に、俺は目をギョっとして女性を見ると女性の口が二メートルを超える程、大きく開き俺を丸のみにしようとしてきた。そして光輝は俺の肩をがっしりと掴み後ろに走り出し、トイレの壁を蹴りでぶち破った。


 バコンッ!!!


 破壊した壁から勢いよく飛び出してきた俺と光輝。光輝は凛とした面持ちだったが、隣の俺は流石の事に動揺が呼吸に伝わる程、焦っていた。


 「やはりな、あいつが喋っている時に、何故か口から歪んだ魔力を感じた。おまけに東条が横切る瞬間に異様な殺意も放ってたからな」


 光輝は先程の女生との応答から何かあると分析をしていた。


 「どうやら貴方たちはただの変質者ではなさそうですね」

 「誰が変質者だ!!」


 破壊されたトイレの壁からの土煙から変質者と言う言葉に俺は思わずツッコんでしまった。そしてその土煙から薄暗い黒いシルエットが見えて来た。先程の女性がぬらりと現れた。


 「この格好ならごく一般的なOL(じょせいじむいん)と認識されると思ったのですが、流石に一時の食への欲心には些か人並から脱線した歪んだ情欲なような物が漏れ出るのも致しかた無き事です」


 先程の薄暗い雰囲気とは違い、キリッとした瞳のやり手のキャリアウーマンへと言う印象に切り替わっていた女性。


 「それにしてもそちらの金髪の殿方は中々の分析力ですね。判断力共々、称賛に値するものです。そちらの殿方のように変質者と思われたくない一心であの場を横切ってくれれば、私の食事も円滑に進みましたのに、残念です」


 何が円滑だ!さっきのは交渉でもなんでもないぞ!......俺はピュアなだけだ!


 「そんな事より教えろ!10日前、一人の女子高生をお前は食ったのか!?」

 「もしや茶髪でポニテの女の子の事ですか?」


 女の言葉に写真に写っていた美優が脳裏を嫌でも過る。そして女は薄笑いをする


 「どうやらその様子から見て、その子の事のようですね。ええ食べましたよ。モデルにスカウトしたいと言う虚言にホイホイと着いて行き、人気の無い路地裏でパクリと頂きましたもの。若いだけあって中々の美味でした」


 ......心の底から吐き気がする程の展開に俺と光輝の表情から生気が抜け落ちた。まるで心が冷たい手で撫でられるような感覚だった。

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