第11話 最凶の能力者?その名はドン! 5話
停止した思考のまま俺の腹部に細長い鋭利な物が刺さるのを痛感した。
「うわあああ!!」
激痛を感じた時には、俺は、けたたましい叫びを腹の奥底から上げていた。目の前のドンは、悪魔のような笑みを浮かばせていた。そしてドンは、俺の腹部に刺したナイフを手元に戻そうと引き抜こうとしたが、俺は、渾身な思いで歯を食いしばりながら柄を握るドンの片腕をがっしり掴み取った。
「何してんだてめえ!」
俺の予想外の行動に悪魔のような笑みから一変して戸惑うドン。
「肉を切らせて骨を断つって奴だ! オラーーー!」
絵を握るドンの片手を握りつつ俺は、全身全霊な思いでドンを殴ろうと拳を握る。その最中、俺の拳がプワアと軽く光った。しかし俺も含め、その光を誰も認識できずにいた。そしてその拳は、ドンを10m程まで殴り飛ばした。俺は、その隙に腹部に刺さってるナイフを悲痛な面持ちで勢いよく抜き、その場で投げ捨てた。
「ッッツ!」
痛みで意識が飛ぶんじゃないかと思う激痛、生暖かい血がボタボタとたれ落ちる異様な感覚が俺を襲う。俺は、痛みを歯で押し殺すように噛みしめ、蹲るドンにまで足を引きづる様に歩き出す。
「や、やめろ。来るんじゃねえ!」
怯え切ったドンは、仰向けになりながら、手だけで引きづる様に後退しようとしていた。俺は、そんなドンの胸倉を掴み、鋭い目を向ける。生前のいじめっ子にナイフでめった刺しにされた光景がいつの間にか目蓋に強く焼き付いていた。
「お前、相手を傷つけて何が楽しいんだ! そんなんで何が得られるんだ! お前がやってるのは、ただ相手を傷つけて相手との気持ちを絶って自分に意味もなく酔いしれるただのクソだ! そんな中に身を置いて何が良いんだよこの馬鹿!!」
俺は、明一杯ちからを込めてドンに悲痛な思いを吐き捨てるように言った。ドンは、類にあふれる程の涙を浮かばせ泣きじゃくんでいた。
「だ、だって俺は、そういう生き方しかしてないし知らないんだ! 自分でもどうしていいか分からないんだよ! うっ、うわーーーーーん!!」
初めて胸の内を明かし合った俺たち。泣きじゃくるドンを見た俺の怒りの矛が何故か音も無く崩れ落ちていくのを感じる。ドンもまた親の愛を知らずに生きてきたのだろうと悟ったのだ。そう思った俺は、何故かドンに歩み寄ろうとしていた。
「ならさ、ここから始めてみないか? 俺も他人との接し方に悩んで生きてきた。それでも気持ちだけは折れずに生きてきたつもりだし今は、その気持ちを伝えてそれを本気で受け止めてくれる人がいる。そしてお前にも伝えれる奴が出来たんだ」
「そんな奴いねえよ! 今まで暴力でしか訴える事が出来なかった俺にそんな奴いるわけ」
「俺だよ馬鹿!! 確かに最初は、良くなかった。でも最後は、こうして気持ちをぶつけてくれたろ!」
俺は、類に涙袋を貯め万感な思いをドンにぶつける。ドンもまた泣きじゃくりながら俺の顔を潤んだ瞳で見つめてきた。
「だからあんな物に頼るなよ。お前は、俺以上に強いし、何より前向きそうだしな」
「うん、うん」
落ちている血まみれのナイフに目を向ける俺にドンは、類をを強く擦りなんども頷く。
ここまでお読みいただきありがとうございます。最凶の能力者?その名はドン!は、ここで終わります。
引き続き書いていきますのでよろしくお願いします。




