第68話 いざ職場へ 2話
ピリオドの恩恵でギリギリ回避に間に合った俺だった。しかし......。
「やるな。ならこれはどうだ」
金髪の男がそうぼそりと呟くとピリオドで次に感知したのは予測不可能と思える程の数えきれない打撃箇所が俺の身体に違和感として、へばり付く。
「嘘だろ!?」
ドカドカドカドカドカドカ!
影すらも視認できない程の拳のラッシュが俺の身体を打ち付ける。
「ぐはっ!」
拳を食らった俺は数メートル先まで足を引きずりながら飛ばされる。そしてまたすぐに攻撃が来ると思い、俺は体制を立て直した。それでも未だに俺の脳内は困惑していた。なぜ攻撃してくるのかと。
「まあ、最初の一撃をかわしただけでも良しとするか」
「はっ!?何が?」
金髪の男がそう言うと先程の鋭い眼差しはどこに行ったのやら、涼し気な表情で俺の所にまでゆっくりと近づいてくる。
「さっきは悪かったな。お前が俺の仕事をこなせるに値するかテストしただけなんだ」
殴りかからなきゃいけないテストってそんな危険な職場なの!?
先程の攻撃の動揺が残る中、俺の背中に別の不安が覆いかぶさるのを感じる。
「べ、別に大丈夫だよ。あははは......」
まあ裏社会の仕事みたいな物だから致し方ない所もあるよな。
少々納得いかない点もあるが俺はこの状況を納得しようと自分自身に仕方ないと強く言い聞かせる。
「そうか......なら自己紹介から始めるとするか。俺は泉 光輝だ」
「それじゃあ改めて俺は東条一。宜しくね」
「ああ、なら早速で悪いんだが付いてこい。移動しながら仕事の詳細を説明する」
「え、うん、分かった」
光輝はその場でジャンプすると10メートル上のブローダーの屋根に上がる。俺は少し動揺したが光輝の後に続き屋根に向けジャンプする。
「行くぞ」
光輝のその一言で光輝はいたる所にある店や民家を屋根伝いで飛び移っていく。そして俺も屋根伝いを飛び移っていき光輝の横に並ぶ。そして光輝は仕事の詳細を説明しようと口を開く。
「これから向かう現場は父親と娘が住んでるアパートだ。そして依頼主はその父親でな、どうやら娘が行方不明になったらしい」
「て事はその娘さんを捜索する事が仕事なの?」
「いや、そう単純な話じゃない」
本来なら誰もいない屋根伝いを飛び跳ねられ穏やかな晴天に、肌に伝わる心地よい風に身を任せれば爽快な気分になれるはずなのに、光輝は依頼のせいかその目付きに雲行きが増していく。
「実はその近辺に類似の事件が多発していて俺以外にも探偵や警察にも捜査依頼が出されていたが、それでも行方が分からず未解決となっている」
「そんな重要な仕事、俺みたいな素人に務まるかな?」
「気にしなくていい。そもそもこの行方不明はただの失踪ではなく、ある未生物が関わっていると俺は睨んでいる」
未生物?前にシルビーが言っていた未特定生物と関係あるのかな?
「もしかしたらそいつは危険生物だったりするの?」
俺はシルビーの仕事を思い出し脳裏に浮かんだ疑問を光輝に聞いてみた。
「よく知ってるな。まあ俺もその可能性が高いと思っている。ただの失踪でここまで数が未解決であるのは奇妙だしな。異星の輩かと思いもしたが、ここ何年もこの星には近づいていない。この事件の発端である一カ月前から捜索手配の数は既に20を超えている」
その数の捜索依頼が未だに未解決でいるのは確かに奇妙だ。出来たらその道のプロのシルビーを呼びたいけど汚物の掃除で手が回らないだろうし、お風呂に入る時間も要るよね。と言うか一度、風呂に入っただけじゃ取れない汚れだと思うし。
「そう言えばさっき男の人に手渡していた白い粉ってなんなの?」
話は変わり俺は先程の白い粉がどうしても気になり、ほとんど好奇心で聞いてしまった。
「あれは金のない父親が息子に必要な薬を俺が無償で渡しただけだ。それと今後は湯江の会社はヒーリング会社と呼べ。あれでも一応、表向きの看板にも尽力しているからな」
なるほど。さっきのはヒーリング会社としての仕事だったんだ。やっぱり迂闊に裏の名前は出さない方が良いんだ。
「うん、わかった」
「......直だな。お前」
光輝は俺に興味があるような視線を向けて来た。
そして色々と話していると依頼主であるアパートに着いた。なんの変哲もない木造の二階建てのアパート。そしてその外に一人の中年の男性がおどおどとした面持ちで立っていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
いざ職場へはここで終わります。
引き続き、君の為の進行劇をよろしくお願いします。




