第20話 新王を超える存在
俺とレイナに炎と風の刃がぶつかる寸前だった。目の前に光の柱がフワーと現れ炎と風の刃が重なった時、俺とレイナの前で爆発した。幸いにも誰かが盾となり爆風は、殆ど届かなかった。そして盾となった一人の人物の影が爆円と共に悠々と現れる。
「遅くなってごめんね」
平静な声で俺にそう言うのは、なんとシルビーだった。どうやらテレポートしてきたらしい。
「シルビー!!」
「ああ、僕だ。本当に遅くなってごめんね。直ぐに駆けつけたかったんだけど、テレポートを妨害する強力な魔法陣が貼られていていたんだ。......そうだろ、マーベル」
そう言うとシルビーは、浮遊するマーベルに鋭い眼差しを向ける。しかしマーベルは、見下ろしながら鼻先であざ笑う。シルビーは、マーベルから直ぐにテレポートで来れないように妨害していたのだ。
「もう少し早く来ると思っていたがな。相変わらず貴様は、浅い。おまけにこの死地の中、単独で乗り込んで来るとはな。貴様の能才は、単独でならまだしもこの軍勢には、不向きのはずだ。俗物にでも成り果てたか?」
まるで知り合いのように話すシルビーとマーベル。
「まさか、僕もそこまで軽率ではないよ。ちゃんと準備もしてあるさ」
そう言うとシルビーは、手にしていた杖を振りかざした。すると、俺とレイナの背後で光の柱が立ち上がりそこから200の数の軍勢が現れる。
「なんか少なくない?」
「仕方ないだろ! 時間もなかったしこれでも出来るだけ最善は、尽くしたんだよ!」
本来なら200の数は、多勢と言えるがさすがに100000と言う数を前にすると、少数とも換言されてしまう。俺は、上手く言葉に出来ず渋い顔で嫌味のような口調になってしまった。
「大丈夫。その軍勢の個々は、一君が修行の相手にしていたファイター達だ。しかも以前より更に強化してある。あの軍勢にだって退けを取らないよ」
シルビーは、抜けている所があるから正直に言うと心配だった。でも今は、猫の手も借りたい状況だったので、やはり心強く感じる。
「やはり浅いな。たかが200の数で吠えるとは、その様子では、策を講じる事も出来なかっただろうに。......さらばだシルビー」
神妙な面持ちでマーベルがそう言うと、指を鳴らす。すると俺のいる位置の左右が眩い光を放つと20000づつの軍勢が左右にパッと現れる。合計40000の軍勢。更に後方に控えていた魔法使い達が杖を空に翳した。
「闇の巨人」
魔法使い達がそう唱えると俺の左右にいる計40000軍勢たちは、渦を巻く様に闇の衣のような物を身に纏い、徐々に膨らみ姿を現した時には、10メートルの巨人へと変貌していた。身体は黒く変色し筋骨隆々の体格。その表情からは、生気が抜け落ち殺意の表情で満ちていた。
「そっ、そんな。......終わった」
俺は、心の底から戦意が崩れ落ちるのを感じる。残っているのは、絶望のみだった。レイナとシルビーもその光景に絶句していた。
「そのまま踏み潰して差し上げなさい」
マーベルの指示で左右に配置された計40000の軍勢が挟み撃ちをするように襲い掛かる。軍勢が荒れ立たせる土煙が恐怖その物に感じる。俺たちは絶対絶目の窮地に立たされていた。
「よし、ここは、逃げよう」
シルビーが気持ちを切り替え撤退の言葉を口にし杖を翳す。すると、俺とレイナとドン、そしてシルビーが光の衣のような物に包まれる。しかしどういう訳か俺の所にだけ黒い稲妻のような物がバチバチと音を鳴らして具象化されていた。




