第111話 お前とようやく会えた
俺は弟の顔や性格を想念する。
少しふくよかでパッチリとした目、天然パーマの短髪で俺の前で唯一、暖かい笑顔を向けてくれる弟......東条 英一を......。
10秒程の時が経つ、その間に小さい流れ星が俺の一縷な瞳の前を横切っていく。
「......そうか......そうだったんだね。僕だけは兄さん|の......支えになっていたんだね......」
嗚咽を漏らしながら、か細い声でシルビーはそう口にする。
てか、待って......。今、シルビーが僕だけはとか、俺の前で兄さんとか口にしてたけど......。
どう言う事!!!????
「ちょっと待ってよシルビー!!今のどういう意味!!??」
俺は何がなんだか分からず、その場で狼狽する。
「ごめん、もう隠すことが出来ないよ。......兄さん、今まで黙ってたけど、実は僕、東条 一の弟の......英一なんだ......」
「えぇぇーーーーーーーいちーーーーー!!!!??」
俺は完全にひっくり返り、地面に豪快に寝そべった。
「本当に、本当に英一なのか!!?だってその姿、どう見ても別人だろう。それに俺よりも年上にしか見えないし、仮に本当の事だとしたら、なんで英一より先に死んだ俺の前に英一がこの世界にいるんだよ!!何がどうなってんだよ!?」
俺は狼狽しながら飛び跳ね、シルビーの前で立った。余りの展開に脳が沸騰し始めている。
そんな俺を目の前に英一と名乗るシルビーは深く俯き暗い表情で口を動かし始める。
「実はね、兄さんが死んだ後、......僕も......殺されたんだ......兄さんを殺したあいつに......」
「!!!!? なんでお前があいつ殺される話になるんだよ!!?」
今までに感じた事がないような鮮烈なその言葉に俺は憤怒した。
だってシルビーが弟だなんて話だけでなく、まさか俺を殺したあいつに殺されていたなんて......。
「と言うのもね、僕があいつに殺された経由も兄さんと似たような物だったんだ。兄さんが死んだことに対して、両親は怒るでも悲しむでもなく、最後まで邪魔者扱いだった。おまけに加害者に対しても怒らなかった。それに加害者であるあいつは正当防衛が認められて無罪になったんだよ」
俺は怒りを通り越し深い虚無感に襲われた。シルビーも似たような感じでどことなく声に感情がこもってなかった。
「だからせめて、兄さんの無念を晴らそうと僕はあいつを呼びつけ、兄さんの墓の前で謝罪しろと言ったんだ。そしたらあいつは刃物を手にして僕を......殺したんだ」
重みのある声で歯を食いしばる様に言葉にしていくシルビー。
「......そうだったのか」
俺も歯を食いしばりながらその一言だけを振り絞る様に口にする。
「それから僕は異世界に行ったんだ。異世界と言ってもこことは別の所でさ、そこでは時間の経過がここよりも早くてね、ここの1分がそこでは30分程の時間なんだ。身体や顔つきが変わった僕はそこで修行したんだ。そして5年の月日が経ったときにある事件が起きた」
「事件?」
その事に何の事かと俺は首を傾げる。
「ある男と戦闘をしていた際に異空間が発生してね、その異空間に飲み込まれたそいつと僕はこの異世界に漂流する様に流れ着いたんだ。後になって分かった事だけどその異空間は過去を遡り別の異世界に送り込もうとする意志ある異空間と言われた怪異なんだ。そして僕と一緒に流れ着いたその男は謎の病に突然襲われて亡くなった。その後僕は旅をしながらあらゆる事件に巻き込まれながらも解決していった。その功績から神王は僕を四賢者の1人に選んだんだ」
そう語りながらシルビーは儚げに星を眺めていた。
「四賢者に選ばれその生活に慣れ始めた頃だったよ。ある異世界人が発見され、それを聞きつけた僕がその異世界人を仕事上の理由で保護しようと思い駆けつけた時、それが兄さんだったんだ」
「そうだったのか」
俺はこんな偶然があったんだなと思った。偶然と言うよりも俺と英一がこうして再開できたのは奇跡と言ってもいいかもしれない。
「そして僕は兄さんを強くしようと思った時にこう考えたんだ......。僕のこの目に映る物語を兄さんの物にしようと、兄さんのカッコいい姿が見たかったんだ」
「シルビー......いや、英一......ありがとな。助けてくれて。ここまで導いてくれて」
「ああ」
俺と英一はその場で硬い握手をした。俺たちの陰鬱だったその表情からはいつの間にか真っ直ぐな瞳になっていた。
そしてこれからまた続くんだろう。新たな旅と出会いが......。
<完>
ここまでお読みいただきありがとうございます。
君の為の進行劇はこれで最後です。
もしかしたら続編を書くかもしれませんが今は何とも言えません。別の作品を書くかもしれません。申し訳ありませんがよろしくお願いします。
それでは読者の皆様、本当にありがとうございました。




