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君の為の進行劇  作者: ラツィオ
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第7話 最凶の能力者?その名はドン!

燦々と照らされた日差しの下をしばらく歩いていると、リベリオンの町と思われる場所が見えてきた。コンクリートで出来た建物がいくつも並び立っていて。それを、木の柵が覆っていた。かなり大きな街だ。俺とレイナは、ようやくかと思ったが、それと同時に不安が募る。


 「一、まずはここで情報収集をしましょう。ですので酒場に行きませんか?」


 「そうだね。ああいう場所が一番、情報が集まるっていうし。(異世界あるあるだし)」


 提案するレイナに俺は、軽く頷く。


 そのまま俺とレイナは正面の入り口と思われる、木の柵がない箇所を通った。


 「おう、おう、おう! お二人さん! 仲良くデートかい?」


 不意に高圧的な声が俺とレイナに飛んでくる。


 「デートしたかったら、有り金、全部おいていきな。ま、デートじゃなくても置いていってもらうがな」


 リーダー格と思われるその声の男を中心に6人の荒くれ者がこん棒や刀など背負い、俺とレイナを取り囲む。


 「お退きなさい! そんな事でお金など払いません!」


 レイナは、鶴の一声のように、荒くれ者たちに言い放つ。


 「おいおい、女の方は、偉く上玉じゃねえか? 女に関しては、アジトに連れてって楽しもうぜ」


 レイナの声など聴く耳も持たない荒くれ者たち。俺は、苛立ちが募り、奥歯を強く噛みしめていた。  


 「レイナ、ちょっとごめん」


 「えっ、は、一?」


 俺は戦う覚悟をした。レイナを抱きかかえ、片手を空に掲げる。レイナから甘い匂いが俺の鼻を過る。


 「今更だけど、見逃す気はないんだよな?」


 俺はリーダー格と思われる男に目線を鋭く向け、問いかける。


 「はっ、当たり前だろうが。言っとくが、女はおもちゃにするが、てめえは気に食わねえからな。身ぐるみはいで奴隷商人にでも売りつけるぜ」


 高慢にいう男に俺は更に奥歯を噛みしめ、片手に重力を集める。すると、荒くれの男たち全員がズルズルと俺の重力に引きずられていく。


 「うっ、うわ! なんだこりゃ」


 あがく荒くれの男たちは困惑しながら俺の元に徐々に引きずられていく。


 「グラビティ! (まんま)」


 そう言い放つと男たちは一斉に俺の作り上げた空中の重力に引かれ、バチンと音を立てて、団子のように、へばりついた。


 「うっ、うわ、なんだこりゃ!?」


 荒くれ者たちが必死に足掻こうとするが、口を動かすので精一杯という感じだった。


 「くそっ、てめえ、放しやがれ!」


 リーダー格の男が妙ちきりんなポーズで、俺に向け声を荒げる。


 「いいのか? 余り聞き分けがないと、こいつをこのまま外に投げ捨てて爆発させるけど、......どうする?」


 「まっ、まってくれ! わかった! 俺たちは、このまま退く。だから助けてくれ! 今持ってる有り金も全部やるから! 頼む!」


 もちろん、これは、ブラフだ。爆発なんて起こせやしない。しかし男たちにはこれが効果覿面だったらしく、その場で泣きわめきながら命乞いをしてきた。


 「よっと」


 俺は集めていた重力にへばり付いていた荒くれ者たち共々、近くの地面に投げ捨てた。 


 「うわーーーーー!!」


 荒くれ者たちは、それが爆発すると思い、腹の底から叫ぶ。


 パン!


 重力が地面に着く瞬間、弾けると共に、荒くれ者たちもバラバラに飛び散った。地面に横たわる荒くれ者たちは、悶える声を上げていた。


 「くっ、くそ! 金はここに置いていく。すまなかったな。......退くぞお前ら」


 リーダー格の男はそう言い残し、お金の入った小袋を慎重に置き、部下と一緒にその場を足を引きずるように去っていった。虚しく去る背中を見た俺は、正直ホッとした。


 「なあ、ちょっと待ってくれ! この星の名前は、なんて言うんだ!」


 俺は荒くれ者たちに声を張り上げた。


 「ああ、なに言ってんだ。この星はラーサイオ星だろう!」


 「......ラーサイオ」


 それを聞いたレイナは俯き思案を浮かべる


 「わかった。ありがとな」


 俺の言葉を聞いた。荒くれ者のリーダーは、舌打ちをし、その場を去っていった。


 「ねえレイナ、ラーサイオをって?」


 「......ラーサイオ星。危険指定星のBランクだったはず。この星もそこまで安全とは言えませんね。ちなみに危険指定星はSランクがあり更にその上にSSランクという最も危険な星もあります。そして、いちばん安全な星がEランクとっているのです」 


 レイナは頭に浮かぶ過去の記録を口にする。俺も今の現状の理解を徐々に深めていった。


 「それにしても凄いですね。一! それと、さっきのグラビティは、本当に爆発もするんですか?」


 不意に話を切り替えるレイナは、どことなく俺から何かを探ろうとしていた。


 「あれは、嘘だよ。引き付けて、爆風のように弾き飛ばすような事しか出来ないんだ。(他の戦術も考えないと)」


 「どうやら本当のようですね。それと、自分の身ではなく、私を案じてあんな行動にでるなんて、やはりここに来る前に言ったあれは、嘘だったのですね」


 安堵したと思いきや、ムスッとした表情に変わるレイナに俺は、たじたじとなっていた。どうやら、先程の俺が本当に爆発させるのか、ヒヤッとしていたらしい。。


 「そう言えばレイナ。一つ聞きたい事があるんだけど」


 俺は、一度、深く深呼吸をし、荒くれ者たちが置いていったお金の入った小袋を取りに行きながらレイナにある事を聞き出そうとしていた。


 「どうしました?」


 ちょこんと首を傾げるレイナ。


 「レイナの嘘を見抜くときって、レイナ自身が質問しないと駄目なの?」  


 「そうよ。」


 あっさり答えるレイナ。俺は小袋を掴みレイナの方へと向かう。


 「やっぱり」


 「ええ、最初は自分の意思とは関係なく読み取れていたことが苦痛でしたが、今はコントロールができ、便利だと思っています。しかし、使ってしまうと、少し後ろめたい気がしますが」


 少し俯くレイナ


 「そうなんだ、でも俺には後ろめたい気持ちは入らないからね」


 「ありがとう。一。やっぱり優しいですね。そう言う事なら、遠慮なく使わしてもらいますね」


 俺とレイナは一時の安らぎを得たように笑い合っていた。


 「それじゃ、行こうか」


 「ええ」


 気持ちを切り替え、俺とレイナは再び酒場を目指し歩き出す。それから、幾つもの建物や人を横切りながら辺りに酒場がないか探していた。一歩一歩、進むたびに、周囲の荒くれ者たちの鋭い視線を強く感じていく。でも襲撃はされない。もしかしたら、さっきの戦いがあるていど拡散したからかもしれない。


 「お二人さん、ちょっといいかい」


 前を歩いていると、壁を背に腕を組む男が不意に話しかけてきた。白いスーツにシルクハットを被った見た目も外見もふくよかに見えた40代の男。この町とは不釣り合いに見えた印象の男だった。 


 「なんでしょう」


 警戒しながら呼びかけに答えるレイナ。俺はいつでも動けるように気持ちを引き締めていた。


 「そう警戒しなさんな。さっきの見てたよ。そこの兄ちゃん。あんた強いねえ。」


 「どうも」


 陽気に話しかけてくる男に俺は軽く頷く。それでも俺とレイナは警戒を解かなかった。


 「まああれだ、まずは、自己紹介からだな。俺様は情報屋のゴンザレスってもんだ。宜しくな。それとだ、さっきのあんた達の事はすでに周囲にある程度、漏らしといたぜ」


 「はっ? なんだいきなり。情報や? 話しといた?」


 間髪入れず話すその男に俺とレイナは困惑する。


 「ああ、その方が、あんた達にとって都合がいいだろう。強い奴だと印象付けさせて置けば、身を守る予防線にも繋がる。それに俺様はここいらじゃ、信用できる部類の情報屋でね。発言力があるって事さ」


 「勝手な事をされても、お金は払えませんよ」


 何か裏があるのかと、俺とレイナは更に警戒する。


 「違う、違う、そんなんじゃないんだ。ただ、あんたらを見込んで頼みたいことがある。もちろんただとは言わねえよ。金も払うし、オプションとしてここいらの情報や、今日の宿泊場所も提供するぜ。どうだ?」


 その言葉を聞いて、俺とレイナは互いを向く。


 「頼みたい事とは?」


 レイナは率直に聞いてみた。


 「実はだな、ある交渉での俺様の護衛を頼みたいんだ。もし上手くいったら、10万だすぜ」


 「......少し、考えさせてくれ」


 俺とレイナは、ゴンザレスから少し距離をとり、提案を受けるかどうか話す為、近くにある木の木陰まで足を運ぶ。


 「どうする?」


 「正直に言いますと、悪くない提案だと思います。ただ、信用の問題ですね。」


 確かにそうだ。現状、俺達は八方塞がりのような物だし、有難い提案ではある。世の中、お金以上に信用が大事だったりして。頭を悩ます俺とレイナなから困惑した表情が染み出ていた。


 「受けよう。もし、何か起きたら、俺がレイナを守るよ」


 思い切った俺は、レイナに熱い眼差しを向けるとレイナは赤面した。


 「て、提案は良いとしても、わっ、私は、守られるだけの女では無いですよ」  


 「ハハハッ、分かったよ。それじゃ行こう。」


 場が暖かくなるのは一時の間だけだった。俺とレイナはゴンザレスの前まで行く時にはやや不安な気持ちを抱えながら足を運んでいた。


 「話は決まったかい?」


 陽気に聞いてくるゴンザレス。


 「ああ、その話、受けるよ」


 「よし! 決まりだ! なら早速で悪いんだが今から頼めるかい。それから行く前に、あんたらの名前を教えてくれよ。さすがに名前も知らないってわけにもいかないだろ」


 俺はその話を聞いて、焦った。何故ならレイナの素性は隠した方がいいと思ったからだ。こんな、ごろつきの町で全宇宙の王の娘と分かった日には、どんな扱いを受けるか分からない。良いイメージが浮かばない。


 「私はレイ、こちらは一と言います」


 「レイに一か、改めて宜しくな」


 とっさに機転を利かしたレイナに俺は少し驚きレイナに目線を向けると俺にウインクをしてきた。どうやら上手く対応できたらしい。


 「......うん、よろしく」


 俺とレイナは軽く頷くと、ゴンザレスは満面の笑みを浮かばせる。


 「こっちだ。付いて来てくれ」


 背を向き前を歩くゴンザレスに、俺とレイナは不安な気持ちを飲み込むように後に続く。


 「あんたら、この町は初めてだろ?」


 「ええ」


 並列する建物を横切りながらゴンザレスは話しかけてくる。


 「ここいらで、一番いい所は、なんと言っても酒場だ。酒もうめえし、飯もいい。何より安い。ガキでも入れるんだぜ。ここは、法も秩序もねえからな、その分、仕事だろうか、酒だろうと、ガキでもなんでもありってわけよ」


 「こんな所に居ては、大昔の厄災と変わりませんね。子供たちだけではなく、救済を求める人達には、余りにも酷です」 


 俯くレイナに俺は、心に波立ちを感じていた。


 「まあな、平均寿命が50だの、とんでもなく、えげつねえ時代だったのは、確かだし、ここもその時の時代と大した違いわねえ。けどな、救済措置がまるでねえって分けでもねえんだ。週に2回、安全な町に移送する為の馬車が出る。そいつにはギルドから雇われた2級の冒険者が護衛にも来るしな」


 それを聞いた俺は、まるで庇護を求める声が蔓延しているかのような町に思えた。その分、弱者を弄び私腹を肥やす荒くれ者たちが、住み込んでいるのだと。


 「ギルドなんてあるの?」


 俺はレイナに耳打ちをして聞いた。


 「ええ、どの星にもギルドがあり、そしてそれには1級から7級までの階級制度があり、2級クラスの冒険者は軍隊に匹敵する程の力を持っているのよ」


 「そうなんだ」


 改めて未知の大地だと実感する俺。


 「もっと、どうにかならないの。こうゆう町って」


 思わず心の声が漏れる俺。


 「......そりゃ無理だ。ここには、弱者も強者もねえ。あるのはただ、この世界で庇護を受けれなかった色んな人間や種族としか言いようがねえ。政府が動かねえ限りこの町の情勢は変わんねえってこった」


 俺は言葉が見つからなかった。静まり返る場の空気に俺たちの足取りも重くなる。


 「ここの情勢も変わります。いえ、変えて見せます。必ず」


 沈黙した空気の中、レイナは、鋭い眼光を遠い先に向けていた。


 「なんだ、なんだ、急に。レイちゃんは政府かの関係者か? 一瞬、妙な貫禄があったぜ」


 「えっ、いえ、違います。 この前、慈善活動していた人が演説をしていた事が耳に残って、それでつい」


 慌てて否定するレイナに、俺は焦った。心臓の鼓動が高くって行くのを感じる。


 「アハハハッ! まあ、憧れるのは構わねえが、ここじゃ、そう言うのはやめた方がいいぜ。なんせ、綺麗ごとが吐き気が出るほど嫌う連中ばかりだからな。そんなんで救われたら今の俺らはなんなんだってな」


 「......ええ、自重します」 

 

 現状を理解してきたレイナは、奥歯を強く噛みしめていた。今の自分が無力だと言わんばかりに......


 「そういえば、ゴンザレスの格好だとこの町じゃ危ないんじゃないの?」


 ますます重くなる場の空気を変えようと俺は、話題を変える。


 「この町の連中には、俺様は重宝されていてな。なんせ自分たちにとって有力な情報源を潰すわけにはいかないだろ。おまけに各国や他の町にも伝手がいくつかあるから、そこの情報も握ってるって分、俺様を頼る奴は後を絶たねえってわけだ」


 ゴンザレスの言葉に俺は、不と疑問に思い、首を傾げる。


 「あれ、そしたらこの護衛は? ここの町の人たちに重宝されてるなら、狙われないんじゃないの?」   


 「それがだなあ、今回の仕事は密輸の取引をする為に来たよそ者に俺様からその取引相手の個人情報を買いてえと言ってきたんだ。でもそいつらは、かなり黒い噂が絶えねえ連中でな、交渉の場の土壇場で暴力で脅し取ろうとしやがるなんて噂を耳にする」


 淡々というゴンザレスの言葉にレイナはビクンと身体が跳ね上がる。


 「ちょっと、待ってください! 少なくとも私たちは、密輸に間接的にかかわると言う事ですか! そんな話きいていません!」


 語気を張り上げるレイナに今度はゴンザレスが身体が跳ね上がる。


 「ばっ、バカ、声が出けえよ! この町じゃ、密輸は金になるんだ。いくら俺様がこの町の連中に重宝されてるとはいえ、金が絡むとなると話は別だ。目の色かえて奇行に走る連中だって現れる」


 「なりません! こんな仕事お断りします」


 レイナは一歩も引かずゴンザレスに食い下がる。


 「そういうなよ。リベリオンでの仕事にご法度ゴハットはねえ。ここじゃ、合法みてえなもんだ。食うためには仕方ねえのさ。そんなこと言ったら俺たちリベリオンの住民を否定する事になるんだぜ。それになレイちゃんは、この町の情勢に不満なんだろう。だったら知るためにも身を投じる事も必要なんじゃないのかい?」


 「そ、それは......わ、わかりました。 やりますよ! やらせていただきますよ!」


 レイナとゴンザレスの公論の末、レイナが折れた。......大丈夫かレイナは?


 「レイ、その気持ちは俺にも分かるから大丈夫だよ。頑張ろう」


 「......ええ、そうですね」

 

 萎縮イシュクするレイナに俺は、何気なくフォローをする。こうでもしないと、レイナが可哀そうに思えた。


 「アハハハッ、まあ、仲良くやってこうぜ。ほら、もうじき着くぜ。あそこだ」


 いつの間にやら着いた場所は、コンクリートが所々、欠けた建物の前だった。一際、異質な空気を放つような建物。俺は生唾を呑み込みその前に立った。


 「ここですね」


 「ああ、ここがそうだ。よし行くぞ」


 ゴンザレスの一言で、その建物に入った俺たち、中は外観以上にひびが入っていたり、泥がいたる所にこびり付き、埃などが目に映るほど汚れていた。嫌でも不快感を表すような内装だった。


 「長居するのは、衛生上、良くなさそうだね」


 「ええ、本当ですね」


 レイナは片手で口を塞ぎ今にもせき込みそうだった。


 「......来たか」


 2階に続く階段から不意に聞こえる陰陰とした男の声、俺たちはその方向にギョっとした視線を向ける。その目の前には、全身フードで身を隠した男がすらりと立っていた。顔もフードを被っていて覗き込んでもよく見えないような感じだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

最凶の能力者?その名はドン! 第2話に続きます。

よろしくお願いします!

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