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君の為の進行劇  作者: ラツィオ
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第107話 和解から友へ


 イザベラはどこか遠くを見つめるようにして俺とゼファイアを交互に見ると、ゼファイアに視点を合わせる。


 「お前ら、どうやって抜け出してきたんだ?」


 先程ロープで縛られていたイザベラ達が解放されたことに俺は疑念の眼差しを向ける。


 「貴方がたの先の戦闘でヒーリング会社が瓦礫となり崩れてしまった際に運よく部下の一人の縄が切れ、我々の縄を解いてもらったんです。幸いなことに瓦礫の下敷きにならずに済んだものの、飛散した瓦礫の破片が体中いたる所にぶつかりこの通りボロボロになってしまいましたがね」


 それで縄から解けて身体中、生傷だらけなのか。


 顔を歪ませながらも説明するイザベラにゼファイアは眉一つ動かさずイザベラ達から目を離さなかった。


 「負けたのですね。......ゼファイア様......」

 「ああ、そうだ。これで漆黒の覇者は本来の目的である全宇宙の掌握は散りへと消えた。......こいつとの勝負の賭けに負けたからな」


 現状から憶測で判断していたイザベラは弱々しい声で勝敗の結果を聞いた。


 「......そうですか」


 イザベラは覇気のない声で深々と俯く。


 「お前たちはこれから好きにしろ。漆黒の覇者が招いた茨は俺が刈り取って置く。......だから......お前たちは......」


 背中に思い重圧を背負うかのような面持ちのゼファイアは口を動かしながら右手を掲げ、イザベラ達に掛かっている刻印を解いた。


 イザベラ達はゼファイアの言葉だけでなく刻印を解いた事にも指先一つ動かさず動じずにいた。


 「ゼファイア様。我らは貴方様の信念と志に共感し貴方様の臣下となっただけではございません。我らは過去に傷を負い、そこから変われることが出来なかった異端者です。そんな我らを拾い、道を示してくれた貴方様だからこそ我らは貴方様の元に下ったのです。たとえ道具として使われても、あの地獄の日々から救ってくださった。それだけで十分だったのです」


 イザベラ達は道具として使われたことなど些末な事だと、それ以上に感謝していると、ゼファイアに胸の内を伝える。


 もし俺もゼファイアの様な奴に誘われたらイザベラ達の様な選択を取っていたのかもしれない......。


 俺はイザベラ達の気持ちを、まるで自分の心の内のガラスを重ねるような思いだった。その言葉に感情的になる気持ちが俺の心の隅で沸々と湧き出す。


 「ですのでゼファイア様。我らも同行させて下さい。漆黒の覇者であろうとなかろうと関係ありません。是非とも......」


 イザベラ達は片膝を地面に着け深々と頭を下げる。


 「......たく、......好きにしろ」


 顔を横に向けそう言うゼファイアは少し嬉しそうな気持を隠しているようにも思えた。


 「それにしても漆黒の覇者が僅か一時間もしない内に、その旗が泥まみれになるなんてな。思いもつかなかったよ」

 「泥まみれでもその内、その泥は取れるよ。そして次に現れたその旗は今より人の心を揺さぶる輝かしい旗になるんじゃないか?」


 俺はゼファイアの横に並ぶとゼファイアの横顔を見つめる。


 「フハハハハハハハッッ!!お前は本当に真っ直ぐな奴だな!......ああ、そうだな。」


 腹の底から高笑いするゼファイアは笑い終えると俺と正面を向き合った。そしてゼファイアは俺に右手を差し伸べて来た。


 「礼を言うぞ東条一。そして今回の借りはいずれ必ず返す。......それからもしお前さえ良ければだが......その借りが返せた暁には......俺と......とも......と」

 「次合った時には友達になろうぜ!」


 赤面して何かを伝えようとするゼファイアに向け俺はあどけない瞳で思いを伝える。


 「......ああ!そうだな!」


 俺の思いにどこか吹っ切れた面持ちになるゼファイア。


 そんな光景を目の当たりにしたイザベラ達もその表情からは不思議と笑みがこぼれていた。

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