#1〔絶望〕
そこは木々に囲まれた森。
突然だが俺は虫が嫌いだ。
特にあの口に出すのもおぞましいようなあの、黒いやつなんかは特に嫌いだ。
何でそんな話をするのかって?
———俺が虫だからさ。
そう。俺は虫だった。
光の反射すらも許さないような真っ黒なボディ。
あの幾度となく人間を絶望の淵に立たせてきたあいつだ。
「………ステータス」
なんとか冷静を保って呟く。
氏名:カジ
種族:コックローチ
職業:未設定
レベル:1
HP:15
MP:24
筋力:7
防御:3
魔力:13
魔防:2
素早:28
器用:15
幸運:10
スキル:回避lv1、炎脆弱、隠密lv1
称号:ユニーク個体
弱いわ!
まぁなんとなく分かってはいたんですけどもね。
それとこの種族俺だけらしい。どーでもよ。
初期ステータスのHPとMPは20、それ以外は10が平均。
防御面が弱すぎて話にならない。
デコピンで死ぬぞデコピンで。
そして種族はコックローチですよねー。英語にしたらいいってもんじゃないのよ。
ちなみに身長は大体10センチぐらい。
中途半端に大きくする辺り悪意を感じる。
さて、本題はここから。——職業だ。
種族によって取れる職業は違う。ゴキブ——コックローチの場合はどうなんだろうか。
800種類以上ある職業の中で、虫でもなれるのは20種類ぐらいだった。
少ない。圧倒的に少ないのである。
その中で気になったのを挙げると
魔術士、斥候、アサシン、忍者、ストーカー、召喚士と言ったところだった。
魔術士。これは虫じゃなくちゃいけない理由がない。魔術士になるぐらいならエルフを選ぶ。よって却下。
斥候。これはまぁ良いかもしれない。ただ斥候は仲間がいて初めて成り立つ。この状態で仲間にしてくれる人がいるか?否、ありえない。よって却下。
アサシン。これは良い。正直すごく良いと思う。
忍者もアサシンと同様、ありだろう。
ストーカー。これは嫌だ。能力がどうとかではなく職業名が嫌だ。よって却下。
召喚士。これは夢がある。強い獣でも生み出してやりたいものだ。
そして考える。10センチの虫がアサシンや忍者になって何ができるのだろう。
獣を殺せるか?否、不意を突いたところでネズミも殺せないだろう。
召喚士、良いんじゃないか?
俺はポチッと、召喚士を選択した。