第100話 道具として生きる者達
ロープで縛られながらもブルブル震えるイザベルは自分がイザベラに切り替えなければドンがバッチンで攻撃してくると察すると更に怯え始める。
「わ、分かった!今すぐ変わる!だから頼む。やめてくれ!!」
そう言うとイザベルは目を閉じ額から汗をダラダラ垂らしながらイザベラに切り替わろうとする。
そしてあれだけ震えていたイザベルがピタリと止まり汗も止まった。そしてゆっくりと目を開けた。
「お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。それで私に話とは何でしょう?」
落ち着いた目付きで礼儀よく話してきたイザベラ。どうやら切り替わったようだ。
それが分かった湯江はようやくかと言う面持ちでイザベラに話しかける。
「では、単刀直入に聞きますが、貴方たち漆黒の覇者の内部情報を教えてくださいバイ」
湯江の言葉にイザベラは目を瞑り俯き始める。
「......それは出来ません」
「テメー!言わねえと!」
ドンがまたまたバッチンの構えを取り始める。
「いくら私たちを拷問しても無意味ですよ。何故ならその様な裏切り行為を働けば私たちは散りと消えるのです」
一体なんの事だ?
俺たちはイザベラの含みのある言葉に首を傾げる。
「どういう事?」
俺は首を傾げながらイザベラに聞いてみた。
「私たちにはゼファイア王に臣下として仕えた時からある刻印が刻まれます。その刻印を刻まれればゼファイア王に裏切りとみなされるような意思を持てば即、消滅されるのです」
それを聞いた俺たちは絶句した。
よくフィクションでは手下などを道具として扱う悪党がいるなど見た事があるけど、まさか幹部クラスにまで物扱いだなんて......。
「......嘘はついていないようです」
嘘を見抜くレイナがはっきりとそう答えた。それを聞いた俺は本当の事なのだとイザベラ達に憐憫の気持ちが込み上がる。
「論より証拠と言うまでは行きませんが、これを」
そう言うとイザベラは舌をペロッと出した。その舌には十字架をクロスで刻んだ茶色の刻印らしきものが見えた。
イザベラたち漆黒の覇者は一体どう言う経由でゼファイアの臣下になろうとしたのだろう。俺には分からない。最初から道具となる事が分かっていて仕えるなんて。
「それでどうします。こんな私たちに一体なにを吐かせたいのですか?」
ほくそ笑むイザベラ。欺瞞の笑みと言う訳ではないが、まるで俺たちが死ぬと分かっている相手から情報など引き出すまいと見越している。そんなニヤけ面。
「俺は構わないぞ」
重々しくなる空気をあっけらかんとした言葉でぶった切ったドンに俺たちはずっこけた。
「待て待て!俺たちはそんな非道な事する気はない。それにドンだってマフィアから足を洗ったんだし、そう言う選択肢にばっかり偏ったら駄目だぞ」
俺は慌ただしい仕草でドンを説得する。
「ちぇ。分かったよ」
ドンは口を尖らせながらも、なんとか説得に成功した。
「情報を聞けなくても貴方たちを人質に取ると言う選択肢もあるバイ」
話を戻そうと湯江が口を開く。
「それも無意味ですよ。仮に私たちにこの刻印が無く貴方たちに全てを話したとしても私達には敗北し人質になる時点でゼファイア王からすれば既に利用価値はないのです」
自分たちの立場を淡々と話すイザベラ。
なんでこんなにも哀話を平然と語れるんだ。そんなにもゼファイアを崇拝しているのだろうかと俺は理解に苦しんた。
バタン!!
「たっ、大変です湯江様!!」
何枚も重圧で押し潰されそうな壁をぶち破る様に、勢いよくドアを開けて来た六車。その表情は鬼気迫るものだった。
「一体どうしたんです?何をそんなに慌てて」
湯江は六車を落ち着かせようとテーブルにあったワインを渡して飲ませた。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ......ブハッッ!!実はこの会社の上空に巨大な宇宙艦隊が見え、確認した所、あのゼファイアの物だと!!」
えっっ!!ゼファイアがここに!!!?




