第53話 母なる大地に
「仕方ない。ドン君だけ行かせるわけにはいかないし、僕たちも行くしかないね」
「ええ、逝く時は皆様と共に」
「ちょっとキャンシー、縁起でもない事言わないで!」
俺たちはドンの後を追うべく更なる地下へと駆け出した。軽快になる足音だが俺の心臓の鼓動は激しさを増していた。
下りた先には先程とは違い地下道に続かず直ぐに扉があった。だがそこにドンはいない。
「もしかしたらこの扉の先にドン様は進んだのかもしれません」
「十中八九そうだろうね。よし行こうか」
先行して扉を開けるシルビーの後ろで俺は何が待ち受けているのかと色々な憶測が脳裏を過る。
扉を開けると眩い光が俺たちを照らし出す。もしや外かと思い覚悟を決めた俺たち。
「どうやら大丈夫みたいだよ。これは太陽の光じゃない。みんな見て見なよ」
シルビーが前を歩いていき俺たちはそれに続いた。すると中は一面、鉄の壁に塗料で塗られた絵だった。青空や雲や鳥などが多種多様に描かれ、それを人工的に作られた太陽が辺り一面を眩く照らし出していた。
どうやら改装された地下施設らしい。
「凄い!外と見分けがつきませんね」
レイナだけでなく俺たち全員がその光景に目を奪われる。人の手で作られたと思えない芸術が構築されていた。
「おーい!みんなこっちだぞ!」
声の先に、元気よく手を振るドンを見つけた。どうやら無事だったらしい。
「ドン様が無事な所を見ると恐らくここには機害での転化はなさそうですね」
ホッとするキャンシーに続き俺たちもその場で安堵する。そしてドンの元へと向かう。
「こらドン、駄目だろ!何があるか分からないのに」
「ごめんワン兄。でも見て見ろよこれ、美味そうだろう!」
ドンの指す先には農園がありそこからは色とりどりの野菜や果物が実っていた。中には何故か不自然に生肉や魚などが混ざっていたため。普通の農園とは余りにも異質な物を感じた。
「何かおかしくないか。なんで肉や魚が土から出来るんだ?」
当然の如く俺はその不自然さを指摘する。
「まあ、良いんじゃんかそんな細かい事」
全然、細かくないわ!不自然すぎるは!
そう言うとドンは瑞々しく実っているトマトをむしり取り満面の笑みでかぶりつく。
「ドン君!さすがにそれは!」
止めようとしたシルビーの声は虚しく去った。ドンはトマトを美味しそうに頬張っていた。
「あめーーー!めっちゃ旨いぞこれ。みんなも食べてみろよ」
そこから更にトマトをむしり取り俺たちの前に差し出す。
「では私も」
キャンシーはそのトマトを躊躇なく手にしそのままかぶりついた。
「あっ!これは美味ですね」
キャンシーの率直な感想に俺も生唾をゴクリと飲み込む。ドンやキャンシーの身体に異変がない所を見ると身体に害は無さそうだ。そう思うと俺も一歩前へと足を運ぶ。
「俺も貰おうかな」
「ああ、毒見は済んだし大丈夫だぞワン兄」
ドンが更にトマトをむしり取り俺に差し出す。そして俺はそのままかぶりついた。
「うおっ!これは確かに旨い!」
余りの甘さと旨さに俺はビクリと身体を跳ね上げた。
「僕も貰おうかな」
「わっ、私も」
シルビーとレイナもトマトをむしり取り口に運ぶ。
「これは確かにいけるね」
「ええ、とても美味しいです」
俺たちがトマトを美味しく食べていると、ドンは他にも手を付けようとしていた。
「おいドン!これ以上は止めとこう。ここどう見ても私有地だし」
「一個食べれば同じだろう。あ!トウキビもある」
ドンがトウキビに手を出そうとしたその時......」




