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英雄の冒険旅行譚  作者: 信礼智義
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第2.5話 戦闘

今回は短めです。幕間のような回です。

英雄(ひでお)が兵士を連れ、王の救出に向かった翌日、ディガル将軍の鎮圧部隊がヘイス族のところに攻めてきた。敵は約1万5千人程度だった。敵はヘイス族の住む盆地の入り口に陣取った。

「来とる来とる」鈴木少尉は興奮したように言った。

「ひいおじい様、大丈夫なのでしょうか」アプリは緊張しながら聞いた。

「見たところ、戦車や装甲車はなし、砲も野砲がわずかばかり、かなりなめられたものだな」

ドローンが何台か飛んできた。少尉は攻撃開始の合図をした。AK47とT-72戦車の12.7ミリ重機関銃が火を噴き、すぐに撃ち落とした。

近くの山でも銃声が聞こえた。銃声はすぐに止んだ。「山のほうにも偵察兵が来たようだな」

「山を越えてくるのでしょうか」アプリは聞いた。

「このあたりの山はヘイス族の庭みたいなものだ。敵が攻めてきても我々の敵ではない」少尉はにやぁと笑いながら言った。

「正面の盆地の入り口には、鉄条網や戦車豪、地雷も設置しているし、左右正面には、兵を潜ませている。来ても十字砲火で全滅だ。おまけに戦車が何台も正面に鎮座している。普通の神経なら攻めてくるまい。まあ、玉砕覚悟ならわからんがな」

「戦車は1台しかないのですよね」アプリは尋ねた。

「敵はそんなことは知らん。何台戦車があるのか、兵はどれだけいるのか、敵は疑心暗鬼にとらわれることになる。そのために欺瞞の掩体壕や木造の偽戦車、偽トーチカをいくつも作っているのだからな。」少尉は自慢するように言った。

「最終的に玉を救い出せるかがこの勝負のカギだ、九頭軍曹が頑張ってくれるのを祈るしかあるまい」少尉は真面目な顔で言った。

「ひいおじい様、楽しそうですね」

「ああ楽しいぞ、血肉沸き踊るという感じだ」鈴木少尉は笑いながら言った。


ティガル将軍の命令で鎮圧に来た部隊の指揮官、カムトイ将軍はディガル将軍の子飼いの部下ブルキ大佐から追及されていた。

ブルキ大佐はティガル将軍から5千名の兵を預けられ、カムトイ将軍の部隊一万の後ろにつけていた。

それはまるで逃げたり裏切ったら、後ろから攻撃するぞという督戦隊のようだった。

「なぜ攻撃を開始しないのです、臆病風に吹かれましたか」馬鹿にするようにブルキは言った。

「周辺の山々に偵察隊を送った。また、ドローンを飛ばし、敵の戦力を確認した。その結果、偵察隊は攻撃を受け、なすすべもなく撤退する羽目になったし、ドローンはすぐに撃ち落とされた。とにかく情報が必要だ」カムトイ将軍は説明した。

「そんなものはどうでもいい。早く対処しないと寝返るものが続出しかねないとティガル将軍は言っておられる。直ちに攻撃を開始すべきだ」ブルキは言い募った。

「敵は戦車や重火器を保有している。こちらは急いて来たので、戦車どころか装甲車も重火器もない。この状態で攻めたら全滅だぞ」カムトイ将軍は言った。

「そんなのは敵の欺瞞に決まっている。すぐに攻めるべきだ」ブルキは言った。

「実際にドローンは小銃と戦車に撃ち落とされている。戦車と重火器を送るようティガル将軍に申請するつもりだ」カムトイ将軍は言った。

「そんなものを待っている暇がないとさっきから言っているだろう。お前そんなこともわからないのか」ブルキは叫んだ。

「わかった、じゃお前やれ」とうとうカムトイ将軍は切れた。

「なんだと」ブルキは怒鳴った。

「そんなに勝てる自信があるのなら自分でやれ、だいたいティガル将軍の直属の部下だか知らないが、上官に向かってその口の利き方は何だ」

ブルキは顔を真っ赤にして、「貴様戻ったら軍法会議にかけてやる」といって本部のあるテントから出ていった。

「よかったのですか、将軍」部下の一人が言った。

「今の少ない情報では何があるかわからないからな。勝てる戦も勝てないぞ。情報の収集、そして分析と判断は軍を動かすうえで基本中の基本だ。だいたいあいつらの言う通りしてみろ。手柄は全部持っていかれて、兵を殺した責任だけ負わされるのが見えている。冗談じゃない」

「その通りだと思います」部下が言った。

「とりあえず、ドローンが撃ち落とされるまでに撮った映像を見ようか」カムトイ将軍は言った。

ドローンの映像では、T-72と思われる戦車が一台こちらに重機関銃を向けており、また、戦車の一部と思われるものとそれを隠してあると思われる掩体壕が複数個あった。また、トーチカが要所要所に配置されていた。ほかにもロシア製の兵器と思われるものが複数確認できた。

「おいおい、まるで要塞みたいじゃないか」思わずカムトイ将軍はつぶやいた。

これは重火器や戦車があっても攻め落とすのは苦労するぞ、どうやってこんな武器や施設を手に入れたんだ、カムトイ将軍は考えた。

そういえば、ヘイス族の連中は日本軍と名乗っていたな。日本、昔戦史で習ったな、世界を相手に戦った国、でも結局負けてアメリカの同盟国になったのだよな。

アメリカ!そういえばティガル将軍はC国と手を結んでいたのだった。今C国とアメリカはいろいろ衝突している国同士だ。アメリカが直接出てこられないから日本に肩代わりさせたのではないか。その可能性は高い。でも兵器はロシアの兵器だ。ということはアメリカとロシアが手を組んだか。ターイエはロシアとC国に挟まれた国、そこにC国の力が強まるのをロシアは快く思わないはず。間違いない。

だから、ロシアの古い兵器が多いんだな。ロシアとしては何かあってもヘイスが勝手に調達したと言い逃れるためだ。

俺は大国同士の代理戦争の先兵にされていたのだ、そう思うと、カムトイ将軍の全身に悪寒が走った。

さて、俺はどうする。俺はどうしたい。

とにかく生き残りたい。兵も多く助けたい。そのためには、この戦争の勝ち馬に乗ることだ。

カムトイ将軍はしばらく様子を見ることにした。


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