第69話 奇怪な影
「も、もしやあなた方はヒーリング会社の関係者ですか?」
中年の男性はあたふたした口ぶりだった。
「ああ、俺はその会社からあんたの依頼を請け負った泉光輝だ」
「ご足労いただきありがとうございます。私は田辺 義之と申します。早速で申し訳ありませんが、娘を、娘を探してください!もう10日も行方が分からず、警察や探偵もお手上げな状態なのです!」
田辺は光輝にしがみ付き今にでも泣き崩れそうな様子だった。流石に実の娘が10日も行方を晦ましたのなら無理もない。
「落ち着け、その為にはあんたが冷静に話をしないと事が進まないぞ」
光輝は田辺の肩をがっしり掴み真剣に向き合う姿勢をした。
「あ、はい。そうですね。すいません。......ふうー......。娘の名前は美優と言います。最後に娘を見たのは10日前、美優が学校への登校するための準備をしている時の姿です。私は先に仕事へ向かいました。そして帰って来た17時頃には美優は居なく、その日から帰ってきてませんした。最後に美優が目撃された時間はその日の下校時間だけだったそうです」
「他には?」
「......これ以外......何も......なく」
田辺は自身の不甲斐なさに涙腺を滲ませながら説明した。今にでも叫び出すんじゃないかと思える程の歯がゆい感情が俺にも伝わってくる。
「分かった。俺たちは必ず真相を掴んでくる。だからあんたも辛いだろうがもう少し耐えてくれ」
「はい!お願いします!それからこれは美優の写真です」
その写真に写っているのは美優は茶髪でポニーテールの可憐な女の子。元気にピースをしている写真だった。
「ああ、任せておけ」
光輝がそう言うと田辺は泣き叫ぶ思いで頭を下げた。そして俺たちは重い足取りでその場を立ち去って行った。
それにしても光輝がここまで情の深い奴とは少し意外だった。
「それでどうやって調べるの?正直言うとさっきの情報だけじゃ僅少な気はするけど」
近くの公園にまで足を運ぶと俺は先程の証言の僅少差にやはり心もとない気がした。
「なあ東条。おかしいと思わないか?この案件が20を超える上に、さっきの田辺の娘である湯江は下校時間で足取りを絶ち10日も行方を晦ましている。いくら何でも神隠しに近い事件だ。そしてそれは人が意図的にどうこうできるレベルを超えている」
「て事はみんな自主的に!?」
俺は想像に身を任せ思った事を口走る。
「あほか!この数が自主的に消える事自体それこそ奇妙だろ。さっきも言ったろ。これは危険生物の可能性があるって」
「ああ、なる程」
「しっかりしてくれよ。これから一戦交えるかもしれないんだからな」
「それって相手が危険生物だから?」
俺は今回の事柄の重点と思えるポイントに首を傾げる。
「ああ、そしてそいつを特定する方法はただ一つ。東条、お前、気や魔力の感知は出来るか?」
「うん。一応、習ったけど......。まさかそれで探るの!」
まさかの捜索方法に俺は一驚した視線を光輝に向ける。
「危険生物は言ってみれば人外だ。そんな奴が俺やお前の身内と同種の気や魔力を持っているとは考えにくい。何かしらの違和感はあるはずだ」
「なるほどね」
俺は改めて危険生物の存在を認識し直した。それとシルビー達の事を光輝が知っているのは恐らく湯江が俺たちの情報を光輝に提供したのだろうと、敢えて聞く事はしなかった。
「そう言えばルクシス星で魔力を持っている人、見た事ないんだけど?」
「ここの星の人間は大抵そんな感じだ。そう言えば東条のは魔力や気でもないな。お前のそれはなんなんだ?」
話の流れのせいか、光輝は返答に困る質問をしてきた。さすがに超王の存在を簡単に露わにする訳にはいかないと思ったからだ。超王、人見知りだしね。
「えっ、えっと......」
「まあ答えたくなきゃそれでいい。行くぞ。場所は被害者の数が寄集まった所だ」
俺の困惑した顔を察してくれた光輝は話題を戻し前に進む。俺もその後に付いていった。




