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君の為の進行劇  作者: ラツィオ
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第6話 レイナ姫との旅

 俺とレイナ姫は、見知らぬ大地に足を踏み込んでいた。未だに生きた心地がしなく心臓の鼓動も鳴り響く俺とレイナ姫、嫌な汗も止まらない。どうしたらいい物かと考えながらも俺は、レイナ姫に視線を向ける


 「大丈夫ですか。レイナ姫」


 「ええ、ありがとうございます。」


 俺の返事に汗ばんだ顔のレイナ姫はやや頬を赤くしていた。


 「それにしても、何故あそこからレイナ姫様が、というか俺も何であそこから落ちて上空から落ちていたのか、何が何だかさっぱりで」


 「先程、お父様の近くにいた一様の足元には、転移魔法のルーンが刻まれていたのです。あの官房の間からでも、超移動を可能にしたいとの事でそれでお父様はうっかりあの上空にゲートを作ったのかと」


 危うく新王のうかっかりで、俺は死ぬとこだったのか! この子もそうだけど、シルビーの身近にいる人って、天然の人が多いのかな?

 

 俺は胸の内で激しく動揺するが、レイナ姫は目線を下げ、酷く落ち込んでいるように見えた。


 「すいません。一様。先程、官房の間で父上たちとお話を盗み聞きする様な事をして、貴方が転移先から落ちたと知ったときは、居ても立っても居られず」


 「それは別にいいんですよ。助けてくれようとした事もありがたかったです。(結局、助けたのは俺だけど)......でもなんで俺を」


 俺は怒ってなどいなかった。そんな事より一番きになる問題は、なぜ俺の事を助けようとしたのかだ。親の仇のような目で見ていた俺を......何故。


 「お父様から聞いた通り、お母様は私の前で異世界人に殺されました。そして同じ異世界人の一様と重ねてしまった。それがどれだけズレた事かと自分自身でも分かっていたのです。ですから私があの官房の間から去った後、それでは駄目だと思い勝手ながら、一様が、どのようなお方なのか知りたかったのです。しかし自分でも何故あのような行為に走ったのか、分かりません。身体が勝手にと言いますか。......その」


 「フフッ」


 再び頬を赤く染め、気まずそうに俯くレイナ姫。俺はそんな彼女を見て少し笑ってしまった


 「なぜ笑うのです!」


 「あっ、すいません。つい......でも姫様、貴方はいい人ですよ。そこで理屈抜きで動く人は、特に」


 赤く染まっていた頬から蒸気のような物が上がりさらに赤面するレイナ姫。


 「まっ、全く。何を言ってるのです。フンッ! 」


 まっ、まさかのツンデレと来たか!


 「後、それから、私の事は姫様ではなく、レイナとお呼びください。私も一と言いますから」


 レイナ姫は少し赤面しながら、俺から顔を逸らして言う。


 「えっ、でも、全宇宙の新王様のご令嬢にそんな接し方をしてしまうのは」


 「その、ご令嬢様からの命令ですよ。後、敬語も禁止です。良いですね。 ハ・ジ・メ」


 全世界の男を虜にする程のウインク付きの笑顔に、俺は思わず面を食らったかのように顔から蒸気が立ち上るほど赤面する。


 「わっ、わかったよ。......よろしく、レイナ」


 たじたじで答える俺に、フフッと微笑するレイナ。


 「それじゃ、出発しましょうか」


 「うん、このままここにいても、仕方ないしね」


 そう言うと俺とレイナ姫は周辺を見渡してみる。晴れ晴れした青空の下、辺りは樹木が立ち並び俺達はその間の一本道に立っていた。そしてその前方にある看板が薄っすらと見える。


 「ねえ、レイナ、あそこに看板が見えるよ」

 

 「あら、本当ね。見に行きましょう」


 「うん。」


 不安と期待を胸に俺達は看板を頼りに歩き出した。初めてシルビーと離れた新しい一歩は新鮮だった。そして看板の前に着いた俺達はそれを目にする。


 「この先、危険地帯。ん? 横に雑書き見たいな字が書かれてる。......リベリオン? 意味は確か、反逆や暴動だっけ」


 俺の言葉に、レイナの表情が一変して険しくなる。


 「えっ、レイナ、どうしたの」


 「......ねえ一、貴方、戦闘経験は?」


 深刻な顔を俺に向けるレイナ姫にただならぬ何かがこの先にあると肌で感じた。


 「一応、シルビーに鍛えてもらったけど。このリベリオンについて何か知ってるの?」


 「リベリオン......この先は、世界の安全や治安の恩恵を受けられなかった人達が行きつく終着点となる場所です。それと、こういう場所は、全宇宙いたる所にあると聞きます。なので一、この先は治安が悪い荒くれ者、賞金稼ぎやハンターなどが多く住む場所、いざとなった時は、貴方は自身の身を守る事だけを最優先にしてください」


 鬼気迫る表情を俺に向けるレイナ、俺を心の底から心配してる気持ちが嫌でも伝わる。


 「......うん、わかった」


 曇る表情で俯く俺の本心では、絶対にレイナを守ると言う思いだった。今、この場で嫌だと言えば、レイナは怒るだろうと思ったからだ。それ程の気迫をレイナから感じていたからだ。けどこの時の俺は忘れていた。レイナには嘘を見抜く能力がある事を。快晴な青空の下にいる俺達の気持ちは、徐々に沈んでいく。


 「それじゃ、行きましょう」


 急に空元気に思われるような表情で俺の手を握りしめ先導するレイナ。その手は汗ばんでいた。きっと、不安を隠したいんだ。俺の嘘を指摘せず。俺の事を気遣って、そんな事を知らないままレイナの背中を心配そうに見つめる俺だった。


 「大丈夫よ。一、私こう見えても強いですから」


 俺に振り返るレイナは自信に満ちていた面持ちだった。その手にも力がこもる。俺を元気づけようとしてくれたようにも思える。天然キャラも定着してきたせいか、大丈夫かと勘繰ってしまう。


 「わかった。でも無理はしないでね」


 「ええ」


 互いが互いを守りたいと言う思いを胸に、俺とレイナは握った手に力をこめ歩き出す。そのまま歩いていくと、前方に、一人の人影が見えだし、それは近づくにつれ徐々に鮮明になっていく。


 「やあ、こんにちは」


 それは一人の中年の男性だった。上下の揃った黒い服に、肩からボロボロの薄茶のマントを羽織り鍬を担いでいた。頬には十字の傷跡もあった。その人は、俺とレイナに和やかに挨拶をしてきた。


 「こんにちは」


 「こんにちは」


 俺とレイナは声を揃えて、できるだけ平常心で挨拶をした。どこか緊張した面持ちでもあった。


 そんな俺達を横切ると、俺の頭の中で不と疑問に思った。今の中年の男性の恰好や雰囲気から見て、畑仕事をやるには些か妙なことに気付く。俺は疑問を抱きながら振り返ってみた。


 「おらーーーー!!!」


 すると、さっきの中年の男性は、担いでいた鍬で背後にいるレイナに襲い掛かかってきた。


 「きゃっっ!!」


 俺はとっさに、レイナの身体をガシっと掴み、下にしゃがませた。間一髪で回避できた。


 「くっ!」


 ドカッ


 俺はすかさずローアングルの蹴りを繰り出す。 


 「ぐわっ」


 中年男の顎にヒットしその男は軽く宙を舞いドサッと倒れた。


 「まさか、その方が!?」


 慌てて、その男に振り向くレイナ、そのまま俺達は倒れたその男に憂虞な思いで近づく。しかしその男は完全に伸びていた。それを確認した俺は安堵の息を吐き出す。


 「ありがとう一、助かりました。それにしてもよく気付けましたね」


 「この人の服装とかに違和感があったから、なんとなく振り向いてみたんだ。畑仕事するような感じの人に見えなかったからね」


 「なるほど、さすがですね、一」


 レイナの笑顔に俺は赤面する。


 「この方は、おそらくリベリオンから来た賞金稼ぎかハンターかと思われます」


 「それよりも、この人このままここにいたんじゃ危ないよな」


 「えっ?」


 俺がそう言うとレイナは首を傾げる。俺はその男を引きずり、道外れに並ぶ木を背に持たれつかせた。 


 「あのまま、あそこで倒れてたらかわいそうだし」


 過去の自分と少し重なるように思え、俯く俺にレイナは歩み寄ってきた。


 「......優しいのですね。一は」


 「どうだろう。自分でもよく分からないよ」


 少しの沈黙の間に風が強く吹く。


 「さあ、行きましょう」


 風に押されるように、レイナは俺を先導し始めると、俺も軽く頷き、俺達は再び歩き出す。未知の大地から。

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