第65話 アルバイトと言う名の3k職場
不穏な空気が流れるのを肌から痛感する程、感じる。この場から俺は逃亡したいと足が疼いてしまう。
「どうやらパーチー所ではなくなりましたバイ。今すぐ葬儀に切り替えたいぐらいだバイ。とにかく貴方たちは謁見の間に来ていただきますバイ。六車、ここの後始末は任せたバイ」
「かしこまりました」
六車はキリッとした姿勢で深々と湯江に頭を下げる。
「おらっ!お前たちはこっちだ。さっさと歩け!」
「なんでこうなんだよ」
鋭い口で俺たちを誘導する社員。その中に湯江も居る。俺たちは気鬱な思いで謁見の間に誘導されていくのであった。
ビルの中に入っていくと高級な絨毯や強化ガラスなど、いたる所にシャンデリアまで内装されていた。廊下でこのクオリティだと普通の会社ではないと思ってしまう。
「さあ、ここだバイ」
ゆっくりと開く扉に、俺の心臓の鼓動は高鳴っていく。
謁見の間もここの廊下と内装は同じだが、何故だかそこには小さい棺にその上に金色で装飾された燭台に蠟燭が施され火が灯されていた。そして棺を背後にして美々しい椅子やテーブルが並び俺たちはそこに座る。
「今からここで葬儀、並び、貴方たちには責務を申し渡すバイ。チロルを殺めた罪......。自責の念に蝕まれる時間も十分にあるバイ」
可愛らしい声とは裏腹にその表情には鬼が宿るほどの面影が見えた。
「なあワン兄。こうなったらレイナやシルビー達の素性を話してこの場を乗り切るしかなくないか?」
「確かにそれも一つの手だな」
ドンの提案に俺は軽く頷く。しかし死者を出したとなると無罪となるとは思えないし、流石に俺自身それでは納得がいかない。
「失礼いたします」
そう考えていると先程の六車がドアを軽くノックして謁見の間に入って来た。その手には遺影を手にしていた。そして遺影を棺の上に置きその場を音も無く去っていった。
「チロルーーーー!なんでアチキを置いて一人で逝ってしまったバイーーーー!」
湯江の噴水みたいな号泣に俺の心は罪悪感で埋め尽くされていった。
......そうだ......俺たちは誰かを殺めたんだ......その責任だけは取らないと......」
これは俺たちが招いた過ちだと自身に言い聞かせるようにして恐る恐る遺影に目を向ける。
しかし遺影に映っていたのは俺のイメージと180度違ったロボット犬だった。
俺はその場でずっこける。
そして泣き続けていた湯江が、ギロリと尖らせた目をこちらに向ける。
「ちなみに貴方たちがどれだけ高貴な身分であろうともこの場を逃れるすべは無いバイ。我らヒーリング会社、もといサイコスピリチュアルの前では無意味だバイ」
「えっ、サイコスピリチュアル??」
「凡人には理解出来ないバイ。アチキ達、裏社会の価値観は」
てことは、ここ裏社会なの!ヒーリング会社が表向きで本当はサイコスピリチュアルって事?どういうこっちゃ!?
俺の脳内はごちゃごちゃになっていた。それにしてもドンの時と言いライアスの時と言い裏社会とは何か縁があるようにも思えた。
「さて前置きはこの辺にちて、そろそろ本題に入るバイ。貴方たちには今回の騒動のケジメを付けて頂くため我が社から受注したアルバイトをちてもらうバイ」
「アルバイト?」
「さっそくこの契約書にサインしてもらうバイ」
そう言って湯江が俺たちの人数分の書類を提出してきた。そして内容は......。
「なになに、掃除に、配達に、処理の仕事。あれ?意外と普通のアルバイトだ」
その短文に俺は裏社会とはイメージの異なる内容だったため、思わず拍子抜けし、少しばかり心の荷が下りた。てっきり危険な仕事かと思ったからだ。
「内容は記載している通り、汚物の掃除、麻薬の搬送、死体の処理をちてもらうバイ」
「ちょっと!記載されている内容とまるで違うじゃありませんか!これのどこがアルバイトです!」
慌てて身を乗り出すレイナに、俺たちも同様のリアクションだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
アルバイトと言う名の3K職場はここまでです。
次回からもよろしくお願いします。




